大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

123 / 227
122 連合国占領下 戦後へ

大樹の蟠桃幽閉後の日本は表面上は大きな混乱なく想像より平穏だった。

これまで君臨していた天皇が完全に象徴になり、教科書の黒塗りや伝統文化の排斥に基づく書籍の焚書、文学作品に日本神話について記述したものは検閲により削除された。これらの事が些末な事と考えるなら正に平和だっただろう。

 

日本から連合国への敵対心をなくし、特に親英米的な国に作り替える方針の下、アメリカ軍占領区域では占領軍として進駐していたアメリカに対して好感を持つような世論誘導が行われ、その一例としてアメリカ軍の兵士が、ガムやチョコレートを食糧難に喘ぐ子供たちに与えることにより、「無辜の民を殺戮した」残虐な日本軍と、「食べ物を恵んでくれた寛大なアメリカ軍」という図式を作り、親米感情の醸成を試みた。飢餓の原因を作ったのがその連合国なのは無知な子供には理解しえぬことだろう。

そうやって親欧米化された結果が平成令和の日本なのだから、この懐柔策は大成功と言えよう。

また、大樹大社を貶める情報操作も行われた。しかしながら、これに関してはあまり結果を出すことは無かった。天照大御神に並ぶ日本の代表的な神である大樹野槌水御神の権威は絶大であったし、天皇家・源氏・鎌倉北条家・織田家と日本史に必ず記載される英雄の血筋の家々の抵抗もあり、書籍からの検閲削除や焚書などで影響力を低下させるに留まった。

 

人間たちはこれに対して抵抗も敵愾心も燃やしていなかったが、それを息をひそめて見ていた妖怪や妖精の一部はその胸中に沸々と黒い炎を灯らせ。大樹恩顧と目され勢力を維持するたんたん坊や反人類のぬらりひょんに合流する者たちも現れ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

5月、GHQによる占領政策の一環として関東大樹大社の解体が決定される。

関東大樹大社を管轄していた旧関東鎮台は解体され、最後に残っていたぐわごぜは自分の娘を連れて挨拶に来てた。

 

「大樹様、御世話になりました。」

 

「ぐわごぜ、今までの忠勤ご苦労です。」

 

「最期までお付き合いできず…。」

「いえ、いいのです。貴方にはこの子がいるのでしょう。」

 

大樹は愛おしいそうに目を細めてぐわごぜの服の裾を掴んでいる幼子の頭に手をおいて撫でる。

 

「カロリーヌといいます。」

「そうですか?母親は?」

 

「西洋妖怪です。ですが、あいつはこの子を産んだ時に・・・。」

 

辛そうに答えるぐわごぜに大樹は気を遣って、ぐわごぜの娘に簡易なものであるが祝福を与えた。

 

「…貴方は貴方の大切なものを守りなさい。・・・この子の未来に幸多からんことを。」

 

ぐわごぜとカロリーヌは頭を下げてから静かに退出した。

 

 

大社の神紋の描かれた旗布を御料兵に渡し、御料兵達が去ると大樹は箒を持って境内を掃き清め始めるのであった。

 

しばらく、すると背広を着た役人と数人の魔法使いと米兵がやって来る。

 

「大樹様・・・。」

「はい…そろそろ行きましょうか。」

 

日本人役人の声は震えて、喉をつかえさせたかのように黙ってしまう。

大樹は役人に気を使って、自分から行こうと答えた。

 

新緑の季節、山や森の緑がみずみずしく感じられる一方で焼け野原となった家々が対照的な景色を目に焼き付けながら大樹は蟠桃の内に封ざれるのであった。

 

 

その翌日、GHQのブルドーザーやショベルカーが関東大樹大社に神殿の解体を始めた。

多くの人間や妖怪の崇拝を集めた大樹野槌水御神の権威の失墜を思い知らさせるものであった。大樹大社跡は現在進行中の学園都市計画用地に含まれる事となった。

 

 

国内の妖怪勢力はぬらりひょんやたんたん坊の様な過激派もそれ以外の穏健派も大きな行動は平成令和に至るまで起こしていない。国内において纏まった兵力を持っていた白蔵主の中央鎮台及び畿内の旧大樹勢力圏の崩壊が他の諸派閥を警戒させたのだ。

 

 

