ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!! 作:オールドファッション
ちなみに私は呼符一枚で引けました(クソ煽り)
空を、海を、大地を駆け巡る。
『では、ここからちょっとはしたなく。肉体言語で語り合いマース!』
『やー!』
『きゃー!』
空では羽毛ある蛇を下した。
『何だあれカッケーっ!持って帰ってゼウスとハデスに自慢しよー!』
『もげろー!』
『アーッ!』
海では嵐の如き男を下した。
『あれエイリアンじゃね?捕まえて日の本へ持ち帰るぞ!尾張名物『怪奇巨大蜘蛛』大儲けじゃ!』
『ゲテモノは意外と味がいい。美味しかったら足一本くらい下さい!』
『〜〜!』
大地ではなんかぐだぐだした二人から逃げた。
(うー、地球こわいよー。ルシウスに会いたーい)
地球から送られた救難信号を勘違いして五千年ほど先に来てしまったドジっこな彼女であるが、そのスペックは正面からではかのアルクェイド・ブリュンスタッドが敵わないと言われるほどの存在。だが、ルシウスに触発されて生まれた精神面はまだ幼く、およそ精神の何たるかを理解していない彼女にとって彼らは脅威である。
『理解不能!エラー!』
つまるところ、何考えてるか分からない馬鹿たちが怖かった。ルシウスはそれを超える大馬鹿だがな。
ローマまでの道中ではやけにおかしい相手ばかりに遭遇する。そもそもローマ人がおかしい人の分類で最上位に入ることを彼女は知らないだろう。ORTはこんな生物を滅ぼすために地球に呼ばれたのかと震えた。
(でも、もう少しで会えるよルシウス)
ただでさえ引きこもりの幼子(精神)の一人旅は心細い。初めてのおつかいで世界を半周するようなもの。だが、ローマまではあと少しだ。視聴者ならそわそわしながらハンカチとティッシュを取り出す頃合い。
しかし、彼女はローマが何たるか知らなかった。
(な……)
この時代における、神話世界すら凌駕する深淵の魔境を。
(何これーーーー!?)
特異な経験ゆえ日記に書き残そうと思い至った。
某の名は山崎。どこの里にも属さぬ無所属の忍びである。また、此度の出来事における被害者の一人と言ってよい。
あの日、某は調査で尾張に赴いていた。今や日ノ本にてカカオ大名織田信長を知らぬものはいない。信長公が自称する第六天魔王と合わさって、巷では南蛮人から『ぶらっくさんだー』と呼ばれているらしい。何やら面妖な響きである。
市内は見たこともないほど賑わいに満ちていた。カカオなる植物の種から作り出したちょこれーと菓子は絶品ではあったが、流石に風呂にまで入れるのはどうかと思う。おかげで体中からカカオの臭いがした。これでは天井裏に忍び込んでも『む!このカカオの匂い……曲者め!であえであえ!』となるではないか。
……なんだか某がカカオを堪能するために尾張に来たように思われるかもしれんが、某はある男を探すために尾張へと赴いたのだ。
その男の名はルシウス。あの魔王信長と越後の軍神景虎が囲っている男らしい。他人の情事など知りたくもないが、巷ではそのルシウスという男を手に入れた者こそ天下人になれるという噂が真しやかに囁かれている。何でも遠い国の諺には『羅馬は1日にしてならず。だけどルシウスがいたら即建国』というものがあるらしい。
この噂に全国の大名はもちろん、伊賀、甲賀、風魔を始めとする忍び達もこの尾張に集まったのだ。いつ戦が起きてもおかしくない状況。それを治めたのが尾張城ほどの背丈の男『みっちー』だった。これぞ古き時代に日ノ本を想像したダイダラボッチに違いない。戦国の世に覇を唱える傑物たちも巨人の前では蟻と同じ。この男なら麒麟が来る国どころか麒麟を食らう国にしそうだ。
『ルシウスが逃げたぞ!者共であえであえ!!』
死んだ顔でちょこ菓子を貪る我らの日々に終わりを告げたのは信長公の叫び声であった。丁度、我らがきのこ型のちょこ菓子とたけのこ型のちょこ菓子のどちらが至高か言い合っていた頃だ。ちなみに某はちょこぼーる派である。信長公と景虎公の軍勢が尾張城へ入っていく姿を見て、我らもルシウスを捕らえようと尾張城へ攻め入り、何故かみな風呂場へ吸い込まれるように入っていくとそこは――
――羅馬であった。
