ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!! 作:オールドファッション
———富・名声・力。
この世のすべてを手に入れた男、国家浴場技師ルシウス・クイントゥス・モデストゥス。
「おれのプレゼントか?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世のすべてをそこに置いてきた!」
彼の寝ぼけて放った何気ない一言は、サーヴァントたちを聖夜へと駆り立てた。
ある者は祖国の窮地を救った先達の宝を求めた。
ある者は理想のサンタへ倣うために求めた。
ある者はかつての宿敵の力を得ようと求めた。
ある者は彼とただルチャするために求めた。
ある者は憧れの医師の知識を求めた。
そしてある国々は愛しい男の所有物を求めた。
サーヴァント達は、
世はまさに大サンタ時代!ウィーアー!
みなさんご存知の通りサンタクロースのモデルになった人物といえば聖ニコラウスである。しかし近年学者たちの間ではサンタクロースのモデルはルシウスではないかと議論されている。ごめんな、サンタさんへのお手紙を書いている純粋なこどもたち。今日からサンタの住所はローマなんだわ。
その理由として一石を投じたのは彼が残した書物だ。それには【ルシウス銀河英雄伝234・クリスマスは一人でお留守番!】『ちーす!ケビン先輩覚えてますか?拷問トラップ部の後輩のジグゾウです!』といったようにはっきりとサンタやクリスマスという単語が登場するのだ。そもそもこのシリーズにはバレンタインやら正月やら夏休みやらとイベント盛りだくさんで歴史学者たちの頭を悩ませるタネである。
ある歴史学者によればそもそもサンタ文化の始まりは12月24日の夜にルシウスが貧民街で孤児達にプレゼントを渡していたことだった。施しを終えたルシウスが帰宅すると女性陣が赤の勝負下着を身につけて夜這いしにきたのでサンタの服は赤とイメージが定着したらしい。これは性夜ですわ。プレゼントは弟か妹よー。
白いひげやトナカイについては学者間で見解が分かれているが、実はその時偶然ツアー客の中に宋帝王とその第一補佐官を務める鼻炎中の鬼神がいてそれが曲がりくねった解釈を受けてサンタとトナカイがセットになってしまったのだ。このネタのせいで日本地獄でもみんなの笑い者にされている。
ではなぜその逸話がいままで発見されなかったかというとここで意外なことにいつもペトロが書いている小学生の宿題クオリティの絵日記が影響してくるのだ。この日記が反ルシウス派の教会の手に渡ったことでクリスマスやバレンタインなどの行事が利用され、偽のサンタ伝説が広く認知されるようになる。元々の伝承は異教の物として弾圧され、今日遺跡からルシウス銀河英雄伝の原稿が発見されるまで明らかになることはなかった。これにより各国で宗教戦争が勃発するまでの事態に発展している。もはや宗教版キノコタケノコ戦争だ。
終わりなきサンタ超常決戦が繰り広げられている中、彼が原初のサンタであることは地球で発生した情報として記録されているため、実はちゃっかり彼のサンタサーヴァントが英霊の座にいたりすることをカルデア以外の人々は知る由もないだろう。だがそんなカルデアでも今年のクリスマスは大事件が始まろうとしていた。
今日の天気は飛び交う銃弾とアンプルの雨時々ビーム。クレイジーな天気模様にルシウスは絶望した。相棒の小型航空機『メリー号』に跨り最悪の天気の中を颯爽と駆けていく。後ろでは「生きたいっ!!!!」と涙を流すマスター藤丸立香が必死にルシウスの背中にしがみ付いていた。何やらマスターが満更でもなさそうに背中の感触を堪能しているような気もしているが、紙一重の回避を連続で行うルシウスにそんな事に気を回す暇はない。
「なぜこうなった!!!」
思い起こすこと数時間前。微小特異点の発生という毎年おきまりのクリスマスイベに駆り出されたルシウスと立香。どうせこれが終わったら地獄の箱イベ周回だろうと軽口を叩いて現地に到着してみればこのありさまだった。四十秒で支度したORTの変形した小型航空機が無ければ物理でバ○スしていただろう。
現在このサンタアイランド島では熾烈な三つ巴の戦いが繰り広げられている。ルシウスの寝ぼけた拍子に放った一言がカルデア中に拡散し、歴代のサンタやアイドル連合サーヴァントがこぞってこのクリスマス特異点へ出撃した。
「そこを動くな、てぇーい!む?あれは誰だ? 美女だ!? ローマだ!? もちろん……余だよ♪」
「ごめんねルシウス!でも当たっても大丈夫だよねカリバあああああ!!!」
「うふふふ!まってぇ、プロデューサーさん!!」
