壮大な何かが今始まろうとしていた

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ミステリアスなあの作品に釣られて、昔のとあるスレを思い出した。反省はしない。


壮大な何かが始まった件について

 

 

 

「バカな……早すぎる」

 

 

教室のど真ん中で面と向かう相手には目もくれず、窓の外を見つめる男はそう呟いた。

 

周囲の者たちはいきなり何のことかと騒めき出す。中には耳の長い者から筋骨隆々だが体躯の小さい者、果ては竜の様な姿をした者までいる。

 

ここは日本。だが【本来の姿をした日本】ではなく、【多くの可能性に満ち溢れた日本】。

 

純粋なる人は希少種と扱われるこの世界。

対して、鋭く長い耳を持つ魔法に長けた種族【エルフ】。

体躯は小さいが、そこからは考えられない程の力を持つ種族【ドワーフ】。

強固な鱗を持ち、空を飛ぶ者から地を這う者まで、個体差の強く出やすい【竜種】

 

その他にもかつては【妖怪】と呼ばれた者から、実態の持たない【幽霊】など、多種族によって構成されるこの世界は、【本来の姿をした日本】からはかけ離れた世界となっている。

 

更に言えば、エルフを語る際に言った【魔法】や魔法では語れない体一つで超常現象を操る【超能力】、それらに分類されることの無い別の何かを用いて理を操る【異能】、それらに対抗すべく生み出された【化学】、どれを取ってもこの【日本】は常識では考えられない世界線を歩んでいる。

 

 

話を冒頭に戻そう。窓を外を見つめる男は、こんな世界でも珍しい【人間】。対面するは待ちきれないとばかりに勝負を挑もうとするエルフ。

 

ここはこの日本……いや世界的に見てもトップクラスの育成校。己の力を高め、同種族の為に、自らの夢へ歩む為に、はたまた何らかの思惑に則ってその目的を達成する為に……多くの想いを抱いてこの学園へと訪れるその中で、やはり格という物が存在する。

 

強ければ強いほどその格は上がり、何をするにせよ全てが有利に働くだろう。故に自らの格を上げる為に、ここでは日常の如く己の力を用いて決闘が行われる。

 

また、学園生活の中で自然と形成されていくのは組織。人脈を広げていくこともまた、未来に繋がるだろう。この決闘とは組織全体の格上げにも繋がるのである。

 

男と対面するエルフもまたその格上げの為に決闘を申し込んだ。ではこの男もまた格が上なのだろうか……否。

 

この男はこの学園において異分子。【人間】というだけで珍しいのだが、この男はそれだけでは終わらない。何処の組織にも属しておらず、決闘を一度も行った記録がない。成績が優秀かと問われればそんな事はなく、魔法は碌に扱えず、他者から見れば超能力や異能を持っている様には見えない。ならば化学的な技術をもっているのでは? ……いや、頭もまた凡才だ。種族的な優位さえも【人間】はむしろ下位に相当する。

 

そんな人間がなぜ、決闘を挑まれるのだろうか。いや、何故日常的に行われている決闘をするだけでここまで注目されるのか。

 

……そもそも決闘を一度も行った記録が無い事自体がおかしいのだ。どんな学生であろうともその格上げの為に決闘を挑まれる。最下位では全ての学生に舐められ、居場所がなく、未来もない。

 

そんな中この男は、一度も決闘をしたことが無い……いや、決闘が成立してないのだ。【偶然】にも入り用により教師に遮られ、【偶然】にも何らかの事件に巻き込まれ、【偶然】にも、対戦者自体が決闘ができない事態に陥るなど、数多の偶然が重なり決闘を今日この日まで行ってきて無いのだ。

 

普段の成績からなんの力を持っていないと推定されており、この男こそが【最下位】の格を持つ。

 

だがそんな事が有り得るか? いや、有り得ない。そこには必ず【何か】があるのだ。見ただけでは分からない、理解出来ない力が。故にこの男を全ての学生が、組織が、教師までもが注目しているのだ。

 

 

「おい! こっち向けよ!」

 

「やれやれ……『アイツラ』は待つ事を知らないのか……」

 

 

全く対面するエルフに視線を移さない男。エルフは既に限界だった理性が爆発し、手のひらに突風を生み出していた。一方でこの状況で余裕を持つ男に対して、周囲は観察しているが、それとは別に今回もまた決闘が中断されてしまう何かが起こってしまうのではないかと危惧していた。

 

 

「……こんのやろう!! ふざけやがってぇ! その顔ごと吹き飛ば」

 

 

そのエルフが攻撃の合図とばかりに言い放とうとした言葉を言い終える前にそれは起こった。

 

突然校庭に光の塊が飛来し大地へ激突すると共に、学園を大きすぎる揺れが襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

(え? え? 何? 何が起こったの!?)