この時期に行動を起こしたのは大樹妖怪軍残党最大勢力である隠神刑部狸率いる集団であった。

 

この残党最大勢力のこの勢力は終戦直後より行動を開始していた。

畿内の変事の裏で旧西国鎮台軍や御料兵団、航空銃翼兵団、河童や山童たちの多くを首魁隠神刑部によって再統合されたこの組織力はそこが知れず。1946年8月復員船の任を解かれた軽空母鳳翔が解体のために日立造船築港工場へ向かう途中で失踪。12月30日、戦時賠償艦として中華民国へと引き渡される第一陣を残党軍の艦隊(終戦後日本に戻らず洋上で引き渡されたりした艦や民間船を武装した艦などで構成される。)が襲撃し、これらを強奪すると言う事件が発生。強奪された艦は駆逐艦雪風を筆頭に駆逐艦3隻、海防艦4隻である。ソ連に行き渡される予定だった戦時賠償艦の一部も強奪の被害に遭っており駆逐艦響を筆頭に駆逐艦2隻、海防艦3隻、輸送艦1隻とされる。

 

また、紀伊は桜花搭載艦として空母回収される案もあり紀伊強奪の際に多くの桜花も持ち去られた。また、呉軍港に係留されていた蛟龍潜水艦も数隻消息を絶ったとされ未確認だが陸軍の兵器も失踪している。

 

この時点でこの残党勢力へ旧日本軍陸海軍からかなりの武装が横流され、もしくは意図的に強奪させるなどの行為があったとされる。

 

 

 

 

 

ジャワ島中部南岸で戦艦紀伊とともに姿を見せた。この事から戦後日本軍の中では天道派が未だに息をひそめているのではと噂されてた。また終戦直後には未確認だが各地の大樹大社から長年溜め込まれて財貨は世間へ炊き出しやら各種援助の形で放出されたのだが、そのうちの何割かが隠神刑部狸率いる集団に引き渡されたと言われている。この運び出しの指揮をとっていた妖精御料兵団が失踪し、後に隠神刑部狸率いる集団に合流している。

 

 

1948年12月、ジャワ島中部南岸に戦艦紀伊を中心とした軍艦数隻と共に出現しジョクジャカルタのマグオ空港を爆撃しようとしていた爆撃隊を撃墜し、地上から侵攻しようとしていた、オランダ海兵隊と蘭印軍を砲撃した。

 

インドネシア独立戦争中に起こったオランダ軍主力壊滅はオランダ軍に外交的敗北と軍事的敗北を与え、インドネシア独立を早める結果となった。

 

その後も第一次インドシナ戦争中のフランス軍を攻撃し、存在感を見せつけた。

圧倒的な損害を強いた上に妖怪由来の妖術で霧のように消えて所在を掴ませない彼らを欧米諸国は『インペリアル・タイジュ』と呼んで恐れた。

 

 

インペリアル・タイジュは南洋妖怪勢力と協力関係にあり、インペリアル・タイジュの隠れ家を提供していた。また、南洋諸国は独立戦争に勝利したこともあり南洋妖怪への国からの忖度もあったようである。

 

 

第二次インドシナ戦争やラオス内戦などは共産勢力を隠れ蓑にした中国の大妖怪チーとアメリカ軍他勢力の争いの側面が強かったし、その後のカンボジア・ベトナム戦争やカンボジア内戦では王党派に南洋妖怪やインペリアル・タイジュの支援があった。中越戦争を含む所戦争では南洋妖怪とインペリアル・タイジュは終始協力関係にあった。

 

 

先の大戦をきっかけに歴史は大きく動き出す。

 

次なる戦いのための終戦。

 

破壊のための建設。

 

この一時の平和も、また新たなる混沌への休息でしかなかった。

歴史の果てから続く、この愚かな行為は人類が存在し続ける限り続くのだろうか。

 

この世界を照らすのは人々の希望ではなく、戦いの炎なのだろうか。

一体何がこの暗闇に包まれた世界に光明を齎すのだろうか。

1951年9月8日、日本政府は「サンフランシスコ講和条約」に調印し、日本は正式に国家としての全権を回復した。

しかし、人々の平和への願いとは裏腹に戦いは予期せぬ第二幕を迎える。

 

 




次回よりしばらくの間、メイン原作をゲゲゲの鬼太郎にします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。