ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!!   作:オールドファッション

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作者『書く前に自作を読み返すかぁ……』

一時間後……。

作者『何だこの頭のおかしな作品は?書いたの誰だよ?』


番外編なわけないだろ!ストレンジフェイクアニメ化おめでとう!!
行くに決まってるだろう!だって火山大国じゃねえか!!


 スノーフィールドの薄暗いどこかの一室。偽りの聖杯戦争の裏側を知る人物たちがモニター越しに密談を行っていた。

 

 魔術師としては若いが、合衆国政府の公僕としての責務と聖杯戦争の心労から額にうっすらとシワ痕を残す青年ファルデウス・ディオランド。そして彼に付き従う秘書のアルドラ……実は最近、上司の白髪が増えて来たことをちょっぴり心配していたりする。

 

『ヤッホー!ファルデウスくん元気かな?白髪増えた?』

 

「貴方はストレスと関係なさそうで良いですね」

 

『ひどーい!私だって落ち込む時くらいあるんだぞ!まあ、私を凹ませる相手なんて数えるくらいしかいなかったけどねぇ』

 

 片や、モニターに映る相手は白いゴスロリ調の衣装をまとったやたらと肌色の多い少女フランチェスカ・プレラーティ。昨今、アニメであっても肌の露出にうるさい世の中で結構破廉恥な格好をしている。良いぞ!もっとやれ!と今は亡き友人ジル・ド・レェは親指を立てた。

 

『ええと、まずはキシュアのご老体でしょう。享楽主義者のサンジェルマン。悠久を生きた御伽の魔女。モナコの金持ち吸血種。どこかの学校にいたすっごく古い言葉を使う先生……先生といえば、私に魔術を教えたお師匠様たちもか。あっ!それとあの子!傷んだ赤色(スカー・レッド)!』

 

 魔術世界の裏側に精通した者ならば目を覆いたくなるようなビッグネームを口遊みながら、フランチェスカは白磁の指を1つずつ折っていく。最後の1人に至っては、人形使いのファルデウスがもっともよく知る人物であった。本人がこの場に居ないとはいえ、その2つ名を聞いただけで彼は反射的に身震いする。

 

『彼らには私もギャフンと言わされたなぁ。でも、そんな彼らでも”ルシウス”くんには及ばないかな』

 

 唐突に発せられた言葉に、ファルデウスの震えは完全に静止した。

 

「……それは、かのルシウス・モデストゥスのことですか?」

 

 ルシウス・クイントゥス・モデストゥス。

 第五代皇帝ネロ・クラウディウスと共にローマの最盛期を支えた人物として知られ、古代ローマ遺跡を発掘すると彼に関する遺物が必ず出土する。当時では考えられないほど先進的な政策の立案や、革新的な発明を生み出し、1世紀という年代にも関わらず、古代ローマ人は近代文明と遜色のない暮らしをしていたと言われている。いわゆる『すべての道はローマに通ず』の語源が彼であった。

 

 しかし、彼に関する伝説というのがどれも支離滅裂すぎてムー大陸やアトランティス並みの都市伝説として語られている。

 

 古代ローマで数多のテルマエを造り、千の喜劇を書き上げ、各大陸の王たちを魅了し、近代的医療施設を立ち上げ、ローマの大火を防ぎ、キリスト並みの奇跡を起こした男。

 ぶっちゃけ盛りすぎた空話だろうと誰もが思った。味噌を作っただの、アイドル事業を考えただの、バスケを国技にしただの、温泉で波乗りしただの……プロパガンダ目的の偽史でももう少しマシな事を書いてある。

 おかげでどこぞのミステリー月刊誌の常連ネタと化していた。これには高倉健もラーメンとカツ丼を食いながら黄色いハンカチで涙を拭う。

 

 だが、魔術世界の裏側では彼の実在性は証明されている。古代ローマ遺跡に散見する彼の遺物や、当時の大陸中の伝承にはルシウスの名が必ず登場するのだ。

 彼が奇跡の代行者であったかは定かではないが、古代ローマ遺跡の地脈には奇跡の痕跡たるマナが大量に流れている。地脈はローマ教皇が支配する教皇領として管理され、出土品の99%が聖堂教会預かりになっているらしい。

 

『名前だけはファルデウス君も知ってるか……名前だけは。本当にキリスト教の面目躍如ってやつだよねぇ』

 

 ファルデウスの様子を見てフランチェスカは珍しく真顔になって落胆する。そして上を見上げて懐かしそうに過去を振り返り始めた。

 

『当時のルシウス君人気は凄くてね。大陸中の全ての人間が彼のことを知っていた。彼がいなくなってからもその熱気は収まりが付かなくて……当時のローマ教皇は、聖ペトロの遺言通りにルシウス君を聖人として列聖したんだ』

 

 初期キリスト教はルシウスを聖人という枠組みに入れることで、共に影響力を得ることを画策した。実際、それを機にキリスト教の布教は進み、一大宗教としてヨーロッパの社会基盤にまで発展することになる。

 ぶっちゃけると滅亡した古代ローマ文明の代わりにキリスト教がルシウスグッズやイベントの供給を運営していたというのが実情だった。ペトロもかなりのルシウスオタクだったので晩年までは頑張ってフィギュア作りに精を出していたらしい……布教活動は?