 

内心焦りしか無かった。男……運幸 巡(うんこう めぐる)は外を見つめながらビビっていた。

 

実は俺って……前世の記憶を持っている。とは言っても覚えているかと言われれば、かすかにしか覚えていないが。

 

そりゃ今はこっちに住んでるわけだし? 別に凄かったとか、特殊だった訳じゃないからね。

 

俺の親つうか、育ててくれた人は頭おかしかったけど。なんだよ自称神様の親父って……俺は前世よろしく人なの。まぁこの世界なら神様くらい居てもおかしくないのかもしれないけど。

 

名前が運幸……うんこうだけどうんこってふざけんなって思ったし、絶対バカにしてるよな? それに昔負けた罰ゲームで5年間はカッコつけたというか……意味深なセリフしか吐けなくするって、まじぶんなぐっちゃったよ。

 

親父曰く、「この世界では小さな戦いでも人生を左右する、だから勝ち続けろ」なんて言って来やがったけど、そんなの知らねぇよ! 人だからってだけで、普通の学校生活送らせて貰えてねぇし、仲のいい友人は居ないし、前世の記憶があるからか、この世界の多種族や魔法とか……すっげぇテンション上がってたのに俺は人間で才能一つも無いのに勝ち続けろとかクソ喰らえだよ! ……後半は親父には関係ないか……

 

せっかく学校通えると思ったら、なんか世界的にすげーとこらしいし、そのせいで俺成績最下位なんですけど!? 意味深なセリフしか吐けないせいで、やばい奴を見る目でみてくるんですけど!? あー!! 親父ぶん殴らせろ! ……しかし冷静に考えて、こんな凄いとこにいきなり入れるものなのかと思う一方で親父が何者かわかんなくなる。

 

俺ってば実は何かしらすっごい力持ってたり!? ……なら最下位じゃないですね、はい……

 

てかそんなことはどうでもいい。今は目の前のことだ。なんか校庭に物凄い勢いで落ちて来て、地震みたいな揺れが俺達を襲った。

 

おいおい大丈夫かよ。今誰かに決闘を申し込もうとしてた……えっと……エルフの男の子! 大丈夫かな?

※本人は自分がまさか挑まれているとは露ほど思ってません。

 

……ん? なんか墜落して来たところから、なんか出てきたって、きんもー!! 何あの宇宙人!? やっべ、逃げなきゃ(迫真)

 

って、周りのみんなも悲鳴あげながらも、先生に従って避難しようとしてるし……あとは先生やかなり強い生徒会の人達がなんとかしてくれるか……俺もその後ろに付いて行こうとしたその時だった。

 

 

「運幸くん! ……良かった、居てくれたんだね。早く来て!」

 

 

…………なんでぇ?

まぁでも、可愛い可愛い美少女にして人で唯一の生徒会一員の子がうんこ! て呼ぶの、ちょっと興奮した。

 

 

 

 

 

 

 

全ての学生達が慌てふためく中、この学園の屋上で、見る者がいれば見とれていたであろう一対の銀色の羽を広げた少女が校庭を見つめている。

 

墜落してきた異物から突如出てきた怪物。手とも足とも言えない部位が数十に渡り存在し、尻尾や羽、角などの普通の生物ではあり得ないような……まるで数多の生物を混ぜ合わせて作られた怪物が周囲を襲っている。かなりの実力者であろう教師や、その教師さえも凌ぐと言われている生徒会メンバーでさえ劣勢に立たされている。

 

正直このまま行けば負けるであろうこの戦いへ、少女に連れられて1人の男が乱入しようとしていた。

 

それらを見つめていた少女は立ち上がり、自嘲気味に独り言を漏らす。

 

