ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!!   作:オールドファッション

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ルシウスが大人しくするわけないだろ!闇芝居の時間だよ!!

 スノーフィールドの警察署長であり、この偽りの聖杯の裏側を知る魔術師でもあるオーランド・リーヴ。

 彼は監視映像を眺めながら長い溜息を吐いた。

 

『絶対に刺激しないで!そして絶対に外に出さないで!』

 

 『火傷せずに素手で火中の栗を拾え』と言わんばかりの高橋留美子作品的な無理難題を押し付けられたものの、あの老害がこれほど狼狽する相手だ。細心の注意を払い、犯罪事件の重要参考人として署内に軟禁しているが、思いの外、相手は抵抗もせずに従っている。

 

 ぶっちゃけ、ルシウスはネロと国家権力に弱かった。

 税金も納めてないし、国税局の人間かと思い、素直にお縄に付いている。

 

 しかし……。

 

『何!オメガドライブもドリームキャストもないだと!セガサターンもか!許せん、藤岡弘に代わって背負い投げしてくれる!』

 

 なぜか白い柔道着に着替えて猛突進。そして二十八人の怪物(クラン・カラティン)の1人にあっさりと無力化される。うーん、これは白帯よりも下のマイナス5段。

 

 暴れられても面倒なので、部下にゲーム機を用意させると、『アドミラブル大戦略IV』というマイナーゲームで遊び始めた。

 ちなみに、ゲーム機はジョン・ウィンガードの私物ではある。ときメモが入っていたことがバレて、同僚の女の子の好感度は下がった。

 

「実に大人しいものだな」

 

 大戦略Tシャツに着替えたルシウスを眺めながら、オーランドは呟いた。

 

 他の2人の人外とは違い、ルシウスに対しては何ら危機感を感じられなかった。あの2人は時々、隠しカメラに目線を向けてくる。2人の正体を知らないオーランドでも、目が合った瞬間に生物の本能が警告した……あれらには手を出すな、と。

 それに比べれば、ルシウスの奇行や、オペラハウスを破壊したセイバーすら些細な問題に思えてくる。

 

 デスクに置かれた黒電話がジリジリと鳴った。

 

 この電話が鳴ったのは、この1時間だけでも5回目。相手の要求が分かっていたので、ずっと無視を決め込んでいたが、直接監視対象の部屋に赴かれても面倒だと思い直す。

 

 渋々と受話器を取ると……。

 

 

 

 

『よおう兄弟!!ようやく出やがったな!!!』

 

 

 

 

 いつもより3割り増しの声量に、耳を塞ぎたくなった。耳から少し離し、口元に受話器を近づける。

 

「……何の用だ、キャスター」

 

『決まってるだろ!ローマ人を隠してるんだろ!!ルシウス・モデストゥスに会わせやがれ!!!』

 

 アレクサンドル・デュマ。大デュマとも呼ばれる男は声を荒げて叫んだ。

 

 『巌窟王』『三銃士』『王妃マルゴ』などを世に出した19世紀フランスの劇作家にして小説家。また、『料理大辞典』を執筆するほどの料理人であり、1860年代前半にローマのポンペイ遺跡発掘にも関わっていたという。彼がルシウスに興味を示さないわけがなかった。

 

「会ってどうするつもりだ」

 

『そんなの決まっているだろ!俺は奴の作品のファンなんだ!あわよくば、古代ローマの美食とやらを食いながら、作品について語り明かしたいもんだぜ!』

 

「君の時代には、彼の作品はすでに失伝していたと記憶しているが?」

 

 口伝によって人々に伝承されてきたルシウス銀河英雄伝も、15世紀ごろになると少しずつ失伝していった。そしてデュマの時代、その内容を知る人物はほとんど残っていなかったのだ。

 ルシウスという存在の逸話は残ったものの、彼の著書に関しては『千の喜劇』という大まかな情報のみである。

 

『兄弟は、『さまよえるローマ人』って話を知ってるか?』

 

「……オランダ人ではなく、ローマ人か?」

 

『何だ、知らないのか。俺の時代じゃ結構有名な怪談話みたいなものだったぜ』

 