自分でも何を言っているのか分からないが、そこは羅馬という異国であったのだ。誰もが驚愕している中で、信長公と景虎公は落ち着いていた。二人の視線の先には巨大な二つの光を受けても無傷で生きている男の姿。その男がルシウスだとわかった途端、我らはルシウスを手に入れることを諦めた。
尾張へと逃げ帰る者、羅馬に残り戦う者と別れる。信長公と契約を交わした我ら忍びは残った。金さえ貰えるのならば誰であれ力は貸そう。
信長公らが討伐した妖術師の残党がどこに潜んでいるかも分からない。我ら忍びは『ぽんぺい』に拠点を置き、ローマ全域を調査した。このぽんぺいという都市は驚くほど高くそびえ立つ城壁に囲まれている。何でも『ゔぇすぴおす火山』の噴火を予見したルシウス殿が考案したものらしいが、よく人の手でこれほど巨大な壁を作れるものだ。こんなもの、それこそ巨人でも進撃してこなければ壊せまい。
だがここに来て食料の問題が生じる。信長公から資金があるとはいえ、少しでも多く里に送りたいというのが人情。そもそも忍びは食はあまり頓着しない。食べられるのなら葉でも木の根でも齧って生きていける。
だが、そこで兵糧係に志願したのが風魔の頭領、風魔小太郎殿であった。何でも、こんなこともあろうかととっておきの保存食を持って来ていたらしい。何やら憐憫の眼差しを向ける風魔衆が気になったが、誰も異議を申し立てはしなかった。
風魔一族というのは名こそ広まってはいるが、その実態はよくわかっていない。頭領が色々こじらせているだとか、巨乳のからくり人形があるとか、なんかヤバい饅頭があるとか。そんな謎多き風魔が誇る兵糧、食すことでその製造法が分かるならよし。分からなくとも某の食した感想から他の者が製造法を導きだせるならそれも良かろう。
そんな呑気なことを考えていた自分を殴ってやりたい(真顔)。
何だこの饅頭……ほんと何だこの饅頭!?
見た目こそ老舗の高級和菓子のようだが、口に含んだ瞬間に広がる魚の生臭さとたわしのような食感。不味い。ただただ不味い。まるで腐りかけの魚の腑のようだ。この
『おお、いつも通り不味いぞ!』
『いや、以前よりも不味くなっているな!流石風魔まんじゅう!』
そんな饅頭を笑いながら死んだ目で食している風魔衆。ええい!やつらは化け物か!?
羅馬生活一日目。某は風魔への畏敬を新たにまんじゅうを食らう。
羅馬生活二日目。某は今日もまんじゅうを食らっている。このまんじゅうの利点は1個で一日分の栄養補給ができることだ。こんなまんじゅう2個も食えるか馬鹿野郎。
おっといかんいかん。食生活が荒れると心も荒んでくる。今はただ不動の心でまんじゅうを食らうのみ。
『まんじゅうだ!今日もまんじゅう食ってるよあの平たい顔の人たち!』
『平たい顔族はまんじゅうが好物なのかね?差し入れにまんじゅうでも作ってきてやるか』
何やら羅馬人が話しているが、大和言葉ではないので某にはよくわからない。
その後、羅馬人が笑顔でまんじゅうを持ってきたので我らは凍りついた。羅馬人の気持ちだけ貰うと某は今日もまんじゅうを食らう。
羅馬生活三日目。某は今日もまんじゅうを食らっている。いや、食う必要あるのかなこのまんじゅう。正直、このまんじゅうを食らうなら、空腹でいた方が楽な気がしてきた。てかこのまんじゅうは何日も続けて食べても大丈夫なものなの?致死量とかない?
……体は健康そのものではあるが、このまんじゅうのせいで精神に異常を来しているような気がする。望月千代女殿なんか『今日は口寄せした大蛇と水で優勝するわねぇ』『やだー!おいしそー!』『うますぎて赤兎馬になったわぁ』と意味不明な言葉を呟いている。何やら精神に作用する薬草でも入っているのではないか?
『荒れてやがんなぁ、相変わらずまんじゅうばっか食ってんのか?食うもん食わねえと身がもたねえぞ』
我らが死んだ顔でまんじゅうを貪っていると、かの独眼竜、伊達政宗殿が話しかけてきた。何やら我らの世界線ではないバサラ的な政宗殿のような気がするが……む、何を言っているのだろう某は?ついに精神に異常を来したか。
『差し入れ持ってきたからみんなで食いな』
一斉に皆が狂喜乱舞した。政宗殿は料理の名人としても知られている。まんじゅう以外であればこれ以上嬉しいことはない。
そして出されたのは――なぜか拉麺であった。
何でも古来より忍者は寿司と拉麺と竹輪が好物だと決まっているとかなんとか。拉麺はともかく竹輪は服部殿が飼っている犬の好物じゃないだろうか?