 

『でも当然問題が1つあった。ルシウス君の求心力さ』

 

 元々ルシウスというネームバリューで集まった信者たち。一応聖書も持っていたが、ベストバイブルは『ルシウス銀河英雄伝』というドグラ・マグラも逃げ出す奇書だ。名前から御察しの通り宇宙や惑星は勿論、地動説やら種の起源やら万有引力やらにまで言及している古代の価値観を無視した作品。

 

 そもそも、キリスト教の宗教観と合うはずもないのがルシウスなのである。

 当人たちは立川で楽しく銭湯に入ってたりしなかったりするが、そんなこと信者は知る由もないし。

 

『五世紀ごろ、原理主義者たちはルシウス君をキリスト教から引き剥がすことを決めてね。千年以上という長い時を掛けて彼の影響力を削いだんだ』

 

「それでも完全に歴史から消せなかったのですか」

 

『当たり前じゃん。当然、ルシウス君を推していた対抗勢力がめちゃくちゃ争ったよ……宗教改革において、ローマ・カトリック教会と分離したキリスト教の宗派といえば分かるでしょう?』

 

「プロテスタントですか?」

 

 フランチェスカは手で大きなばつ印を作る。

 

 

『風呂テスタントだよ』

 

 

 室内に奇妙な沈黙が木霊する。

 ファルデウスは聞き間違いかと思った。

 

「すみません。もう一度言ってもらえますか」

 

『え、風呂テスタント?』

 

 どうやら耳に馬鹿でかいゴミが詰まっているらしい。

 ファルデウスは秘書に膝枕をされながら耳掃除を行った。あまりの心地よさと耳を塞ぎたくなるような情報に短い現実逃避に浸る。

 

「よし。もう一度お願いします」

 

『だから!風呂テスタントだよ!!』

 

「嘘おっしゃい!何で日本語とラテン語が混在してるんですか!」

 

 ファルデウスの反応にフランチェスカは口元を覆った。まるで信じられないものでも見るかのように、そして可哀想なものでも見るかのように哀れみの視線を送る。

 

『和製ローマ語を知らないなんて……ファルデウス君どこの田舎者?あっ、合衆国かぁ。新興国じゃん、可哀想ぉ……』

 

 和製ローマ語とは、当時ルシウスが喋っていた言葉や彼の著書の中に登場する言語。つまりは生前親しんだ日本語のことである。日本語と共通する部分も多いことから和製ローマ語と呼称されていた。

 ルシウスの著書には日本文化に関する記述が多く散見される。そのため彼を信奉する者にとって日本は聖地として神聖視されているのだ。

 あのイスカリオテのユダですら、名前に湯が入っているからローマではめでたい名前だとされている。ちなみにレイは冷を連想させるから縁起が悪い。こんな時どんな顔をしたらいいの?てめえらの血はなに色だ―――っ!ってルシウスに抗議するといいよ。

 

『中世のキリスト教は本当に酷くてね!彼の書いたルシウス銀河英雄伝はもちろん禁書&焚書案件だし……』

 

 ルシウス銀河英雄伝を所有していれば異端審問官がやって来て『何これ』案件だ。これは山鯨じゃビタミン剤じゃと誤魔化しても異端審問官が没収していく。実は燃やさずに読んでいたなんて本末転倒なことが多々あったが、根気よくほぼ全ての著書を回収した。

 まあ、当時の民衆は桃太郎感覚で一言一句全ての内容を覚えていたので、これにはまだ我慢ができた。

 

 だが……。

 

 

『何より!ルシウス君の象徴である――入浴文化を禁止にしたんだよ!!』

 

 

 これには全大陸中の風呂キチたちが立ち上がった。『それをすてるなんてとんでもない!』とメッセージが表示されて進行が止まるような暴挙。『我らの神は杯など持たない!でもお風呂は入るぞ!』と異教徒たちもドン引きした。