 フライング・ダッチマンには悪いが、時代は19世紀のヨーロッパに遡る。

 

 ある子供が1人のローマ人と出会った。ローマ人の1人や2人、珍しくもなかったが、そのローマ人の奇行が目立っていたため、子供はローマ人の顔をしっかりと覚えてしまった。

 

 それから何十年も年月が経ち、子供は老人になっていた。今では孫に連れられて公衆浴場に向かうのが老人の日課となっていたのだ。

 

 ふと、隣を見ると何となく見覚えのある男がいた。老人は目を凝らして男を見つめ……そして悲鳴を上げた。

 

 あのローマ人が、湯に浸かっていたのだ。

 少年の頃に見かけた時から、ローマ人は少しも歳を取っていなかった。

 

『怖くなった老人は、その場から逃げ出したのだった……てな感じの話さ。こんな話が各地で広まってな。あの『ディオダティ館の夜』にも、その男が登場するのさ』

 

「確か、スイスの別荘に滞在していた5人の文学者たちが、怪奇談を披露し合ったという実話だったな」

 

 1816年。『夏のない年』と呼ばれる寒冷な気候の中、バイロン卿、医師のジョン・ポリドリ、詩人パーシー・シェリー、メアリー・ゴドウィン、その義妹のクレア・クレアモントが、悪天候のせいで別荘に閉じ込められていた。

 気晴らしも兼ねて、『皆で1つずつ怪奇譚を書こう』とバイロン卿が一同に提案すると、その夜5人は自作のプロットを披露し合った。ホラー映画や某サンデーの探偵漫画なら死人が出そうな展開だが、特に怪奇現象や流血事件は起こっていないらしい。

 

 ポリドリは『吸血鬼』。メアリー・ゴドウィン、後のメアリー・シェリーは『フランケンシュタイン』の原案を考え出している。

 

『これから怪奇譚を発表しようとしたその時、ずぶ濡れの1人の『ローマ人』が現れた。大雨で道に迷っていたらしく、5人はローマ人を別荘に招き入れたのさ』

 

 全員がひとしきり話し終えると、ポリドリとメアリーはローマ人に原案の批評を求めた。

 すると、ローマ人はこう言った。

 

『うーん、私ってホラー系苦手なんだよね……喜劇なら得意なんだが』

 

『劇作家でしたか。なら、あなたの喜劇を聞かせて下さい』

 

『構わないが、久しぶりだから上手く書けるかな』

 

 5人が頼むと、ローマ人は渋々とペンを持って、目にも留まらぬ速さで喜劇を書き上げた。

 そして出来上がったのが、ポリドリとメアリーの作品を魔改造した【すぐ死ぬ吸血鬼 VS新世紀フランゲリオン】『ギアスをもって命じる!思春期を殺した少年のテーゼ!』だ。ちょっとサンデーとガイナックスに謝罪に行こうか。

 

 それを読んだ5人は、怪奇譚の余韻も忘れて大爆笑。そして、『かのルシウス・モデストゥスの生まれ変わりに違いない』と言ってローマ人を賞賛したのだ。

 

 

 ぶっちゃけると、ルシウスその人である。

 

 

『それを聞いた俺は、すぐさまシェリー夫人に頼み込んでその即興の原稿を読ませてもらった……ぶったまげたぜ!数分で書き上げたとは思えない内容と分厚さだ!』

 

「ほう、君にそう言わしめるほどか」

 

 オーランドは、デュマの人となりについては、あまり良くは思っていない。それでも、彼の作家としての能力は非常に高く買っている。実際、彼の『巌窟王』と『三銃士』は、19世紀フランスを代表する名作であった。

 聖杯戦争でデュマを召喚したのも、伝説を上回る伝説を生み出すことのできる人物だと判断したからである。

 

『読んですぐに分かった。ありゃ、俺の先達だ。既存の作品を改造して自分の世界に再構成するタイプの作家だな。執筆速度だけなら俺を遥かに凌駕するだろうよ』

 

