ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!!   作:オールドファッション

9 / 20
次話(が終わって)から最終章になります()
今回はネタの台風なので突っ込みで過労死しないように心を強く持って!


戦国武将が女のわけないだろ弐!戦国美少女ゲームのやりすぎぃ!!

 その日ルシウスはいつかの未来の日本に通じる穴に挑戦していた。穴は塞がずに保管しておいたのだ。しかし何度試しても上手くはいっていない。

 

 ある時はジャングルの奥地、ある時は海底二万マイル、ある時は上空二千キロメートル。今までろくな目にあっていない。しかし連日の復興作業により疲労がピークに達したルシウスは『いいや限界だ、潜るね!』と突貫した。

 

 ルシウスの霊圧が消えたことをいち早く察知したペトロは、家にパウロを置いて一人で逃げた。ペトロなのにユダとはこれいかに。

 

 一方ルシウスは別の場所に浮上していた。

 密林の猛獣やアマゾネスもいない。海底の水圧や海底都市もない。上空の雲や天空の城もない。

 

 周りは木材で作られた浴室でいつかの温泉と同じように湯気が充満していた。安全を確認すると浸かっている湯をぺろり。これは……湯じゃな。本当にただのお湯。穴が貫通して隣のテルマエと繋がったのではないかと訝しむルシウスだが、鼻を抜ける匂いには覚えがあった。それは日本人が愛して止まない檜の香りだ。つまりここは檜風呂。

 

 やはり運はこのルシウスに味方していると内心ほくそ笑んだルシウス。だが、湯気の向こうに浮かぶ人影を見て恐怖した。あるわけがないと思いつつも浴室なのにどこからか悪戯な風が湯気を散らす。おのれボレアス。

 

 湯気が晴れるとそこには黒髪の麗しい少女が湯に浸かっていた。ルシウスはこの先の展開を知っていた。またどうせ私をぼこぼこにするんでしょ!少年漫画のやられ役みたいに!

 

 しかし意外、少女はルシウスを見ても微動だにはしなかった。というよりはいきなり風呂の底から現れた外国人に困惑しているだけである。そうなると二人は身動きの取れない緊張状態に陥る。なぜならこういう場合、先に動いた方が負けみたいな子供の我慢比べ的雰囲気が生じるのだ。二人ともどちらか先に動くまで止まっているつもりだった。

 

 だが少女の頭の位置は丁度ルシウスの股間の位置にある。無論、ルシウスは裸なのでナウマン象放牧状態。側からみれば少女が男の象を見つめ続けているサファリパーク状態でもある。字面は愛らしいが現実が酷すぎる。これはまずいと思い少女は立ち上がる。無論少女も裸だ。

 

 初めに少女が動いたことで勝負は彼女の一敗となった。しかしこの少女恥ずかしがるどころか腕を組んで仁王立ち。これによりある種ルシウスと同じ土俵に立ったことを誇示した。勝負は引き分けに持ち込まれたのだ。

 

 ルシウスは恐怖した。真っ裸でドヤ顔を決める少女に正直ドン引きしている。おまえも大概だがな。

 だがこの場所に浮上してからというものなぜか頭が働かず状況がくだぐだするばかり。目眩がしたルシウスは体勢を崩し思わず足を一歩前へ出してしまう。迂闊、これでさらに少女へ有利な方向へ転んでしまった。少女のドヤ顔が5割増しにうざくなる。

 

(舐めるなよ。こっちとら踏んだ場数が違うんだ!)

 

 ルシウスは体勢を直すどころか、逆にさらに前へと前進した。これには少女の表情も凍りつく。先ほどまで男の氷河期状態だったナウマン象もその鼻を荒々しく揺らし敵意を表していた。最早勝負はルシウスの独壇場と化す。

 

 ルシウスのナウマン象と少女のメデューサが鼻先まで接近し、互いに仁王立ちの膠着状態となる。しかし実際は身長差や戦績を加味すれば二人の圧力には●リガリ君と●ーゲンダッツくらいの差があった。流石の少女もたじろぎ羞恥心で顔を赤らめる。

 

 ルシウスは少女が処女だと確信していた。ルシウスも童貞だがただの童貞ではない。これまでローマの娼婦、肉食未亡人、自称男装露出魔、母性の暴力、絆MAXのアイドル、マッドサイエンティストの魔の手から純潔を守ってきた男だ。子供の裸くらいで慌てるようなことはない。

 

 状況はあらゆる面でルシウスに有利。ここから少女の逆転劇はないかと思われた。しかし少女は滅びの言葉を知っている。幼き日、母や父から教わったあの恐ろしい言葉を。

 

 三分間待っていたルシウスの手を少女は握り締めた。ルシウスも少女が何を言わんとするか理解し青ざめる。その言葉のスイッチを押させるな!