 

「決められていた事なんだよ・・・ずっと以前から。君は受け入れられるかな・・・?」

 

 

そう呟かれた独り言は誰の耳にも聞こえる事なく、少女が飛び立つ音と共に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……やはりデータ通りにはいきませんか……」

 

眼鏡をくいっとさせ、眼鏡ポジションを直す男。黒い羽を必死に羽ばたかせながら攻撃を回避している。生徒会会計の鏡 雅楽(かがみ かがく)

 

 

「予言にあったとされる未知な生物によって世界が壊れるというのは……『嘘』」

 

 

そう言いながら、怪物の攻撃を『搔き消した』のは銀髪ハーフボーイ。生徒会書記の虚・ヴァーチ(うつろ・ゔぁーち)

 

 

「今度こそ…返して貰う!」

 

 

決意を秘めた声で叫び、リロードを終えた2丁拳銃を両太股のホルスターから引き抜いて応戦する、ツインテールの少女。生徒会副会長の軟鋼 円(なんこう まどか)

 

 

「もう私には……縁のない話だと思ったんだがな」

 

 

最後に日本刀を構えて、怪物の部位を切り捨て続ける着物を着ている女。その額には大きな角が生え、気高く天を貫いている。その女こそ生徒会会長茨城 紅葉(いばらぎ もみじ)

 

一人を除いた生徒会役員が勢揃いし、目の前の怪物を相手にしていた。先生達もまた共に戦っているものの、時間が刻一刻と過ぎていくばかり。決定打がないどころか、このままでは全員がやられてしまうこの中で、誰もが集中力を切らさずに、逆転の一手を生み出そうとしている。

 

 

「会長や副会長達はあの怪物を知っているようですね! まぁそのデータは後にして、彼女はまだですか!?」

 

埋木(うもれぎ)はこの局面を脱出する為の重要人物を連れてきてもらってる! 」

 

「全く! あの子ったら遅いわね! あーもう、弾薬いくらあっても足りないじゃない!」

 

「……大丈夫、弾薬が無いなんて『嘘』……まだまだ戦えますよ、僕たちは」

 

「ありがとね! 虚!」

 

「……ッ!生徒会退避! 先生方も!」

 

紅葉より命令が出され、その直後全員が退避する。先生達もまた、敵の攻撃から学園を生徒達を守りながら攻撃をしつつ撤退。そして……

 

 

「……やっと来たか、埋木」

 

「はい! 彼を連れてきました!」

 

 

こんな状況なのにも笑顔を浮かべる……いや、こんな状況だったのにも関わらず誰一人として犠牲を出しておらず、間に合った事に笑顔を浮かべる少女、埋木 辿花(うもれぎ てんか)は、引っ張ってきたであろう彼を突き出した。

 

 

「ごめんなさい! 説明すら満足に出来なくて……でも、貴方なら! この状況を打開できると思って!」

 

「……ふぅ……」

 

「……運幸 巡……君だったか? 君が来た途端、あの怪物も攻撃の手を収めてこちらをじっと見つめてきている……隙がなく、作ろうと思っても数多の攻撃手段により無理に近い。切り落としても、撃ち抜いても、搔き消しても、溶かし呪っても再生して何事も無かったかのようにしている怪物だ」

 

 

紅葉は真っ直ぐと巡を見つめる……成る程、底しれない訳だ。目を見ても、暗く深い……こちらが吸い込まれてしまいそうになる程の黒い目をしている。

 

 

「……行けるか?」

 

 

確認のつもりで聞いた言葉だったが、余りにも自分が情けなく感じる。この学園の生徒会、会長を任されているのにも関わらず、守るべき生徒である彼。しかも能力不明、実力不明、【最下位】のレッテルを貼られたまさにジョーカーとも言える彼に任せる事になろうとは。

 

こんな局面を殆ど初対面で、実力すら知らない相手に託す事になるとは全く思ってもみなかったが、あの埋木がここまで言う相手なのだ。実際相手の攻撃は止み、あの怪物は先程までの無茶苦茶な攻めをやめて、最大限の警戒を彼にしている。

 

 

「……これは俺の仕事だ、あんたらはすっこんでろ」

 

「なぁっ!? アンタねぇ!」

 

「円! ……よろしく頼む」

 