 デュマが生涯で書き上げた作品は500以上。驚異的な執筆量と速筆ぶりで知られているが、ルシウスが書き上げたのは1000シリーズを記録したルシウス銀河英雄伝だ。それも、彼は浴場建設の片手間に書き上げている。岸辺露伴でも少し引くレベルの筆の速さだった。

 

『だから会わせやがれ!出なきゃこっちから出向くぞ、俺は!!』

 

(あの老害の警告を考えるなら、このままキャスターに会わせずにいるのが得策だ。だが、キャスターを引き留められる自信もない)

 

 監視映像を眺めながら、オーランドは逡巡した。人外の2人を除けば、ルシウスは普通の一般人に見える。いくらか奇行は目立つものの、見張りの警察官とも仲良くゲームをして遊んでいるようだ。うん、あの警察官は減給だな。

 

「……電話越しの通話なら許可しよう。だが、くれぐれも無礼のないように。いつもの調子で話そうものなら、すぐに電話線を切断する」

 

『よっしゃああああ!愛してるぜ兄弟!ああ、任せろ!ご存知の通り、口は達者だぜ!ついでにルシウスの旦那の料理の腕も見せてもらいたい!俺は特製のアプリコットフランを用意するからよぉ!』

 

 受話器を置いたデュマは、生前に彼が愛したアプリコットフランのメッテルニヒ風の準備に取り掛かる。

 

 デュマは何やら期待しているようだが、古代ローマ料理とはとどのつまり、現代の料理を再現したもの。あるいは日本のカレーのように魔改造されたものだった。

 味噌も、カレーも、麻婆豆腐も、ハンバーガーも、ローマで作られたんだから、ローマ料理でええやろ。先にやったもん勝ちで青春ならば致し方なし。

 

『Hei-Hei-hou♪Hei-Hei-hou♪』

 

 着信音が室内に木霊した。

 鳴っているの机の黒電話ではなく、オーランドの携帯電話だ。見覚えのない着信番号に首を傾げるが、社会人の悲しい性で3コール以内に応答してしまう。

 

『もしもし、そちらはオーランド・リーヴ署長であっているかな?』

 

「誰だ?」

 

『スノーフィールド中央教会から派遣された監督役。ハンザ・セルバンテスだ』

 

 ハンザと名乗った神父の口上に、オーランドは眉間にしわを寄せる。

 今回の偽りの聖杯戦争を行う上で、聖堂教会の介在は望ましいものではない。だからこそ秘密裏に準備を進めてきたが、それも早々に現代魔術科のロードに見破られてしまった。その上に、英霊の全国生中継という大失態……神秘の秘匿を失敗したことに苦言を呈されても、文句も返せない状況だ。

 

 だが、監督役の関心はそこにはなかった。

 

『本当に……聖ルシウスが、そちらにいるのか?』

 

 わずかに上擦った声で、ハンザはオーランドに訊ねた。

 

(聖、ルシウスか……)

 

 大体の説明はフランチェスカから聞かされている。

 かつて教会はルシウスを聖人として遇していたが、後に教義から分離させている。教会と関わりのないオーランドには、ルシウスが現在の教会内でどのような扱いになっているのか分からなかった。

 

「さあな、何のことだ?」

 

 適当にはぐらかし、相手の様子を探って見ることにした。

 

『貴様っ、早く答えろ!』

 

「ふっ、随分余裕がなさそうだな」

 

 魔術師にとって不倶戴天の存在である聖堂教会。その信徒の1人を手玉に取っているようで、オーランドの溜飲が少し下がっていく。

 

 しかし、それも束の間の出来事であった。

 

『はっ!……しかし……はい、分かりました』

 

 ハンザは何やら畏まった様子で誰かと会話をしている。余裕がないのはその人物のせいらしい。

 

『お電話代わりました』

 

 声は女のものだった。まだ若い女性のようだが、決して幼さを感じさせない凄みのようなものがある。そしてなぜか、その声音はフランチェスカを連想させた。

 

『わたくし、『ナルバレック』と申します。いや、こちらの通り名の方が分かりやすいか──』

 

