大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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101 近世 第一次世界大戦 ユトランド沖海戦・セイロン島沖海戦

 

 

連合帝国陸軍が、シベリアの大地を西へ向かって進んでいる時、連合帝国海軍もまた、インド洋を西へ向かって進んでいた。

 

 日本海軍のインド洋展開は、シンガポール陥落前の1915年4月から始まっており、マレー半島のペナンや、スマトラ島のメダンが主な根拠地とであった。印度洋艦隊司令長官は加藤友三郎大将である。

 

 最初にインド洋に進出したのは、半魚人や人魚、河童などの水棲妖怪たちであり抱え魚雷や刺突機雷を用いた海中ゲリラ戦法で通商破壊を開始した。

その後、日本海軍の装甲巡洋艦や防護巡洋艦、軽巡洋艦、仮装巡洋艦などの巡洋艦艦隊が加わって通商破壊戦を開始した。これら巡洋艦隊を拠点とした天狗や唐傘、化鴉などの飛行妖怪たちも加わり、連合国への被害は甚大なものとなった。

 

ペナンから近いベンガル湾には水棲妖怪たちによる強襲上陸作戦が展開され一時は主だった港湾が制圧されるなどの被害を受け、イギリス軍の反撃が始まると水棲妖怪たちは海中に逃げ込んで躱した。この繰り返しが行われ英印軍ならびに駐留海軍を疲弊させた。

 

また、5月末に生起したユトランド沖海戦は戦局の転換点となった。

 

 イギリスはとドイツは双方ともに弩級、超弩級、準弩級戦艦や巡洋戦艦と言った戦艦約20隻を大艦隊(グランド・フリート)と大洋艦隊(ホーホゼーフロッテ)に集結させていた。

 

 英独艦隊の戦力は双方ともに総勢大小様々な艦を揃え100を超え、ほぼ互角に近づいており、高速の巡洋戦艦に至ってはドイツ海軍の方が有利だった。

大艦隊は日本海軍の増強を受けて、主力艦の一部をインド洋に送ってしまった。そのうえ、主力艦以外の戦力においても日本の通商破壊戦で、多数の軽巡、駆逐艦がインド洋に引き抜かれ、イギリス本国の大艦隊は弱体化していた。

 

 このためドイツ海軍は、今こそ艦隊決戦を挑む絶好機と考えられていた。

ここでイギリス海軍の撃滅できれば、北海の制海権を確保しイギリスを海上封鎖できる可能性があった。

 

新たにドイツ大洋艦隊司令となったラインハルト・シェア提督は、5月31日に全力出撃を命令した。

一方、イギリス大艦隊を率いるジョン・ジェリコー提督も総力を挙げて出撃。

 

ユトランド沖にてヨーロッパ至上最大の艦隊決戦が行われた。

 

ドイツ巡戦部隊は、イギリス巡戦部隊をおびき罠に嵌めたにも係わらず、主力艦隊到着までにこれを撃滅することができなかった。

 

また、日本の妖怪軍より西洋妖怪軍団の水棲妖怪(半魚人や人魚等)に抱え魚雷や刺突機雷の技術を提供していたが、ユトランド沖海戦では海上航空戦力として英国系及びメガロ・メセンブリアの魔法使いが哨戒にあたり西洋妖怪軍団の水棲妖怪を抑え無力化した。

 

結果、双方の主力はほぼ正面からぶつかることになり、主力艦隊同士による決戦を行う事となった。

 

この戦いでイギリス海軍は巡洋戦艦3隻を喪失、対するドイツ海軍は戦艦1隻、巡洋戦艦1隻を失っている。この他に両国ともに殆ど全ての船が何らかの損傷を負って、修理が必要な状態となった。

 

 損害という点ではほぼ互角の戦いだったが、無傷のロシア海軍とフランス艦隊が連合国陣営には残っており、北海の制海権を奪取するには至っていない。

 

 

 

日英のインド洋決戦となったセイロン島沖海戦は、7月7日に発生した。

根拠地のペナン、マダン、シンガポールを出撃した日本海軍印度洋艦隊は、洋上で

お化け鯨ら水棲妖怪たちと合流すると、さらに先発する上陸船団と合流して西進した。

 

 こうした日本海軍の大規模出撃は、当然、イギリス軍に察知されることになる。

 

 残地の諜報活動や無線傍受で日本海軍の出撃を察知したイギリス海軍インド洋艦隊も全力出撃して決戦の地へ向かった。英軍インド洋艦隊の指揮官は1915年1月のドッガーバンク海戦でドイツ海軍を蹴散らしたデイヴィッド・リチャード・ビーティー提督である。

 

天気は晴朗で視界は冴え渡り、波は穏やかで、理想的な海戦日和。両軍それぞれがお互いの艦隊を視認するに至った。

水上砲戦の定石どおり、お互いが相手の頭を抑えるため、高速の巡洋戦艦が突出し、最初に砲火を交わすことになった。

 

続いて、お化け鯨ら水棲妖怪が衝角突撃もかくやの突撃を敢行する。

イギリス海軍巡戦部隊を食い破らんとするお化け鯨に巡戦部隊の砲撃が集中する。

 

「御鯨様をお助けするのだ!砲撃ぃいい!!」

 

お化け鯨の作ったチャンスに日本海軍の巡戦部隊が動いた。

巡洋戦艦同士の水上砲撃戦は熾烈を極め、双方の砲弾が砲塔や艦橋を撃ち抜いて爆沈させた。

 

『キュオオオオオン!!』

 

砲撃をもろに受けたお化け鯨のあばら骨が折れ、悲鳴を上げる。

 

日英の巡洋戦艦部隊の多数が沈没し、他の巡洋艦、駆逐艦も無傷の艦は一隻もいないという惨状を晒すことになった。

 

セイロン沖海戦は引き分けに終わった。

戦いそのものの終わりには成らなかった。

 

 両国のインド洋艦隊は傷だらけの戦艦を修理のため後方に下げると残った戦力で戦争を継続する方法を模索することになった。

 

 一度の決戦で戦争の決着がつく時代はとうの昔に終わっていた。

 

 文明の発達による工業生産能力の拡大は短期間で戦力の拡充を可能としており、国家総力戦という全く新しい戦争形態が姿を現そうとしていた。

 そして、不敗神話を持つお化け鯨に傷をつけたと言う事実は海軍将校たちの中にも一抹の不安を覚える者たちが現れ始めた。この不安はすぐに表れることは無かったが、その予感は数十年後に的中することになった。

 

 

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