元山賊にして海軍の四大将の一角、"緋熊"さんは最強の男じゃけェ……!
数隻の軍艦が海軍本部マリンフォードからシャボンディ諸島へと向かっていた。しかも驚くことに乗っているのは海軍大将の部隊。
青雉、赤犬、黄猿、緋熊。海軍の最高戦力たる彼ら大将は通常の任務を遂行することはなく、特別な任務にのみ動く。加えて、この数隻の軍艦に乗っている海兵は海軍最強の男、"緋熊"。今この軍艦に手を出した海賊は例え四皇であろうとも無傷では帰れないだろう。それほどの部隊がシャボンディ諸島へと向かっていた。
「確認するが、麦わらのルフィ、"キャプテン"キッド、"死の外科医"トラファルガー・ローだったか? 優先的に捕らえるのは」
「ああ、そうだぜ。緋熊さん」
緋熊の問いかけに部下のガスパーデが答えると、緋熊は少し溜息をついた。
「麦わらのルフィねェ……」
緋熊が溜息を吐くのにも理由がある。なぜなら、緋熊は麦わらのルフィと因縁がある。それも、麦わらのルフィが海賊ではない頃に、最弱と呼ばれる東の海で。
かつて緋熊は、ただの山賊だった。夢も持たず、たった800万ベリーの懸賞金で王のように振る舞い調子に乗っていたゴミのような人間だ。
しかし、フーシャ村という辺鄙な村で運命に出会った。"赤髪"と呼ばれる男だ。四皇の一角にして海の王。ルフィを助ける為にルフィを殺そうとしたヒグマに戦いを挑んできた"赤髪"。当時は海賊のことなど詳しくもなく、赤髪の男が四皇であり、海の皇帝であることなど知るよしもなかったために無謀な男だと思い迎え撃った。当たり前だが、ぼろぼろに負けた。
目を覚まされた気分だった。赤髪の圧倒的な強さに魅せられたのだ、ヒグマは。
ヒグマは即座に山賊団を解散し、強さを求めて修行の旅を始めた。赤髪が見せた巨大な海洋生物を追い払った謎の力を手に入れるための、より強くなるための修行。
結果、海軍の体術六式、剣術など様々な力を身につけて最終的には謎の力──覇気すらも手に入れた。
そう、麦わらのルフィと赤髪のシャンクスは緋熊の原点なのだ。しかも、天竜人は元山賊の緋熊から見てもゴミクズのような人間であり、彼らからの要請ということもあってやる気も出ない。
その為受ける気はなかったのだが、他の大将が手を離せないために緋熊にこの仕事が回ってきた。
だが仕事は仕事。近づいてきたシャボンディ諸島を見て、緋熊は気合を入れガスパーデに指示を出す。
「ガスパーデ、指揮はお前とマスターソンに任せる。おれは、先に行くぜ」
「了解したぜ、ダディの奴にも伝えておく」
緋熊は軍艦から飛び降り、凄まじい速度の月歩でシャボンディ諸島へと降り立つ。
「さぁて、こちら海軍大将"緋熊"。任務を開始するぜェ……!」
海軍最強の男による、蹂躙が始まる。