ザッザッザッザッザッザッ!
ザッザッザッザッザッザッ!
静粛に包まれた人間の里。
だが、それを破る軍靴の音が人里の門をくぐりの中を突き進んでいた。
外の軍隊の里進入の知らせによって稗田阿八は、着替えを済まし後、部屋の中で静かに座っていた。
「稗田阿八さんですね。陸軍の辻政信大尉であります。西国鎮台奉行隠神刑部狸様の要請で貴女をお連れするように命じられてきました。」
「そうですか。解りました・・・あまり手荒な真似は・・・。」
「ご安心ください。上官より、くれぐれも丁重にと命令されています。」
人里を制圧した天導派は、長老衆や稗田阿八を手中に収める。
住民たちは公会堂に集められた。
『本日2月26日、我々は幻想郷の自治権を一時剥奪し臨時的処置として軍政下に置くものとする!これは大樹野槌水御神様の意志によるものであり御神勅である!これに対する異議申し立ては一切認めない。』
そこで、陸軍士官によって文書が読み上げる声が聞こえてくる。
人里は完全に沈黙した。
大樹恩顧の者たち天導派による幻想郷進駐。
人里や騒霊洋館、妖怪の山、霧の湖、魔法の森は瞬く間に掌握された。
幻想郷進駐より2日、大樹野槌水御神の到着と同時に人里の天導派駐屯地にて八雲紫はその式八雲藍と共に武装を解除し大樹傘下に収まる旨を伝えた。
幻想郷からは妖怪の山で決起した天狗の若い衆や河童の一部などが大樹妖怪軍に組み込まれる形となり幻想郷の八雲紫の意に沿わない過激派を追い出す形になった。
大樹はかつて本能寺の変にて紫に助けられた借りがある。
故に後ろめたさは大きかった。
「大樹様・・・程の御方があの程度の世迷いごとに騙されるとはと思いましたが・・・わざと乗りましたか。」
「ぬらりひょんのやり口は解っています。尻尾を掴もうと思ったのですが・・・」
「失敗したのですね。」
大樹に対して紫は冷たい視線を向けた。
「お恥ずかしい限りです。」
その為、大樹は紫に対して謝罪し幻想郷の統治は一時的なものであると伝え、八雲紫にいずれ返還すると伝えた。
幻想郷が荒廃したりするようなこともなく、大規模戦闘が発生したりするような目立った被害は無かった事と大樹と八雲紫は私的には友人関係にあったこともあり、比較的穏便な解決が図られたのであった。
「思ったより大事にならなかったようじゃが?ぬらりひょん?」
邪骨婆に尋ねられたぬらりひょんは悔しがったりするような素振りは一切なく、落ち着いた様子で邪骨婆の問いに答える。
「あの二人なら、多少揺さぶっても大した混乱は起こせない事は想定の範囲内です。あの二人に挑むなら長期戦を覚悟せねばなりません。邪骨。」
「ほぅ・・・何か考えがあるようじゃな。」
「もちろんです。皇国と幻想郷の上はしっかり繋がっていますが・・・下はそうでもないと言う事ですよ。」
内へ内へと籠っていく幻想郷と外へ外へと向かおうとしている皇国。目指すところが違う2つの勢力は今は安定しているが、いずれその蜜月は崩れ去るだろう。その過程に矛を交えるか否かは別としてこの二つの決別は確定路線であった。
軍部急進派や右翼団体を中心にその勢力を拡大する天導派は、その性質上海外との関係もあまり良好とは言えず。アメリカ合衆国やイギリス・フランスと戦火を交えることは明白であった。幻想郷が次なる大戦に付き合いたくないと言うのは本音であり、八雲紫が皇国と幻想郷の接続点を減らしているのは偽りない事実であった。
大樹が幻想郷から兵を引こうとした際も鎮台奉行や軍部高官から反対意見が出たが、最初からの約定通りであり八雲に非は無いと反対意見を封殺した。
また、大樹は知古の一人でもある風見幽香に参戦を促したが断られてしまう。
しかし、その代わりとして風見幽香より戦争に協力してくれそうな二人の悪魔を紹介される。
「以下の内容で、条約を締結させて頂きます。」
「えぇ、構わないわ。悪魔は約束は守るのよ。ねぇ夢月?」
「はい、姉さん。」
幻月夢月姉妹である。彼女たちは風見幽香の別宅がある夢幻世界の創造主であるとされ、魔界の神である神綺には及ばないとしても、それに次ぐ実力者であることは間違いなかった。
彼女たちとの交渉にあたったのは関東鎮台のぐわごぜであった。ぐわごぜは幻夢姉妹が自分より遥かに格上であることを理解し、基本的に彼女たちの好きにやらせることを認める約定を結び戦争に協力させることとした。この行為は悪魔とも結んだとして魔法世界のメセンブリーナ連合を警戒させた。