大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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外伝 岡崎教授講義

 

 

 

「はい、では今日の講義を始めます」

 

教壇に本講義の講師である髪から服まで紅いどこぞの彗星のオマージュかと言いたくなる様な岡崎夢美教授が立ち、その横でティーチングアシスタントの北白川ちゆりがプロジェクターの準備を始める。

 

講義が始まり先週のおさらいを始めてから今日の内容へ進む。

 

「え~、先週は大樹征西や神武東征などの『大樹記』の代表的なエピソードを幾つか現代語訳してもらいました。この『大樹記』は我が日本国において非常に貴重な歴史的、文化的資料であり、君達も名前だけは知っているだろう『古事記』や『日本書紀』に比するものなんです。」

 

オカルト知識を織り交ぜつつ講義をする彼女の授業は面白いと評判で人気が高い。

夢美の専門は比較物理学なのだが、本職の講義より戯れで始めたこの講義の方が人気なのは夢美としては嬉しくない。

 

「え~、大樹記は土着神を中心にした説話集です。土着神としては日本で最も有名な土着神様ですね。大樹野槌水御神・帝汰阿爾亜(ティターニア)、大樹野槌水御神や大樹様と言う呼び名がメジャーです。」

 

プロジェクターに絵が映る。ちゆりが早く本題に映る様に手振りで促す。夢美は手を軽く振って返す。

 

「彼女の出生は古く古事記や日本書紀にも登場します。土着神というは、簡単に言えばその土地に昔からいる神様だと思ってください。有名所だと、長野の諏訪大社なんかは御左口ミシャグジ様と呼ばれる土着信仰がありますが……っと話がズレましたね。っと、そういえば、神様についてですが、実在したのではないかと言われています。あら、別に宗教の勧誘だとかじゃありません、そんな風に引かなくてもいいじゃない。」

 

彼女が軽く咳払いをしてから、話を続ける。

 

「古事記、日本書紀などにも神様が沢山でてきますが、これら日本神話の神様はその土地を支配していた豪族であると考えられています。つまり、日本神話は大和政権を築くに至った征伐の記録でもあるのです。ですが、大樹野槌水御神に関する資料は信長公記にも記されています。それどころか幕府の公式記録にもその名前が確認できるそうです。一説には第二次世界大戦の政府資料にも記載があり、今もどこかに生きているなんて都市伝説もありますね。少しずれてしまいましたが彼女は日本書紀や古事記に書かれた豊玉姫の神産みに立ち合い鸕鶿草葺不合尊の養母となりました。また、豊玉姫の妹の玉依姫は鸕鶿草葺不合尊と契り初代天皇の神武天皇を産みました。彼女は神武天皇の養母にもなりました。以降歴代天皇の養母となり、歴史上唯一の日本の摂政となりました。以降は朝廷、鎌倉幕府、安土桃山幕府と歴代の天下人の横にいました。大樹野槌水御神は世襲制なのではと言われていますね。」

 

「少し話を戻しますね。大樹野槌水御神は天津神々と誼を結んでいます。その中には秋比売がいまして彼女らは豊穣の神で、大樹野槌水御神は豊饒の神です。豊の神々によって日本は近世まで飢饉知らずでした。そう言えば、近世では軍部や政府が挙国一致したさいにその旗印に大樹野槌水御神を奉じていました。近世までの大樹野槌水御神の力が時の政権にまで至っていたのです。平成令和時代にも大樹野槌水御神を旗印にしたクーデター計画があったなんて…おっと、あぁ、今日はもう時間がないか……。今日はここまでにしておきますが、次回からよく大河ドラマでも題材にされる信長公紀の内容に触れていきたいと思います。」

 

 

「興味がある人は研究室まで来てください。好きなだけ語ってあげます。それでは、本日の講義はここまで。」

 

 

 

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