 

 しかし少女は口を塞がれる前に呪文を口にした。

 

 

 

 

「この人、変態です」

 

 

 

 

 ルシウスは一瞬だけ眩い閃光を幻視し、今まで築いてきた盤石な勝ち筋が全て崩れていくのを錯覚した。目がー!目がー!

 そう、この少女。今までの勝負を放棄し現実世界にて有利な立ち位置を手に入れるという卑劣な暴挙に走った。こうなると今までの前提が意味を失いただの徒労にしかならない。ぶっちゃけただの変態奇行の応酬だ。

 

「おま!それはだめだろ!離せええええ!!」

 

「うっさい!幼気な少女の前で股間ぶらぶらさせとる方が悪いんじゃ!者共であえであえ!!」

 

 少女の掛け声に反応し、湯の底から竹筒を咥えた褌一丁の三人が浮上する。

 

「出て行け!姉上とお風呂に入れるのは弟である僕しかいないんだ!」

 

「殿の裸を見るに飽き足らず手を握るとはうらやま、いやけしからん!全くもってけしからん!」

 

「くっ!湯気が邪魔で殿のお姿が見えませんぞ!ふー!ふー!」

 

 ルシウスと少女は重ねた手を三人組に向けて言った。

 

「「この三人、変態です」」

 

「「「!?」」」

 

 その後、薙刀を構えた女中たちが到着し、四人は縄でぐるぐる巻きにされて連れて行かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 織田信長にとってその異人は面白いやつだった。初めは家臣らと同じ変態覗き魔かと思えば互いに変なペースに乗せられ奇行を連発。気づけば家臣らと一緒に縄に縛られてこうして座敷の上で正座させられている。これだけでも笑い物だが、この男はルシウスと言って自分を古代ローマ人と称している。古代という点は置いといて、貿易に来る南蛮人とは毛色の違う人種ではあった。

 

 そして何よりルシウスは、

 

「ローマとは、この国だ」

 

 そう言って、信長が持っていた地球儀に書かれた国を指したのだ。つまりこの男は地球が丸いことを知っており、世界の地にも詳しいことになる。今まで信長が地球儀を見せても人は理解ができなかった。ただの人と信長では見ている場所が、世界が違うのだ。

 

 カカオ豆や胡椒の粒が大金で取引される狂った世界。だからこそ面白い。なぜこれほどの価値があるのだろう。遠い向こうの国ではどうやってこれを使っているのだろう。幼かった頃の少女は日々遠い世界へ思いを馳せた。地球が回るのと同じく、時代は絶えず胎動し、大陸では文明が発達し続けている。未だ国内で刀を振り回し戦っている日本ではだめだ。たとえ周りから軽んじられ、侮蔑されようと少女は銃を取る道を選んだのだ。

 

(ああ、聞かせてくれ。お前は何を見て何を成しているのか)

 

 ルシウスはぽつぽつと自分のことを語り出す。

 

 

 

 

 そして信長は腹筋崩壊した。

 

 

 

 

「国家浴場技師……アイドルプロデューサー……温泉波乗り……。ぶふぉwwwもう、だめ…腹痛いww」

 

 ルシウスの語る話が破天荒奇天烈すぎて脳がショートしている家臣たちを他所に、信長は抱腹絶倒大草原で床の上をローリングーガール。自分がうつけならばルシウスは大うつけだった。これには森くんも大爆笑。

 

「本当にどうして浴場技師がそうなったwww」

 

「えーい、笑うな!私だって一生懸命頑張ったのだぞ!!」

 

 それアラヤの前でもういっぺん言ってみな?即剪定されるぞ。

 