「もきゅもきゅ、ごっくん……さあ、お代わりを寄越せカリバあああああ!!!」
先ほどからビームを撃ち続けているのはアイドル連合チーム。ネロやブーディカを主力とし、ブリテンチームと併合した超火力の人間砲台が集まっているやばい軍団だ。一部だがターキーを投げ与えると一時的に砲撃を止めることができる。無ければ温泉ぶつければ大抵逃げることが可能だ。
「ひっく、今じゃ!ファイナルノッブスペシャーーール!!!」
「あっはははははは!このお酒美味しい!愉快痛快毘沙門天!」
「フィニッシュ・ホールドをプレゼントしちゃいマース!」
「みんな、空を見ろ! あれは何だ? 星だ? コロニーだ? いや……クリスマスプレゼントだァ~ッ!!……あ、もう一杯おかわり下さい」
「あんたたちぃ!飲んどる場合かああああ!!!!」
「「「ぐわああああああ!!!!」」」
銃弾を放っているのは戦国大名チーム。信長や景虎を主力とし、ケツァル・コアトル〔サンタ〕やマルタなどの戦闘狂が集うやばい集団だ。酒に目がない連中が多いので酒を投げ与えると一時的に攻撃を止めることができる。そしてこれも温泉ぶつければ大抵逃げることが可能だ。
「待ってくださいルシウス医師!その深遠なる医学の知識をご教授ください!そしてできればグレージャックの最新作もどうか!!」
「くっ!このフローレンスは猟犬か!?」
最後にアンプルを銃弾のように使っているのはナイチンゲール〔サンタ〕個人である。実はこの子が一番やばいやつだ。ジャンヌ・オルタ・サンタ・リリイ、エレシュキガル、ブラダマンテ、アストルフォ〔セイバー〕、謎のサンタアイランド仮面を倒し、一人で二つの勢力とやり合える個人兵器。温泉をぶつけても拳で真っ二つにされた。この子、バーサーカーの時よりもバーサーカーしてませんかね?
全員ひとつなぎのプレゼントなんて初めから無かったと言っても信じず、気づけばこうして追いかけられる始末。もうこうなったら地脈から温泉引いてきて聖杯錬成するしかないな……またアラヤくんが血反吐吐くと思うけど。
「ひええ!ルシウス後ろ後ろおっ!!」
そうこうしている内にサンタアイランド島三国志が背後まで突入している。きっと孔明の罠だとライネスによるロードエルメロイ二世への熱い風評被害が発生しているだろう。
――さて、ではこちらもとっておきの裏技を披露しようか。
ルシウスが謎のポーズを取りながら『変身!』と叫ぶとダヴィンチちゃん特製の変身ベルトが現れ腰の周りに装着される。独特の効果音が鳴り響く中でマー○・大喜多風のルシウスボイスがベルトから流れた。
『仮面ライドォ!ササササンタァ!』
眩い真紅の閃光が夜空を照らし、光源の中心にはなぜかアイランド仮面を装着したルシウスがいた。結局お前もそれ被るんかい。
「なるほど!ライダークラスに霊基を変換して逃げるんだね!」
「ん?いや、私のサンタ時のクラスはアーチャーだぞ?」
「何でアーチャー!?その変身で何でアーチャーなの!?全国の子供たちに謝ってよ!!」
「ええい!礼装で自身を強化して背中をぽかぽか殴るな!欲しいのはマシーンやドライビング技術ではなく”推進力”だ!!」
メリー号の噴射口からメントス入りコーラ並みの温泉ジェット噴射により超加速していくメリー号。いや、今のお前は過酷なる千の空を太陽の様に陽気に越えていく船だ。サニー号に改名してやろう。意味はよく分かっていないがORTは『わーい』と喜んだ。だがあとで尾田先生に『くそすいませんでした!!!』と土下座してきなさい。
「でもこれで何とか追っ手をまけたね」
「ふははは!見ろ、人がまるでゴミのように小さくなっていくぞ!!」
「何で仮面越しにサングラス掛けてるの!?」
もはや超スピードの住人となった彼らに追いつける者は存在しない……そう思われた瞬間だった。
「サンタからは、逃げられない!」
「お、お前は!?」
突如並走し出したのはアルテラ〔サンタ〕。バイクにファイナルフォームライドォしたドゥドゥドゥドゥムジ!がフォトン・レイによる推進力で追いついてきたのだ。もはや何でもありのチキチキマシン猛レースと化した二人のスピードはほぼ互角。まさに光と闇のEndless Battle!歴戦のサンタである二人にはこの勝負が引き分けになることがすぐに理解できた。ならばライディングデュエルではなく純粋な
「
「ぐわああああ!!!」
「ヤ、ルシウスううう!!!」
「ふふふ、まさかこんなに早くローマでの借りが返せるとはな」
恐怖に首輪を付けられた犬ころ同然となっていたアルテラが、今この瞬間に勝てると確信した…っ! 長きに渡る二人の因縁に決着が付こうとした時、立香が高らかに手をかざしルシウスに令呪を三角重ねがけして願う。