「しょうがないな……一先ず、ケリをつけにいくか」

 

 

彼はゆっくりと、散歩をするかの如く怪物へと歩き出していた。そんな彼の背中を見ていると、埋木が話しかけてきた。

 

 

「……大丈夫ですよ、会長。彼、言動がきついところありますけど、すっごい優しいんですから」

 

「……そうか」

 

「では、早く治療に移りましょう! 彼を手伝えるかもしれませんし、みなさんを万全にしないといけません! 早く集まって下さい!」

 

 

そう言って生徒会や教師達は戦いを傍目に体を癒そうとした……が、そこで信じられないものを目撃する。

 

一言で言うならば、勝負が決した。

 

 

 

 

 

 

(あんな可愛い子から手を握られて、上目遣いで頼まれたら受けるしかねぇよな!? な! しかもこんな雑魚が生徒会の皆さんに対して偉そうな事言ってまじすいません! てか、ほんとすげぇよ。遠目から見てても、戦いの姿全く見えなかったわ……ってあれ? その人たちと戦ってた場所に俺行かされるんだよね? あのやばい姿の怪物と戦うんだよね? ……あれ? これ死ぬんだが?)

 

 

いやー! ほんと待って。可愛さにやられて請け負ったけどこれ死ぬよね!? あ゛ぁ゛〜一瞬前の俺を殴りてぇよぉぉおおお……いや、待てよ? これは前世の記憶を持った特別なな俺が能力に目覚めるフラグ? あの可愛い女の子もすっげぇ信頼してたし、俺実はすっげぇ強いんじゃね? いやー気付かないうちに能力に目覚めてたわぁ……って

 

 

その瞬間に、何もしていなかった怪物が体を圧縮したであろう鋭く、強靭な角を伸ばし突き出していた。

 

偶然にも歩いてるうちに、先程の生徒会メンバーの戦闘で出来たであろう段差に足をつまづいて無ければ、直撃して死んでいた。

 

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 

声にも出せない、悲鳴にすらならない、か細い空気が口からこぼれ落ちる。次はないだろう。しかし、残念ながら段差に足をつまづいている。あ、死んだわ。

 

そのまま転倒するも、悲しい人間の反射かな。思わず手を伸ばして何かに捕まろうとしてしまう……そう、怪物の伸ばし突き出してきた角だ。

 

もはや思考が出来ない。まさに走馬灯。俺今から死ぬんだ。さよなら、第二の人生。出来るなら可愛い女の子と結婚して、頭撫でたり撫でられたり、一緒にキッチンに立って料理したかった。

 

掴んだのも反射であれば離すことも反射。流石に怪物の角に捕まっている事なんて出来ず、すぐに手を離してしまった。その直後

 

 

圧倒的な光が目を焼く。余りの眩しさに目を瞑り、またその直後轟音が鳴り響いた。もう俺が何したんだよと、いい加減楽に死なせてくれよと考えつつも、新たな攻撃は来ない。

 

恐る恐る目を開けるとそこには。

 

一瞬にして体を貫かれ、細胞の一つ残らず焼き裂かれたかのような酷い匂いが醸し出していて、誰が見ても命など宿していない亡骸がそこにはあった。

 

 

 

「……バカな……呆気なさすぎる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

高台からその光景を見下ろす二人の影がある。一人はたばこ吹かしながら子供達の活躍をニヤついて眺めており、もう一人は首に掛けているロケットペンダントを大事そうに撫でていた。

 

 

「今更何も変わらない――全て、無意味だ」

 

 

最後の葉を吸いきり、吸い殻を捨てる。その男は両手を広げて高らかに笑う。

 

 

「思わぬ邪魔が入ったが、この調子でいけば俺の計画は完遂する……たかだか一つの学園が俺の攻撃を防いだに過ぎない」

 

 

そんな男をどうでも良いように、ひたすらロケットペンダントを眺めている男……そのロケットにキスをしながら、憂う表情で呟いた。

 

 

「……時は近い」

 

 

「なに、早すぎると言うことはない。我々は10年待ったのだ」

 

 

高らかな笑い声は途絶える事は無く、周囲に誰もいないその高台で、男達はただひたすらに自らの目的達成を夢見ていた。




続かない
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