「ふー、ふー。あー笑った笑った……よしお主はわしの家臣になれ!」

 

『ふぁ!?』

 

 この言葉には家臣もルシウスも目玉が飛び出る。縛られていたカッツ、ミッチー、サルも吠えた。

 

「姉上!こやつは風呂場で堂々と覗くような危険な輩ですよ!」

 

「その通りですぞ殿!このような変態を家臣に加えるなど言語道断です!」

 

「このような変態の世迷言など信じてはダメですぞ殿!」

 

「お前ら自分の胸に手を置いて考えてみな?」

 

 説得力皆無だった。

 

「いいか。こやつの言うことが真ならローマとは恐ろしい大国であろう。その国の根幹とも言える重要人物を引き抜き、わしの家臣に据えるのはそんなにおかしいことであるか?」

 

「む……それは確かに一理ありますが…」

 

 確かにこの男が信長の家臣となったなら数年で天下統一という信長の野望もびっくりなチートキャラになるだろう。噂を聞きつけた景虎の戦国無双状態に対抗できればの話ではあるがな。

 

「え、やだ……家臣とかまじ無理ぴですわ」

 

 しかしルシウス、信長の勧誘を即断った。流石のルシウスも『オッス!オラ第六天魔王!趣味は焼き討ちとか皆殺し!殺した相手のドクロの盃でカンパーイ』な人物が上司の職場はごめんだ。部下に本能寺で謀反されて職場自体がなくなるとか論外である。

 そもそも何故織田信長が女なのかと突っ込んだが『織田信長が女なのは当たり前じゃん、何言ってんの?』的な反応をされてルシウスは自分の前世の知識が間違ってるのではないかと混乱した。

 

「ふむ、お主の働き次第では褒美は思うがままだぞ。なんならわしを褒美にくれてやってもいいんだからね!」

 

 そう言って何やら自慢げに胸を張っている信長。血眼になって縄を引き裂こうとする三人組に、後ろでずっとスタンバイしていた女中らが素早い手刀を落とした。素早すぎて俺でも見逃しちゃうね。

 

「いや、ちょっとタイプじゃないので」

 

「は!?」

 

 お淑やかな大和撫子がタイプのルシウスは首を横に振る。ショックを受けている殿の後ろでは『殿バカ三人組とは違いそうだ』と地味に他家臣たちの評価が上がった。

 

「じゃあ何が欲しいんじゃ!わしより価値のあるものとかないと思うけどね!わしよりも!」

 

「有給休暇ください」

 

「はあ!?そんなんでいいの!?」

 

「もうここ数年働き詰めで休み方すら忘れてしまいました」

 

「あ、うん……なんかごめんね」

 

 座敷には異様なほどの重苦しい空気が流れていた。そしてなぜか涙する他家臣たちの間で評価がまた爆上がりである。もう家来になってぐだぐだ世界線の住人になればとアラヤは思ったが、やはり何人かルシウスの話を怪しむ家来たちがいた。

 

「ではこうしよう。聞けばお主は料理人でもあるそうではないか。一つわしのために珍しい料理でも作って貰おうか」

 

「料理?」

 

 どうやら織田◯奈の野望かと思えば、信長の◯ェフらしい。基本料理の発案が仕事のルシウスだが腕は確かであるし、前世の暮らしで舌は肥えている。作っている間に元の世界に帰れるかもしれないと思い厨房に立った。食材は金に糸目を付けずに選び放題。ルシウスは珍しく張り切った。しかし織田家中の者たちはこれから起こる惨劇を予想だにしなかっただろう。彼らは知るのだ、この時代の人間にとって美味い物がどれだけの劇物であるかを。

 

 一品目は魚のパイ包み焼き。米粉と卵を練った生地を薄く伸ばして被せ、竃できつね色に焼き上げた料理である。ニシンとカボチャは入って無いので好き嫌いなく食べられるよ。

 

「これまた珍妙な料理であるな」

 

「しかし芳しい匂いに食欲をそそられますなぁ」

 

「殿、ここは私が毒味を」

 

 申し出たのは殿バカ三人衆の一人ミッチー。切り分けられたパイを恐る恐る箸で一口食べる。全員が見守る中でミッチーはゆっくりと味わうように咀嚼した。すると突如目を見開いて立ち上がり、