それはさておき、久しぶりの温かい食事に我らは舞い上がった。食欲を唆る香りと色鮮やかな色彩に皆が見とれていると。
『まあ、待ちな。仕上げがまだ残っている』
我らの口からよだれが溢れる。こんなに美味しそうな料理にさらに工夫を加えたらどうなってしまうのだろうか。我らが羨望の眼差しで政宗殿を見つめていると、彼は桶にいっぱい入った謎の物体を柄杓で掬いこう言ったのだ。
『マヨネーズが足りないんだけどォォ!!!』
その瞬間、拉麺はただの犬の餌以下の何かに成り下がった。
白濁とした物体を山のように盛られた拉麺を生ゴミに捨て、某は今日もまんじゅうを食らう。
羅馬生活四日目。某はまんじゅうを一口だけ食べて残した。忍びとしてある程度毒物に対する耐性を獲得しているが、体がこのまんじゅうを摂取することを拒絶している。栄養を摂ると同時に、人間としての尊厳が失われているような気がする今日この頃。
今まで食事に栄養補給以外の役割を期待したことはない。生きるために食べる必要があるから、ただ行っていた行為のはずだった。
時には木の根を齧り、泥水を啜って空腹を堪えた時代もあった。忍び堪える者、それすなわち忍び。それこそが忍びの本懐。…だが某は耐えることが出来るだろうか?
妖術師の襲撃を待ち望んでいる自分がいる。
羅馬生活五日目。今日は残す事なく食べられた……と、思ったら道端の丸い石を齧っていたようだ。どうりで口の中が血だらけなわけだ。でも、味はまんじゅうよりマシだった。
『少しいいでしょうか?』
救護てんとに向かう道すがら、とある女忍者に声を掛けられた。
世に聞こえし『飛加藤』『鳶加藤』の異名を持つ忍び、加藤段蔵殿。筑後国の妖術師、七宝行者果心居士が作り出した最高のからくり人形であるが…なんというか、まったく忍んでいない破廉恥な装いが目に余る。望月千代女殿もそうだが、隠密を生業とする忍びがそういう露出の多い格好をするのはいかがなものだろうか。
なんでも、最近の忍び達の士気の低下を憂慮した段蔵殿が新たに改良を施した風魔まんじゅうを開発。その試食を募っているらしい。某は喜んで協力に応じた……。
某は知るだろう。
本当の悲劇は絶望によって生まれるのではない事を。運命に抗う事で見出される希望……それが我らを犠牲へと駆り立てた。
羅馬生活六日目。
まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。まんじゅう。
まんじゅうこわい。
その日、人類は思い出した。自分たちが地上において絶対的な支配者ではないことを。自然の猛威すら覆す力さえ、超常の存在の前では無意味であった。
海上を移動し、大陸に降り立ったORTは最短距離でローマへ向かった。進行上にある岩や森、山すらも構わず一直線に移動し、そのあとには真っ直ぐに穿たれた大地だけが残る。
そしてとある城塞都市にも、その脅威が迫っていた。ORTの進行ルートでは都市ポンペイの中央を通過する必要があった。
高速移動する40メートルもの巨大な質量。その衝撃と余波がポンペイにどれだけの被害をもたらすかは、想像に難くない。
初めに気付いたのは三人の忍び。ポンペイに滞在していた風魔頭領の小太郎と段蔵、歩き巫女の望月千代女であった。何ともデンジャラスなアトモスフィアを感じて城壁を登って周囲を見渡せば、アナヤ! いるではないかビッグなスパイダー。
「他の忍び達はなぜか体調不良で戦える状況ではありません!」
「我々だけでもこの都市を守らねば!」
「いや…まんじゅうはもういやだぁ……」
何やら一人はハーフデスハーフライフ状態であるが、伝説の忍び三人がこの窮地に立ちあがったのだ。ORTの進路方向に立ちはだかった小太郎は名乗りを上げる。
「ドーモ、風魔小太郎です」
アイサツ。ニンジャのイクサにおける絶対の礼儀。火急の用事、どれだけの憎しみを持っていても欠かしてはならない。古事記にもそう書いてある。
合掌と一礼の動作は極めればブッダが宿るとされるらしい。
しかし相手はニンジャにあらず。人知の及ばぬ人外である。それにこのとき、ORTは急いでいたので小太郎なんぞアウトオブガンチュー!
「おのれ!アイサツするに能わずと申すか!」
イヤー!小太郎の怒りカラテがORTを襲う。
それに合わせて二人もカガクニンポとクチヨセニンポを駆使した。どこかのニンジャが使う火の鳥ならぬタイフーの如きバードとヒュドラオロチがORTと衝突した。まるでゴジラ映画だ!