 ナルバレック。

 時計塔とは関わりを持たないはぐれ者のオーランドでも、聞いたことのある名だった。しかし、脳が理解することを拒絶する。聞き間違いであって欲しいとすら願った。

 

 しかし、彼女は無慈悲に答えを告げる。

 

 

『埋葬機関で局長を務める者です』

 

 

 あまりの胃痛で魔術回路が軋み、オーランドが張った対魔術師用の結界は音を立てて崩れた。

 きっと、昨日チャイナタウンで食べた激辛麻婆豆腐せいだろう。同席していたファルデウスも悶絶していた。

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、アサシンのクラスとして現界した彼女は困惑していた。

 

 時は数分前に遡る。

 警察署に隣接する高層ビルの屋上。女アサシンは幾重にも張られた結界を見下ろす。

 オペラハウスで会敵したセイバーを追って来てみれば、警察署は魔術師たちの根城であった。現代でも異端とされる魔術師が、司法や行政施設を丸ごと掌握しているという事実は、彼女に信じられないものだった。

 

(見逃すわけにはいかない。この街には自分と同じ信仰を持った者たちがいるのだから)

 

 女アサシンは、先ほど書店で買ってきた一冊の本を懐から取り出す。実は同じ内容のものを既に持っていたのだが、懐かしさと感動のあまり購入してしまったのだ。ちなみに金は、ジェスターの財布から拝借させてもらった。

 

 彼女が帰依する宗教が誕生した7世紀ごろ。

 商人によって大陸に広められたその宗教は、平等という理念に元に人々が集まっていった。だが、出る杭は打たれるという諺があるように、その宗教には敵がいたのだ。

 

 1つは東ローマ帝国。またの名をビザンツ帝国と呼ばれた大国である。

 日増しに影響力を拡大していく新興勢力を危険視したビザンツ帝国は、その宗教と対立した。しかし、当の宗教者たちはローマ文明に対してまったく敵愾心を抱いていなかったのだ。

 

 彼女らの宗教観においても古代ローマのテルマエ文化は大切なものであり、西ローマ帝国が滅亡した後も『ハマム』と呼ばれるテルマエのような公共浴場文化を残してきた。風呂上がりのフルーツ牛乳も一応ハラル食だし、かの預言者も風呂上がりのフルーツ牛乳は正義だったと仰った……経典に残すか正直迷ったらしい。

 

 2つ目はキリスト教。

 同じ神を信仰する宗教組織ではあるが、根本的な教義において相容れない異教徒たち。しかもローマ・カトリックの権威が増してからは風呂キャン界隈が続出。生理的に相入れない者達である。

 

『やーい!お前の髪の毛シラミだぁらけ!』

 

『うるせぇ!お前のところの聖人も酵母菌まみれのパンとワインの集合体じゃねえか!!』

 

『言ったなてめぇ!聖戦だこらぁ!!』

 

 このように市中で相見えたら、犬猿の仲の如く罵り合うのが常であった。同じ神を信仰しているのに、いがみ合うとは何とも悲しいことだが、人間は道理に従っては生きられない生き物だ。

 

 しかしある時、一人の旅の『ローマ人』が現れた。

 

『よってらっしゃい。見てらっしゃい』

 

『あっ!紙芝居屋さんだ!』

 

 彼は旅の路銀を集めるために紙芝居を披露していた。この時ばかりは大人も子供も喧嘩をせずに紙芝居に夢中になる。宗教の諍いを忘れて、ローマ人の語る物語に心を奪われたのだ。

 

 その紙芝居の物語は、一人の英雄の物語だった。

 

──さあ、そのパンをお食べ!

 

──わーい!ありがとう!

 

 まるでイエス・キリストの逸話を元にして作られたような架空のキャラクターは、とても慈愛と勇壮さを兼ね備えた人物だった。服装は装飾華美なものではなく、造形もとてもシンプルで丸いフォルムはなんとも愛嬌を抱かせる。

 

──あなたは何のために生まれたの?何して生きるの?