 

「美味いぞおぉぉぉぉぉぉ!」

 

全身の穴という穴から光線を放射し、城と並ぶほど巨大化した。ミッチー!どうしてそんなに大きくなっちゃったんですかー!きっと真面目過ぎたんですよ。

 

「き、金柑んんん!どうしちゃったんじゃ!?」

 

「おのれ!やはり料理に毒を……毒なのかこれは!?」

 

「味の解説が終われば元に戻りますよ」

 

 突然の怪現象に織田家中の者たちは騒然となった。ルシウスは至って平常。だってローマでもこれがデフォなんだもん。まあ、ぐだぐだ世界線のためかいつもよりリアクションが派手だった。

 

「周りはパイ生地でさっくりと、中は米と魚の身でしっとりしている!パイ生地と下味のついた米が魚の旨味を逃していないのだな!バターなる牛の乳から取った油を吸った米だけでも美味だが、丁寧に練られた魚の身が舌の上でねっとりと解けていく!これは骨を気にせずにいくらでも頬張れるな!」

 

 ミッチーの無駄に上手い解説に皆動揺を忘れヨダレを垂らしながら聞き入った。信長も早く食べたくてそわそわしていたが、巨大化したミッチーの一口は大きく、丸々あった魚のパイ包み焼きを一瞬で平らげてしまう。正直打ち首にしてやろうかと思った。

 

 二品目は米粉パン。信長も貿易で堺に入って来るパオンを食したことがある。ポルトガル語でパンとされる物だ。堺のパオンは塩味の効いた硬い餅のような食べ物だった。

 

「で、では毒味は私から」

 

 毒味を申し出たのは殿バカ三人衆の一人サル。持ってみればまるで綿のようなふんわりとした弾力にサルは驚いた。これならアルプスの少女も大満足の柔らかさ。恐る恐る口にした瞬間、サルは言葉を発することなくただ沈黙する。

 

「……」

 

「サ、サル?」

 

 体を揺さぶられたサルは力なく側にあった石の上に腰を下ろし、まるで真っ白に燃え尽きたかのような表情を浮かべていた。それを見て家臣の一人が蒼褪めながら呟く。

 

「――し、死んでいる……!」

 

 ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。

 ぶっちゃけネタ抜きに本当にサルには脈がなかったのだ。

 

「ほわあああ!?サル!死ぬなサルううう!!」

 

「あまりの美味さに体が耐えられなかったみたいだな」

 

「そんなことってあるぅ!?」

 

 その後ルシウスの心臓マッサージにより何とかバイタルが安定したサル。無事意識を取り戻し臨死体験を語った。

 

「何故か私の代わりに金髪の信長さまに仕えた小僧が可愛い子とイチャイチャしておった。正直何を言っているのか私にも分からんが羨ましすぎる」

 

 どうやらあまりの美味さで魂が別の時空まで吹っ飛んでいたらしい。流石の信長もいくら美味しいとはいえ命が惜しいので米粉パンは封印となった。

 

「どうやら人によってリアクションには個人差があるようですね。ここは血縁的に最も近しい僕が毒味を!」

 

「え、まだ試食続けるの?正直怖すぎて喉を通る気がせんのじゃが」

 

 三品目はシュークリーム。この時代では砂糖は高級品だったが、流石は信長と言うべきか砂糖は使い放題であった。砂糖がふんだんに使われた品と聞いて皆唾を飲み込んだ。甘味が好きなカッツも甘き誘惑に誘われてシュークリームに齧り付いた。

 

「こ、これは!ふんわりとした生地の中にさらに柔らかなクリームの食感!濃厚な乳と卵の旨味!そして圧倒的な甘味が最早暴力であるかのようにガツンと脳を揺らす!うわーん、おいひぃーよー!こんなお菓子今まで食べたことない!」

 

「……普通のリアクションじゃな。な、ならわしも味見を…」

 

「お待ち下さい殿!心なしか弟君の息が上気し、頬を赤らめております!」

 

