西洋妖怪バック・ベアード率いる軍団が日本国奄美群島の鬼界ヶ島への侵攻を開始した。
道中の沖縄系・東南アジア系の南方妖怪やインペリアル・タイジュ等の旧皇国残党妖怪たちはバック・ベアードの行動をそれぞれの理由で黙認し西洋妖怪軍団の通過を見逃した。
日本政府は怪気象時に妖怪に対する効果的な対抗手段が無い事を理解し自衛隊や警察で対抗することをやめ、主な妖怪の仕業とされる事件の発生場所が地方の田舎に集中していたことをいいことに妖怪の存在を公式で否定し見て見ぬふりをし、破魔組織に丸投げすることにしたのだった。
ただし、今回の鬼界ヶ島の件には辺境の島と言う事で丸投げされていた破魔組織の方も介入を避けたのだった。
そして、その鬼界ヶ島には妖怪の中でも比較的人間に近い種族のアマミ一族が居を構えていた。
髪の毛に交って触角がある、首元に水中生活用のエラがあるといった妖怪的特徴しかなく人間と同じように年を取る等と妖怪にカテゴライズされるがほとんど人間の様であった。
『アマミ一族よ。諸君らに伝わる秘宝を大人しく引き渡したまえ。』
西洋妖怪軍団の大軍勢は鬼界ヶ島を包囲し、ほぼ制圧したのでした。
鬼界ヶ島のアマミ一族は孤立無援の窮地に立たされようとしていたのだが、西洋妖怪が鬼界ヶ島に向かっていることを沖縄の妖怪たち伝手に聞いた鬼太郎たちはアマミ一族を助けるために鬼界ヶ島へ向かうのでした。
鬼界ヶ島ではグレムリンが島民を強制労働させ地下を掘削し始めていた。
フランケンシュタインや魔女グルマルキンに脅され土砂を運ばされ、掘削作業をさせられる島民たち。
そこに、鬼太郎たちは砂かけ婆や子泣き爺やぬりかべに加え他の猛者たちの協力を得て鬼界ヶ島に上陸を果たすのでした。
「バック・ベアード!!アマミ一族を解放して島から出て行くんだ!」
『ほぉ…君が鬼太郎か。うわさは聞いているよ・・・だが、何も知らない君の様な若造が出る幕ではないのだよ。帰りたまえ。』
バックベアードは鬼太郎など歯牙にもかけるつもりも無かった。
だが、鬼太郎は西洋妖怪たちがアマミ一族に手を上げるのを見て居てもたってもいられず。
西洋妖怪軍団との戦端を開いたのであった。
「ドラキュラ二世、ここは貴様に任せる。」
そう言ってベアードは後退して行った。
ベアードは本気で鬼界ヶ島を手にするつもりはまだなく、今回は小手調べの様なものであった。
しかし、任されたドラキュラ二世などはベアードに場を任された音もあり積極的に攻勢に出たのでした。
人造人間フランケンシュタインとぬりかべが取っ組み合いの力比べをする横では、子泣き爺が腕を石化して狼男たちを殴り倒し、砂かけ婆も魔女グルマルキンと戦った。
鬼太郎自身もゾンビフェアリーや下級吸血鬼をちぎっては投げちぎっては投げの大太刀周りをして見せます。
「鬼太郎!私が相手だ!」
鬼太郎とドラキュラ二世の戦いが始まります。
鬼太郎とドラキュラの戦いは長時間続いた。
太陽が上り始める。
「ぬ!?眩しい!?」
鬼太郎を相手にしていたせいで軍団の指揮が疎かになり、雑兵の大半がやられていたことに気が付いたドラキュラ二世。
「抜かった!?あと少しと言うところで・・・、っち。今回は初めての試み・・・イレギュラーはあるだろう・・・。撤退だ!!」
ドラキュラが睨みつけている方向にはゲゲゲの森の仲間妖怪たちの援軍が見えていた。
「鬼太郎を助けろ~!!」「「「お~!!」」」
その様子を見送る鬼太郎たち。
「今回はなんとかなりましたが・・・強敵ですね。父さん・・・。」
「うむ、西洋妖怪たちが遂に日本まで手を伸ばしてきよったか。鬼太郎・・・今後は気を引き締めねばならんぞ。」
「はい!」
その頃
西洋妖怪の一部が陽動の為に麻帆良学園にも攻撃を仕掛けていた。
とは言え、陽動故に既に撃退済みではあった。
大樹はその戦いには参加せず静観に徹し、室内から様子を見るだけであった。
そんな彼女の表情は暗かった。
彼女の耳に残る同胞妖精たちの成れの果てであるゾンビフェアリーたちの怨嗟の声。
「大樹様ぁ!!何故我らをお見捨てになったのです!!」
「水は穢され、地は汚れ、木々は折られ、我らは多くを失いました!!私たちは全てを!!命すら人間たちの贄にせねばならないのですか!!」
「我らが神!!妖精女王!!豊穣の女神よ!!お答えください!!」
(私は・・・間違えてしまったのでしょうか・・・。)
「60年前に徹底的に叩き潰すべきでしたな。」
「な!?ぬらりひょん!!貴方!どこから!?」
大樹の背後からぬらりと姿を見せたのはぬらりひょんであった。
「私はそう言う妖怪です故。ぬらりと現れ、ひょんと去る・・・そう言った存在です故。・・・おや、そう怖い顔をしないでください。別に貴方と戦いに来たわけではありませんよ。今日はご挨拶です。」
そう言って、大樹に包みを渡す。
「ご挨拶に・・・これを貴女がかつて所有していらした天目茶碗です。戦後、大英博物館に収められていましたが、取り返すのは苦労しました。盗んだもののくせに、強欲な奴らです人間と言うのは・・・。」
大樹は少し逡巡したが、戦国時代・・・今は無き信長や幻想郷に去った秋比売姉妹とお茶に興じた記憶がよみがえりそれを手にして、そのまま抱えた。
「連中は、身勝手なものですな。信長公が作った世を改悪したばかりか、彼の歴史も歪めた。比叡山全山殺戮、一向一揆殲滅を強調し彼を残虐な存在として今の子供たちに教えている。彼の功績は数行に纏め、小中の学校では彼が残酷な人間だったと教えている。ひどい話です・・・。おや、世間話・・・この場合は私の独り言が過ぎましたな。ここで失礼を・・・。」
そう言ってぬらりひょんは姿を消す。
その後すぐに部屋の扉が開き、エヴァンジェリンが顔を出した。
「大樹・・・。」
エヴァンジェリンはゾンビフェアリーの言葉が大樹を傷つけただろうと心配し様子を見に来たのであった。
「エヴァ?私は平気よ。ほら・・・。」
そう言ってくるりと回って見せた。
「そうか、ならいいんだ・・・。少し気になっていたんだ。」
大樹はエヴァと言葉を少し交わしてから、床に就いた。
その前に、大樹はテーブルの影にとっさに隠した天目茶碗を手に取る。
信長や多くの者たちと紡いで来たこの国の歴史。
今その努力や研鑽の結晶が砕かれつつある今・・・。
「私は・・・。」