 当時の人類圏ではルシウスの影響によって入浴は息をするのと同じくらい普通のことであった。人類にとっての入浴文化とは、例えるならイギリス人にとっての紅茶。日本人にとっての米。遊城十代にとってのフレイム・ウィングマンくらいのフェイバリット・ヒーロー。

 

 多くの教徒がキリスト教から分離し、多くの諸教派が生まれたが、基本的には風呂に入りながら抗議する者として風呂テスタントと総称されることになる。その流れを組んだのが、ルターが起こした宗教改革運動によって派生したプロテスタントだ。ここ、テストに出ますよ。

 

『元々、ルシウス君の名の下に纏まっていた48の連盟国も次第に分裂。十字軍遠征や百年戦争の原因にもなったね……ああ、百年戦争といえば、あの聖処女も生粋の風呂テスタントだよ』

 

「まさか、ジャンヌ・ダルク……ですか?」

 

『うん!すごかったよ!『風呂を取り戻せー!』って、温泉マークの旗を振りながら敵陣に突っ込んでいくあの姿!聖女っていうよりも、最も勢いのある女と書いて勢女って感じだよねぇ!!』

 

「……」

 

 フランチェスカの語る頭のおかしい歴史の真実に、ファルデウスは頭を痛めた。

 歴史とは往々にして真実と似て非なるものであるが、これはもはや原型すらない。大判焼きとベイクドモチョチョくらい違う。

 だが同時に、ルシウスのことを上手く隠蔽して来た教会の手腕に感嘆を覚えてもいた。彼はこの偽りの聖杯戦争における監督役の的な存在として立ち回っているが、イレギュラーが多すぎて隠蔽工作に苦戦し続けている。巨大なクレーター、歌劇場の破壊、英霊のTV中継……もう、全部ガスのせいにしよう。

 

 対照的に、思い出話に浸っているフランチェスカは楽しそうにルシウスのことを語っていた。

 ファルデウスは目頭を揉みながら彼女を睨めつける。

 

「何だかんだ楽しそうですね」

 

『まあね。私は古い生まれだからルシウス君のことはよく知っているよ。あそこまで善性の狂気に偏った人間は珍しい。それに当時の空気感を直に体験しているから……ああ!あの時代は本当に楽しかったなぁ!!』

 

 フランチェスカは笑う。まるで恋人を思って頬を染める少女のように。

 老獪な怪物の面影はそこにはない。純粋無垢な親愛の情だけが存在していた。

 

 そして何より、――怒りがあった。

 

 

『だから私は、彼を否定したローマ・カトリックも”彼自身”も許せないんだ』

 

 

 満面の笑みを湛えていた表情は一変し、影の差した顔に暗澹たる黒い瞳だけが輝きを放つ。腹の底から鳴り響く冷たい声が、スピーカーをひどく軋ませた。

 出会ってから始終ずっと狂ったようにケラケラと笑っていたフランチェスカだが、初めて見せたその表情にファルデウスは唖然となる。

 

『驚いた?でもね、当時の人々の怒りはこんなものじゃなかったよ。ルシウス君が繁栄させた文化と偉業を歴史から消そうとして、今ものうのうとその地に座すローマ・カトリック。いや、ローマと名乗るのも烏滸がましい……全く笑えないよ』

 

「随分と肩入れされているようですね」

 

『だって大大大好きなんだもん!冬木の聖杯戦争でサーヴァントになったって聞いて、南極から日本にまですっ飛んで攫いに行こうかと思ったんだけど、キエフの蟲遣いの末裔と心臓のない男に邪魔されてね。まあ、どの道『蜘蛛』と『黒血の月蝕姫』のせいで無理ゲーだったけど』

 

 蜘蛛、黒血の月蝕姫。聞き覚えのない名を聞いてファルデウスは首をかしげた。

 正史では16世紀に冠位魔術師率いる調査チームと邂逅したタイプ・マアキュリーも、ルシウスの介在によって所在地が転々としていた。件の姉の方は聖堂教会案件なので元々存在を知る人物は少ない。

 

『偽りの歴史に埋もれていった英雄。彼ほど今回の聖杯戦争にふさわしいサーヴァントはいないよね。うーん、でもいたらいたで滅茶苦茶になるからなぁ。絶対今以上にイレギュラーだらけなことになるよ』

 

 ファルデウスの胃がキリキリと痛む。チャイナタウンで食べた麻婆豆腐のせいかな?