「宝具を発動して!ルシウス!!」
手の甲に刻まれた令呪が赤い光を放ち、三本の膨大な魔力の奔流がルシウスに宿る。思わず身を引くアルテラだったが、ピンチこそが好機だと直感し軍神の剣を振りかぶった。
『――
虹の如き魔力光の砲撃が迫り来る中、ルシウスはひどく落ち着いた様子で、まるで物語を子供に言い聞かせる様な穏やかさでもって宝具の真名を解放する。
『
直後、大きな地響きが起こり3人はバランスを崩して大きく仰け反った。地面との衝突を予感するが、彼らが感じたのは母の胎内で包まれる感触と冷えた心身を温めていく地中から吹き出した温泉の熱。夜空を灯す星々の明かりに魅了されていると、立香とアルテラの腕の中に忽然とプレゼント箱が現れる。
「こ、これは!?」
立香が箱を開けてみるとそこには聖晶石30個が包まれていた。今年も頑張ったマスターへ運営からのプレゼントだろう。まあ、どうせすぐに溶けるけどな。
「うっ、ガチャ…ガチャ…またガチャががが回せるぅう!くっ!静まれ別世界線の私ぃ!!」
なにやらもう一人の自分と戦っているマスターがいるが、ルシウスはリヨ世界線には存在しない希少サーヴァントなので下手に干渉すると次元の壁を超えて人類悪が『うひょおおお!限定サーヴァントゲットだぜぇ!!』と自分を捕まえに来るから静観していた。
「私のは何かな?呼符かな?それともマナプリ?星4サーヴァント交換券だったら嬉しいな……」
一方のアルテラも自分にはどんなプレゼントが贈られたのかわくわくしながら開けてみる。だが、箱の中に内包されていたのは満天の星空の如き光輝。すでにサングラスを装着していたルシウスには効かなかったが、油断していたアルテラはそれを直視してしまう。めがー! めがー!
「な、何だこれは!?」
視力が回復しアルテラの視界に映り込んだのは透明な浴槽とその縁を四つん這いになりながらアンバランスに立つ無様な自分だった。浴槽の中の湯は入らずとも体を撫でていく湯気からかなりの熱さだと予感できる。すぐにその場から離れようとするもアルテラの体は金縛りにあったかのように動かなかった。アルテラは「肥溜め」で溺れかけてるネズミみたいに涙目になりながら二人に縋るような視線を送るがマスターは絶賛もう一人の自分と決闘中。ルシウスはアルテラの突き出したお尻をローアングルから覗いていた。もしもしカルデアポリスメン?
「お、押すなよ。……絶対に押すなよっ」
アルテラの意思とは関係なく自身の口から言葉が紡がれる。これがルシウスの宝具による現象だとして、なぜこのようなセリフが言わされているのか彼女は理解に苦しんだ。しかし日本人である立香やモニターから見ているダヴィンチちゃん、放課後☆路地裏同盟の下積み芸人時代を思い出すシオンは直ぐさま理解してしまう。それが滅びや死の呪文よりも恐ろしい言葉であることを。
「……」
時間としては数秒という瞬間はアルテラにとってまるで永遠の苦痛にも思えた。そして彼女の思いとは裏腹に、ある言葉が口からこぼれ落ちそうになる。彼女は何度も耐えた。耐えて耐えて耐え忍んだ。しかすでにフラグは完成している。立ち上る熱気と筋肉疲労から汗ばみ赤らんだアルテラ。およそ十秒経とうとした頃、彼女の口は決壊した。
「押せよっ!!!!」
アルテラはルシウスによる華麗なるパンクラチオンによりバイツァダストした。その光景を中継で観ていたカルデアスタッフたちはもう年末ですねと早々に鏡餅とこたつを持ち出す。そして帰還して早々にケツをタイキックされるルシウス。そのまま正月病が治らないままアトランティス入りしたカルデア一行であった。
「お久しぶりですねルシウス技師」
「お、久しぶりー。みかん剥いたけど食べる?」
その後、カルデアを殲滅に行ったサーヴァントたちが中々帰ってこないのでキリシュタリア自ら船内に赴くとおこたに包まれ寛ぐ自分のサーヴァントと呑気にみかんを剥いているルシウスと遭遇する。絶好の好機にキリシュタリアが発したのは、
「………………頂きます。あ、白いのなるべくとってくださいね」
「バカお前!白いところが一番栄養あるんだぞ!!」
お前も食べるんかーい!
『善悪分ける聖夜の秘湯』
ランク:EX
種別:大軍宝具
レンジ:0~40
最大捕捉:100人
彼の生前行った慈善行為が宝具化したもの。良い子にプレゼントを、悪い子には熱々の熱湯風呂が待っている。それは対魔力関係なく強制的に働く恐ろしいお仕置きだ。
FGO内では敵味方関係なく善性には体力回復、攻撃力アップ、宝具威力アップなどのバフ。悪性には火傷、防御力ダウン、宝具による被ダメージアップなどのデバフを与える。