 

──僕は困った人を助けた時、その人から笑顔で『ありがとう』と言われて、心が温かくなったんだ。だから、困った人を助けるために生きるのさ

 

 たったの数枚の物語の中に、至言のごとき哲学思想があった。決して見返りを求めず、時には宿敵である真っ黒い悪魔のようなキャラクターすらも助ける姿に、観客たちは心を打たれる。憎しみの炎は消え、気づけば隣同士で手を繋ぎあった。

 

──分からないまま終わる……そんなのは嫌さ!

 

──HAHIHUHEHO!

 

『がんばぇー!まけるなー!』

 

 大人も子供も。男も女も。宗教や人種の垣根すら超えて架空の英雄を応援する。

 

 そう、かの英雄の名は……。

 

 

──レッツゴー!ローマパンマン!

 

 

 御察しの通り、ルシウスが描いた某あんぱんの擬人化ヒーロー……のパチモンであった。イエスのパンのワインの逸話がいけたんだから、これもいけるだろうと作品を公開してみれば大ウケ。隣の売店でオードリーヘップパンという商品を売り出すと、それも飛ぶように売れた。とりあえず、やなせたかしとオードリー・ヘプバーンも謝罪リストに追加しておくね。

 

 この紙芝居の話は女アサシンの時代にも残っており、辛い修練の中でも、ローマパンマンの話を思い出して乗り越えてきたのだ。だからこそ、現代の書店でも見かけたことは本当に嬉しかった。

 

「スペルがローマではなくアンなのが少し気になったが、まあいいだろう」

 

 まさかの本家を購入したのはご愛嬌だろう。

 

「さて、どうしたものだろうか」

 

 再び、警察署に張られた結界を一瞥する。

 

 女アサシンの時代の長『百の貌のハサン』ならば、この結界を『他愛ない』ときり抜けただろう。はい、みんなご存知ザイードさんです。遠坂邸でも地味に結構すごいことをやっていた……あのダンスは必要だったかは分からないが。

 

 魔力代りの食料として、コンビニで買ったアンパンを頬張りながら、牛乳で流し込む。

 マスターを殺害した女アサシンは、自分に残された時間が残りわずかだと誤認していた。短い時の中で、一体自分には何ができるだろうか。──いいや、答えは分かりきっている。

 

 先達たる山の翁の御技を、ただ真似るだけしかできない未熟な自分。成せることは、この地から一人でも盃に魅入られた異教徒を打ち倒すことだ。

 

 何も分からず、何も成し得ずに終わる。そんなのは嫌だ。忘れなかった夢を抱き、涙は決してこぼしはしない。だから、私は飛ぶんだ、どこまでも。

 

 彼女は駆ける。まるで砲弾のごとく警察署に突貫して。

 彼女は片方の拳を前に出す。まるで、懐にしまった絵本の英雄のように。

 彼女の孤独ではない戦いが、幕を開けるのだった。

 

 ──だが、女アサシンには誤算があった。

 

 1つ目は警察署に張られた結界が、彼女が突貫した瞬間に消失したこと。

 オーランドは今現在、最悪のタイミングで、最悪の人物の対応に追われていた。

 

 2つ目はフランチェスカがルシウスを匿うために、一時的に警察署に張った『グランド・イリュージョン』の存在。

 世界のテクスチャそのものを騙す大魔術によって、サーヴァントですらルシウスたちの存在を今まで感知できなかった。しかし、オーランドの結界と紐つけして張られていたため、結界が消失した段階でその大魔術も綻びが生じ……わずかに気配が漏れ出てしまう。

 

 つまり、女アサシンの現状を端的に説明すると。

 結界を壊すことを前提とした全速力の突進をしたものの、結界はなぜか壊れるし、警察署内から2匹の怪物の気配をひしひしと感じる……無論、勢いのせいでブレーキも効かない状態。

 

 ちょっと、泣きそうになった。




ーチャイナタウンー

「これから忙しくなる。精のつくものを食べたいものだな」

「そうですね。……ん?」

「どうした?ファルデウス」

「いえ、大量のテイクアウトを持って店を出た方がいたので……案外、あの店がアタリかもしれませんよ」

「紅洲宴歳館・泰山二号店か……」
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