大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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113 近代 次なる大戦へ 諸勢力の衰退

軍事外交においては1931年に関東軍の独断による柳条湖事件を契機に満州事変が勃発し、1933年には国際連盟及び国際労働機関を脱退し、翌年にはワシントン海軍軍縮条約を脱退。司法省は、ナチス・ドイツ関連の論文を発行し始めた。 満州事変後、中国と日本とは一旦は停戦協定を結ぶものの、1937年に盧溝橋事件が発生し日中戦争が勃発した。米英は日本の行動に反発し、軍国主義の台頭する日本は次第にナチス・ドイツへの接近を強めていった。

 

ナチス・ドイツへの接近に関しては大樹はかなり迷っていたようであり、これは西洋妖怪軍団の動向を気にしていた事が挙げられた。

 

 

第一次世界大戦後、ドイツやオーストリアでは、多くの人々が職業を失い生計を立てるために移民としてアメリカに移住した。

西洋妖怪軍団も移民の流れに乗り組織を二分する規模で欧州からアメリカに移住する者たちが増えたアメリカは連合国ではあったが、建国から歴史が浅く渾沌としており裏の勢力がひしめていた。そう言った情勢を組みし易しとベアードは判断していたようである。

 

西洋妖怪軍団は第一次世界大戦後急速にその支配領域を失って行った。ベアードは新天地としてアメリカ合衆国への拠点の移転を画策するも世界恐慌によってこの計画は中途半端な結果に終わる。アメリカ合衆国と欧州に点々と分布する勢力として現代まで存在しているが一つの拠点でしっかりと指示を出すようなことは出来ず。ベアード率いる幹部陣も各拠点を転々としていた。

平成令和の世には勢力として確固たる存在になるが、この時期の西洋妖怪軍団は正に衰退期であった。

 

大樹はベアードに協力要請を出したが、一応協力要請を受諾すると回答したがこれと言って具体的に何かをすると言う事はほぼなかった。軍団所属の個人が個人の意思でゲリラ的戦闘をするに留まった。

 

第一次世界大戦の実質的敗北は西洋の妖怪勢力を急激に減衰させた。

この時点でベアードが失脚しなかったのは、大戦前にベアードの築いた勢力はベアードの力に膝を付き手綱を掴みきっていた事。大樹との伝手を持つベアードのみが北米諸藩を通じてアメリカの西洋妖怪軍団勢力の維持支援をすることができるからであった。

 

「ベアード様、ドイツの再支配は一応の目途が立ちました。」

「帝国時代の二番煎じだな。」

 

ドラキュラ公の言葉に冷めた声で答えるベアードであるがドラキュラ公の方も大して期待はしていないようであった。

 

「えぇ、二番煎じです。ですが、容易く操れるのですから操っておいた方がいい。親族のスカーレット候に任せています。」

「それでよい。アドルフ・ヒトラーと言ったか。あの男程度では演者として役不足だ。ドイツ皇帝の方が従順な分、役に立った。」

「あれは自己顕示欲が強すぎますな。スカーレット候にも適当にやってよいと言ってきましょうか。」

「それでかまわん。」

 

 

ベアードはこの時、自身の勢力の維持に全力を注いでおり他に手を回す余裕が無かったのであった。

 

「合衆国の勢力はいかがですか?」

「良いとは言えぬが・・・、地盤は確保できている。北米諸藩と合衆国の小競り合いやその他不穏分子の存在で付け入る隙は大きい。時間はかかるが十分だ。」

「では軍団主力は合衆国へ渡らせた方が良いですかな。」

「うむ。」

 

ドラキュラ公はベアードに確認するように尋ねる。

 

「では、大樹様への援助はいかがしますか?」

「妖精難民をそのまま送るしかないだろう。17世紀から続く姻戚同盟の相手と言えど我が軍団が滅んでしまっては元も子もない。」

 

この選択が運命の分かれ目とも言われており、かの勢力が今次大戦への介入に消極的であり新勢力圏の構築に腐心したことは後の世に大きく影響を与えたが、それはまた別の機会に語るとしよう。

 

諸外国の同盟妖怪勢力としては冬将軍レティ・ホワイトロックがいた。彼女も大樹寄りの考えを持ってはいたが対ソ戦を意識した戦線形勢を主軸にしており大樹の太平洋戦域における戦いに関与する余裕は無かった。そもそも、ロシア帝国の国力はソ連に比べて大きく劣っておりロシア帝国軍はレティ・ホワイトロックの妖怪軍と皇国本土より派遣されている北国鎮台軍に依るところが大きかった。

 

他に残る妖怪勢力は中国妖怪と南洋妖怪であるが、中国妖怪は現在の中国における軍閥の大分裂同様に妖怪戦国時代であり、基本的には反日的であり親日(傀儡)勢力の霍青娥の勢力は台湾島に限っている。さらに西洋諸国の植民地を拠点とした妖怪狩りの魔法戦士たちを加えて大混乱中だ。

もうひとつの妖怪勢力である南洋妖怪は弘安の役から続く親密な友好関係にあるが彼らの土着の神でもあるお化け鯨が先の戦いの傷が響いて生死の境にいることもあり、南洋妖怪たちは地元を離れることを警戒しており、皇国の攻勢計画には消極的だ。彼らは郷土防衛にのみ注力し始めていた。

 

大樹は敵対勢力に対して再戦を行うために残存戦力の結集と再編を急いでいた。しかし、彼女の直轄である鎮台軍や御料兵以外の戦力の動きは鈍かった。

 

 

 

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