だが相手は地上で最強の存在。そのハードなスキンが全ての攻撃を無効し、圧倒的なレベル差を三人に知らしめる。圧倒的絶望、もはやなす術はない。
誰もがポンペイのネギトロめいた光景を思い浮かべた。
「イヤー!!!」
唐突なニンジャシャウト。バターガールの如き正確無比なスパーキングで投擲されたそれが、ORTの口へと運ばれる。どうしたことだろう。今までそのステップを止めなかったORTに変化が現れた。
『エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!エラー!』
解析不能な現象がORTを蝕んでいる。
ルシウスとの交流から人のハートとボディを獲得したORT。ゆえに生まれた弊害がいくつかあった。
幼い子供が癇癪を起こすように、彼女の芽生えたエゴは成熟しきってはいない。感情と論理的な思考が衝突するパラドックスに、落としどころを見つけるにはまだ経験が足りていなかった。
ならば人間のボディを獲得したことによる弊害とは?
『何これ!?口の中が変な感じが……うぇ!!』
ボディを手に入れるということは、新たに感覚器官を手に入れるということである。彼女は新たに人間の"味覚"を獲得した。食べ物の味が分かるようになったわけだが、毒のような劇物は毒性と共に味も無効化されてしまう。
しかし今回、口にスパーキングされたものは別に毒物というわけではない。それどころか体にとてもいい物なので、本来発揮されるオートプロテクトが解除されたのだ。それがORTの命運を分けることになる。ナムアミダブツ!
「あ、あれは!」
都市の城壁で佇む孤独なニンジャシルエット。手には見慣れたイモータル・カオス・ブリゲイドまんじゅうが握られている。たぶん食べた人間は死ぬ!
「イヤー!!!」
大地に降り立ち、見事なヒーロー着地を決めたニンジャ。シンプルなニンジャスーツに身を包んだモブフェイスではあるが、その瞳には強い憎しみを秘めていた。
「ドーモ、マンジュウスレイヤーです」
なんとミゴトなアイサツ!洗練された合掌と一礼の動作はまさに神がかり的である。そこにいた誰もが、そのニンジャの背後にサウザンドハンドブッダの姿を幻視した。
『ど、ドーモ、マンジュウスレイヤー=サン。ORTです…』
「ORT=サン。あなたに恨みはないがここで死んでもらう」
『アイエエエ!?ナンデ!?』
あまりにもミゴトなアイサツにつられ、たどたどしいアイサツを返したORT。しかし返された言葉はまさかのキリングのカミングアウト。
それもその筈。このニンジャ、元は山崎なる典型的なジャパニーズであったが、先の見えぬまんじゅう生活で自我を喪失しかけていたところを『ちからが欲しいか?』とニンジャソウルに憑依されたのだ。それは風魔まんじゅうを食して倒れていったニンジャたちの怨念が融合して生まれたダークソウル。この行き場のないまんじゅうへの憎しみ、晴らさでおくべきかヨツヤカイダン!
「イヤー!!!」
『やめ、アバー!!!』
ワザマエ!流麗な動作からスパーキングされた無数のまんじゅうはミゴトに口へと放り込まれていく。押し寄せる不味さに精神が浸食される。それは完全無二の存在が初めて体験する死への恐怖でもあった。
「今だ!イヤー!!」
「「「イヤー!!!」」」
ORTの巨体がよろめいた瞬間をニンジャたちは見逃さなかった。一糸乱れぬ合わせカラテで繰り出されたライダーキックは四人合わせて四倍。そしてこれまで散って行った仲間たちの思いも加わり千倍。合わせて四千倍だぁ!!
『うえーん!オタッシャデ―!!』
衝撃で大きくゲインしたORTであったが、肉体にはそれほどダメージを受けていない。しかし受けた精神的なダメージは彼女に消えぬトラウマを残すことだろう。癒しを求めて彼女は弧を描きながら空を飛んで行った。そんな精神状態でルシウスが害される光景を見ようものならば、彼女の堪忍バルーンもプッツンするに違いないが、ニンジャたちがそれを知るすべなどない。
かくして都市ポンペイは四人のニンジャと、散って行った同朋の想いによって守られた。
山崎は多くの忍びの里から引き抜きプッシュをされることとなるが、これを全て断り忍びの世界から足を洗う事になる。今まで無頓着であった食の世界に触れ、彼はあのまんじゅうの悲劇を繰り返さないように菓子職人となったのだ。遠い未来に山崎の子孫がパン業界に進出することがあるかもしれない。
前回の投稿からかなりの月日が流れ、コロナウイルスの感染拡大やウクライナ情勢といった世界規模の変化に伴って私たちの生活も激変しました。私も去年の11月ごろに心身のバランスを大きく崩して入院しましたが、時折届くみなさまの応援に勇気をもらっています。先の見えないこの情勢の中、ハーメルンの小説たちがみなさまの癒しとなることを願っています。
それはさておき、最近消えかけていた創作意欲に再び熱が灯ったので取り敢えずこの作品だけでも完結させたいと思っています。これが終わったら何か新作でも書きたいな。