お元気ですか?
わたしは今、南の島に来ています!
青い海がとっても素敵。
これで僚ちゃんが一緒でなけりゃ、
もう最高なんだけど!
仕事だなんて、ツイてないです。
それでは日本で会いましょう。
お土産たのしみにしてください。
*
「こらあ、キノ!
おれは助手の
「何? なんだ、これは! おれが一緒で悪かったな。ええ? ひとりに重い荷物持たせやがって。
――疲れた。
「ちょっと休む」
「だらしないの」
パラソルと椰子の木陰のデッキチェアに、おれは這い上がるようにして座った。政府観光局の男が、わざとらしく時計を見る。クライアントのお目付け役だ。額に一滴の汗もない。
「すみません、ちょっとよろしいでしょうか」
ステンレスのポットからキノが注いでくれたお茶を飲んでると、声がした。日本語だ。
珍しくない。世界には、日本人観光客があふれてる。うっかり機材など見られると、『シャッター押してください』なんて、自分のカメラを押し付けてくるやつもいる。カワイイ女のコでもなければお断りだ。
女の声だった。
「
「はい」
とおれは言って振り返った。そのとき、声が、記憶のものと重なった。
しまった。
「わたくし、ディナ・バリスと申します。きのうお電話で「あ、博物館の――」
おれは慌てて、彼女の言葉を
彼女は
「いや、あの――」
おれはお目付け役を見た。この暑いのに、日陰に入ろうともしないで、立ったままじっとおれを見ている。視線が合うと、また男は、おれに見せつけるようにして時間を気にする素振りをした。
おれはまた彼女を向く。
「すみません、ええと……」いま仕事中なんです、とは言えまい。「今、時間が取れないんです。もしできたら、話は後にしていただけないでしょうか。本当にすみません。お詫びします。もし、今夜でよろしければ――」
「わかりました。お仕事中にすみません」
アクセントはぎごちないが、おれのあやしげな敬語より、よほどしっかりとした口調。こんな日本的言葉遣いが、この国にいてどうして覚えられるんだろう。
「いつならお時間が空きますか?」
「そうですね――九時頃なら」
「わかりました」
場所を約束して彼女は去っていった。なんて名前だったかな。おれには思い出せなかった。昨夜も聞いたはずなのだが。
彼女の姿は、それでも忘れようがなかった。陽に灼けた肌。強い瞳。飾り気のない白いシャツ。襟の形がこの辺りの島に独特のものだ。背を伸ばして立つ姿は、この潮の香りの中で
おれはつまらない考えを払って、立ち上がる。
キノが言う。「誰? あの人」
「後で教えるよ。ほら、仕事を始めるぞ」おれは言った。「遊びに来てんじゃないんだからな」