 そう、食べれば食べるほどにカッツの色気が増していく。今回とは関係はないが、一説によると昔は砂糖に媚薬効果があると信じられていたらしい。カッツは信長に似てある意味女に近しい体型なので、間接的にドスケベな信長を見ているようで背徳感がやばかった。

 

「甘過ぎて体が蕩けちゃうよぉ!」

 

 そして甘みで解かされるが如くカッツの衣服が消滅し真っ裸になった。一部の家臣が盛り上がる。他はドン引きだ。あとにはぴくぴくと痙攣するクリームだらけのカッツが飯顔ダブルピースしているという惨状だけが残る。

 

「てかなにわしにこんなもの食べさせようとしとるの?処す?処す?」

 

「女が美味しいものを食べればだいたいこんな反応になるのだ」

 

「これ弟なんじゃけど!?」

 

「男気よりも女々しさが勝ったのだろうな」

 

 何気にカッツの性別全否定である。

 その後、家臣たちはルシウスの料理に恐れをなして毒味役になる者は誰も出なかった。試食会はお開きとなり信長は腹を鳴らしながら項垂れる。そこへ何やら湯気の立った飲み物を持ってルシウスがやって来た。

 

「腹が減ったのだろう。これでも飲め」

 

「……これ飲んで大丈夫じゃろうな?」

 

「心配するな。本当はチョコレートでも作ろうかと考えたが、何分手間が掛かるのでココア擬きを淹れた」

 

 嗅いでみれば独特な芳しい匂いと砂糖と牛乳の香りがした。信長はその独特な匂いに覚えがあった。それは昔、父が貿易で持ち帰ったカカオ豆の粉末に似ている。信長にとっては始まりの豆だ。

 

 飲んでみれば仄かな豆の苦味とまろやかな甘みが良い塩梅に調和が取れていた。あれほど夢見た豆の味はどこか落ち着く物だ。

 ほう、と息を吐いた信長は家臣たちに聞こえないような声で呟いた。

 

「のう、るしうす。わしは正しいのだろうか?こんな島国で南蛮を真似るわしはやはりうつけであるか?」

 

 人知れず抱いていた恐怖の吐露。誰よりも新たな日本を夢見た少女は、その未来の行く末を誰よりも恐れている。

 

 今までおふざけムードだったルシウスも真顔になって答えた。

 

「そんなこと今を生きる者たちにとって分かるものではない。私だって明日のことすら見えぬよ」

 

「そうじゃろうなぁ」

 

「だが、あなたを信じ集まった臣下たちと歩む軌跡は決して猿真似でも嘘でもない真であろう」

 

「……それが破滅に結びついた道であってもか」

 

「魔王となれば普通の生き方など望むべきではない。ならば常に魔王らしく傲岸不遜に笑っていれば良いさ。その生きざまをこの国に刻み込めば良いさ。明日をも分からぬのなら、下らない結末を帳消しにするほどいまこの時を格好良く飾れ。その姿に後世のガキどもは惚れるんだ」

 

「ほう、明日すら分からぬお主には遥か遠くが見えると?」

 

「私は古代ローマ人で未来人だからな」

 

「はは!やっぱり面白いなお主!やはりわしの家臣に――」

 

 信長は笑いながら、まるで乾杯するように茶器を誰もいない虚空へと向けた。先程まで男が座っていた場所にはぽつんと茶器が置いてある。信長は夜更けになるまでその場所に座り、ちびりちびりと大事そうにココアを飲んだという。

 

 その後、景虎と違い信長の歴史は大して変わらなかった。第六天魔王と恐れられ、家族を殺し、そして家臣に裏切られ焼かれた。だか信長はどんな時でも悪の大王のように不敵に笑みを浮かべ、人々の記憶にその生きざまを鮮烈に刻み込んだ。

 

 後世の歴史家の間では帰蝶、蘭丸異人説などが流行るが、一番有力なのは信長は本能寺の変を逃れて何処かで生きていたのではないかと言う説だ。信長が異世界でドリフっているのか、古代ローマへ行き着いたかは未だに謎のままである。ただ信長の城にはたくさんのカカオが栽培されていたらしい。




活動報告にも上げましたが、県内全域の停電により作業環境が限られるため投稿頻度が落ちることを後理解ください。今回は停電前の原稿があったので早めに投稿出来ました。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。