大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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118 近代 第二次世界大戦 侍達の最期

1942年5月下旬、アメリカ合衆国軍及びカナダ軍は北米諸藩に対する本格攻勢(作戦名:タイクーンダウン)を開始。多くの先住民と北米の妖怪妖精を抱える北米諸藩と言えど主体となる人間の軍隊の装備は国体同様に旧態依然とした藩諸侯では、第一次大戦後の世界恐慌などの中で生き残ることは出来ても大日本皇国の様な軍制改革や兵器の更新は出来なかった。北米諸藩の軍備は第一次世界大戦で止まっていた。

 

6月には先住民が一斉決起し、アメリカ合衆国と交戦状態に入る。

7月、合衆国政府はタイクーンダウンの早期終了を計り例外的措置として州軍の動員を決断。

州軍を加えた合衆国軍は8月中旬には新墨藩、頃蘭土藩、文棚藩が陥落。藩主前田利幸、前田利安、羽柴秀亮は自害。徴兵によって民兵の混在していた藩兵の多くは加州藩などの富士山脈(ロッキー山脈)周辺の諸藩まで撤退し抗戦を継続した。

 

7月下旬には新墨藩、頃蘭土藩、文棚藩陥落を受けたバック・ベアードが北米大陸の西洋妖怪軍団を北米諸藩に集結させ北米諸藩の妖精妖怪たちを組み込み統一戦線を形成し、連合国軍を食い止めることに成功した。

 

8月、北米西海岸カルフォルニア沖の戦いにて旧式艦主体の諸藩海軍を粉砕したアメリカ海軍は加州藩に上陸。アメリカ合衆国とカナダに包囲された北米諸藩の命運は尽きようとしていた。

 

11月から翌年の1943年2月にかけて加州、有砂藩、尼吐汰藩、湯田藩、間保藩、折金藩が陥落。連合国は新越後藩、新仙台藩、新会津藩、新庄内藩攻略に動き出した。

この時点でバックベアードは配下の西洋妖怪軍団とそれに続く妖怪妖精達は自らの敗北を予感し始めた。

この安土大阪時代から続く武士たちは城を枕に玉砕する事決めた。

この時、北米諸藩同盟軍の盟主である新会津藩藩主織田長孝はバックベアードたちが臨席する軍議の場で以下のように発言した。

 

「誠に口惜しい事ではあるが、我らの敗北の定めは覆らないこと。ここにいる諸侯らは完全に理解した。ここに至っては、我らが信奉する大樹野槌水御神様の血を引くさとり様、こいし様の身の安全を確保するためにベアード殿には諸侯の地を離れていただく。他に去りたいものあらば去るが良い咎めはせぬぞ。」

 

長孝の言葉に返したのは新庄内藩藩主の蒲生氏時である。

 

「皆、覚悟の上のこと。むしろ、この様な大戦に望める事こそ本望!」

「諸藩士卒の総意は米帝クソ喰らえです!」

 

 

 

1943年4月3日、北米諸藩最期の戦いの火ぶたが落とされた。

 

アメリカ合衆国の前線部隊が北米諸藩の残る4藩に侵攻開始。

 

「者ども!侍の誇りを胸にいざ参らん!!」

「「「応!!」」」「「「いざ!」」」

 

臨時徴兵が行われた末期の状態であり軍服が用意しきれず、城の蔵から古の鎧や胴丸が持ち出され、武器も安土大阪期の火縄銃から中折れ銃まで多種多様だった。

 

かつて、大日本合藩連合帝国の構成国として旺盛を極めた北米諸藩も歴史の流れに取り残され歴史の荒波に飲み込まれようとしていた。

 

北米諸藩は、急速に近代化した本国とは違い近代化は緩やかで列強国と比べると劣ったものであった。本国では形骸化した武士の魂や滅私奉公の精神が脈々と受け継がれており、彼らの気高い精神は連合国への意地、大樹への信仰心、北米と言う故郷への想いやそこに住んでいた先住民たちへの仲間意識と言った様々なものが複雑に絡み合い。北米諸藩に最後の咆哮を上げさせた。

 

北米諸藩4藩は北米諸藩の残骸を空き集めて最後の抵抗を行った。

 

「突撃!!」「「「うぉおおおおお!!!」」」

 

騎兵銃を乱射しながら連合国軍の陣地に食い破ろうとする新仙台藩の伊達鉄砲騎馬隊の名残を残す騎馬武者軍団と先住民の騎馬隊。

彼らは最後の一騎になるまで戦い続けた。

 

侍の死に花を咲かせようと士卒の中には戦国時代もかくやと言わんばかりの旗指物を刺した者たちもいた。毘沙門天の旗指物は新越後藩の士卒たちだろうか。

 

「せい!切り込め!!」「「「やぁあああ!!」」」

髷を結った士族の兵士がアメリカ軍の塹壕に切り込むみ、銃剣を付けた兵士達や鎧を付けた老武者が続いた。

 

「いっけぇええええ!!」「「「わぁあああああ!!」」」

人間たちに紛れて郷土を離れることを拒否した妖怪や妖精達も激しく抵抗していた。

 

新会津藩では最期の一兵に至るまで戦い抜いて、本拠の朱鷺岡城を枕に皆討ち死にした。

 

 

 

 

北米を離れるベアードは滅びゆく彼らを見ていた。

 

「ベアード閣下。」

 

ドラキュラ公が見たベアードの瞳には燃え上がる城下町が写っていた。

 

「ドラキュラ公。大日本合藩連合国は我ら妖怪と、共存を望む人間たちにとって完成された国家であった。彼らは共に歩むに相応しい善良な者たちであった。・・・だが、彼らは死んだ。世界の過半の人間たちは邪な人間であり、彼らが世界を欲しいままにするならば・・・。大樹様は甘すぎる・・・ならば、私も我が娘たちに、妖怪の未来の為の世界を作らねばならん。」

 

「ベアード様の思うようにされるが良いかと。軍団の妖怪たちはベアード様に従いましょう。」

 

この日、西洋妖怪軍団は大樹と袂を分かち妖怪の為の世界を作り上げるための戦いを開始したのだった。

 

 

 

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