 

「……あのセイバーのようにうっかり召喚されないことを祈りますよ」

 

『ん?召喚は無理だよ。だって、英霊の座にはいないもん』

 

「は?」

 

 合衆国と魔術協会の調査では、冬木の第四次聖杯戦争にてルシウス・クイントゥス・モデストゥスの召喚が確認されている。なら、英霊の座に彼が存在しないのはありえない。

 聖杯戦争の準備をするにあたって、ファルデウスは英霊召喚について調べ尽くしている。聖杯戦争で召喚されるサーヴァントは、基本的には英霊の座からコピーされた分霊。 不完全な模倣と改造によって冬木の聖杯戦争とは別物となった今回の聖杯戦争においてもそれは変わらない。英霊召喚のための前提条件のようなものだ。

 

 混乱しているファルデウスに、フランチェスカは更なる爆弾を投下する。

 

 

『だって、今も生きて埋葬機関と追っかけっこしてるし……あ、これオフレコね。聖堂教会のトップシークレットだから』

 

 

 耳掃除をしたことによって、禁忌の言葉が一字一句聞き逃すことなく聴覚に注がれる。ファルデウスの白髪が爆増した。

 上司の若白髪にアルドラは涙し、フランチェスカは『お揃いだね!』と自身の白髪を撫でながら大爆笑する。

 

『Hei-Hei-hou♪Hei-Hei-hou♪』

 

 ファルデウスが記憶処理を施そうか悩んでいると、携帯の着信音が鳴り響いた。

 ちなみに着メロは古代ローマの国歌『よく分からないけどさ、風呂入っていると口遊んでいるあの歌』。略して『ヨサク』である。ごめんねキタちゃん。

 

「こちら家畜。はい……はい……?」

 

 部下から報告を聞き終えたファルデウスは奇妙な表情を浮かべていた。それを見たフランチェスカは首を傾げる。

 

『どうしたの?またイレギュラー?』

 

「外来からの魔術師を監視するため、空港に貼り付かせていた部下から報告です。金属探知機に引っ掛かった奇妙な乗客がいたそうで……何でも、身体中から金属反応を検知したとか」

 

『何そのターミネーター。もしくはクリスタルボーイ?まあ、機械の故障じゃないかな。魔術師がそんなことで引っかかるとも思えないし』

 

「そうですよね。一応、監視を付けましたが……ちなみに、これがその乗客たちの顔写真です」

 

 添付された画像を開き、一枚の写真を携帯の小さい画面に表示した。中年の”ローマ人”男性と、2人の若い女性という少し奇妙な組み合わせだ。

 

 フランチェスカはそれを見て固まる。

 

『うーん、老眼かな?いや、霞目かも……ちょっと目薬差してくるね』

 

 震える手つきで目薬を顔中に付けながら、彼女は再び写真を見つめる。

 そして……。

 

 

 

『いやあああああああああああああああ!!!』

 

 

 

 ベッドの中でうずくまり、普段の彼女からは考えられないような悲鳴を上げる。

 ファルデウスは驚きのあまり携帯を落としたが、拾いもせずにミノムシ状態のフランチェスカを呆然と眺めていた。

 

『カットカットカットカットォォォ!何で今くるのさ!マクベスの映画を借りてきたつもりが、キラートマトにすり替えられたくらいの詐欺だよぉ!!』

 

 どこかの演劇狂いのような台詞回しをしながら枕をモニター越しに投げ付ける。まるで思春期の子供のような様子にファルデウスの困惑はただ深まるばかりだ。

 

「ほ、捕縛しましょうか?」

 

『絶対だめ!』

 

 ベッドから飛び起きたフランチェスカはモニターに鼻先をくっ付けながらファルデウスを制した。あまりにも無謀な提案にフランチェスカの額に汗が滲み出す。

 

『スノーフィールドには近づけさせないで……いや、手元に置いといた方が逆に安全かな!?もー!ナルバレックは何してるのさー!!』

 

 聖杯戦争そのものを冒涜しようとしたら、それよりもさらに冒涜的な存在の来訪。

 スノーフィールドの偽りの聖杯戦争は更なる混迷を極めることになる。

 

 行くぞアメリカ──温泉の貯蔵は充分か?

 




どうもみなさん、本当にお久しぶりでございます。
過去作を全然完成させないで別の作品を書いている作者です。異端審問官だ!火あぶりの刑に処す!さあ揚げ焼きにして砂糖を塗し、コーヒーと一緒に召し上がれ。

本編を書く前にリハビリで番外編を書きましたが……いやぁ、何この作品?どうやって書いたの?って過去の自分を殴りたくなるような怪作で、血反吐を吐きながら書きました。
ただ、元々Fate/Zeroまでの構想は昔からあったので書くのは比較的楽でしたね。あと3、4話くらい他の陣営とルシウスの話をやる予定です。待ってろよ!まっくろさん!

同時進行で連載中のフリーレン小説もあるので気になった方は気軽にご覧ください。
https://syosetu.org/novel/389763/
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