大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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14 神武東征八ヶ岳の戦い

大樹の国の軍勢は大和朝廷に遣わされたもの達と、蝦夷への牽制に北部に遣わされたもの達、そして諏訪攻めに加わった大樹野椎水御神の本隊がある。

大樹記に載っている一連の戦いで最も激しかった戦いと言えば、八ヶ岳の戦いを上げる人が多い。

 

 

八坂刀売神は木曽川沿いに洩矢の国へ進軍を開始。

大樹野椎水御神は茅ヶ岳に布陣し八ヶ岳の洩矢諏訪ノ神の軍勢と対峙した。

 

妖精の数を頼りに攻め立てたが、鉄を武器とするミシャグジの軍勢は大樹の軍勢を容易くし返す。

大樹の国の主たる武器は青銅。さらに参集した妖精たちの武器はさらに雑多な竹や硬木、打ち合えば折られ力の差は歴然であった。

 

ミシャグジに追い立てられた大樹の国の軍勢は散り散りに追い立てられて行く。

 

「大樹様!お下がりください!!」

 

サニー達の言葉を無視して、私は一歩前へと歩み出る。

バトンを握り、大きく振り上げた。

 

私の求めに応じて樹木草木が寄り集まり、一つの姿に纏まっていく。

 

巨大な無数の根が蛇のようにしなり、ある物は鋭い牙の生えた口を持った姿に変えていく。

寄り集まった樹木は幹が青く若々しい、一本一本が太い若幹が寄り集まりさらに一本へと纏まろうとして折り重なり天高く伸びていく。

 

私の思いに応えた木々らは一つ姿に具現する。

幹の頂上に咲く巨大な赤い花。

 

『守護華獣 碧奧蘭蒂(びおらんて)』

 

あまりの巨大な姿にミシャグジたちは足を止め呆けていた。

 

やれ…。

 

巨大な根が降り降ろされた。

ミシャグジたちは圧倒的な巨体に為すすべなく、今度は彼らが散り散りにされる番であった。

巨大な根と蔓が振り下ろされ、地をうねる。牙を生やした蔓に噛みつかれて砕かれる。

 

 

 

諏訪湖に座す洩矢諏訪ノ神からも八ヶ岳を削り崩れんばかりの土煙と言う形で見えたと言う。

 

※余談であるが、昔話の富士山と八ヶ岳の背くらべにおいて背比べに負けた八ヶ岳の男神が大樹の女神に「昔お前が暴れなければ・・・。」と文句を言うシーンがあり、この諏訪大戦における八ヶ岳の戦いの事を指していると言われている。

 

 

八ヶ岳のミシャグジたちを蹴散らした私は、手勢を率いてすでに諏訪子と戦っているであろう八坂刀売神の下へ軍勢を進めたのです。

 

 

 

 

SIDE 大和朝廷

 

一方の八坂刀売神は木曽谷の戦いにおいて、諏訪子の腹心であるミシャグジ手長足長を討ち取り、さらに奥へと軍をすすめ奈良井川を挟み再び対陣した。

 

「大樹様の軍勢、八ヶ岳で諏訪勢を破り茅野へ進軍する構えを見せております。」

 

一見有利に進んでいる戦いも、梅雨になり暴れ狂う川と様々な形で大和の軍を蝕んでいくであろうミシャクジ神の祟り、時間をかければかける程不利になる戦況。諏訪の民という存在。

そんな中で唯一にして最大の朗報。

 

 

 

彼我の戦力差、時季天候、諸々考慮した結果、八坂刀売神が下した決断は。

 

「大樹様の陣へ・・・短期で決着させる旨を伝えよ。大樹様は南より茅野へ攻め上がり諏訪勢の動きを抑える様お伝えせよ。」

 

短期決戦を決めた。

 

翌日、八坂刀売神の軍勢は大軍を擁して渡河を行い諏訪勢の山麓に点在する砦へ攻めあがった。

 

斜面に木の防壁が巡らされているのが目視できる所まで、大和の軍は歩を進めていた。

これこそ洩矢諏訪の社の防壁、ここを突破すればもう洩矢の本陣である。

何の攻撃も受けずにここまで来られた事が、却って不気味でもあった。

そろそろ矢の射程に入るぞ。皆、心せよ!

高低差があるため、諏訪勢の矢は飛距離が伸びるが、こちらからの矢は届きにくい。大和軍にとってはここを如何に抜けるかが正念場であった。

 

SIDEOUT

 

 

八坂刀売神の伝を聞いた。

私は、南側より洩矢諏訪の社へ向け軍を進める。

 

ゆっくりとした動きでうぞうぞと這いずる様に前に進む華獣碧奧蘭蒂を先頭に、じわりじわりと兵を進める。

 

先の八ヶ岳の戦いで、恐れをなしてしまったミシャグジたちは遠巻きにこの大樹の歩みを見ている事しかできなかった。

 

・・・この茅野に布陣し相手の動きを見ます。

諏訪子・・・友の契りを結んでおきながら大和に付いた私を見てどう思う。

大和に魂を売ったと裏切り者とののしるか・・・それとも・・・

どんなに君に恨まれようと、祟られようとも・・・

 

諏訪子・・・許せとは言いません。

大和の国の為・・・うがやふき・・・愛おしい子の為、孫の為・・・これからも紡がれる子々孫々の為に・・・為さねばならないことがあるのです。

 

 

 

 

 

 

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