大樹は侍従に案内を受け、吹上御所へ向かった。
道中では特型警備者やバス型の輸送車、放水車と言った機動隊車両が外苑部をぐるりと囲み、その周辺を一般警察車両が車列を成して巡回している。御所内の要所にも警察車両でバリケードが築かれており、ジェラルミン盾をずらりと並べて隊列を組んで警戒していた。
皇宮警護の名目で警視庁機動隊を軸に隣県の千葉・神奈川の機動隊が援軍として派遣され、皇宮警察と連携しているようだった。自衛隊は政府内左翼勢力の猛反対を受けて待機状態ではあるが前面には出さない様だ。
また、関東魔法協会から派遣された魔法使いや東西の確執からゴリ押しで関西呪術協会から派遣された術師、存在感を見せたい神社本庁や仏教各宗派が各地の弱小飛沫組織を統合して法師や術師の連合部隊が配置されていた。
つい最近まで緊密な関係にあった神社本庁や仏教連合会は別として、それ以外の魔法使いや術師たちからは敵対的もしくはそれに類する感情を感じる視線を送って来ていた。
私やエヴァ、それに大ちゃんが集めてくれた旧大社の巫女衆名目の寄せ集め妖精だけでは心もとなかったし、アウェー感が否めなかっただけにゲゲゲの森からの援軍は正直頼もしかった。幻想郷の八雲紫や目玉の親父殿には感謝しかない。
それだけにこういった視線に彼らを晒すことになったのは後ろめたい想いが強かった。
吹上御所に案内された大樹はある人物と対面する。
「御久しゅうございます。大樹様」
「・・・だいたい、40年ぶりかしら?こうして膝つき合わせて話すのは?」
大樹が懐かしそうに話す相手は、病臥の身であり数日前には吐血しておりベットから身を起こしての対話であった。
そう、彼こそ昭和と言う時代の今上天皇であった。
「あの後、大樹母様には大変な苦労をおかけしてしまいました。今も多大なる苦労をおかけしています。」
「いいえ、この国に住まう者すべてを見守っていこうと心に決めたのは私自身です。豊玉姫様の御子を産湯に着けたあの日・・・天皇家を支えていこうと決意し・・・信長様と天下布武を果たしたあの日、この国の万民に遍く光をなど思っていたのですがね・・・。」
大樹はその言葉を口にすると、表情に影が差した。
「思い上がりだったのでしょうか・・・。」
その姿を目にした彼は大樹の手を握って話しかける。
「皇室は貴女の御恩を忘れた日は御座いません。織田家や北条家、源家と言った歴史を持つ家々の者たちも貴女様の事を気に掛けない日は御座いません。」
彼は侍従たちの手を借りて立ち上がり、窓辺の方へ進んでいく。
苦しそうに呼吸をしている所を見るに相当無理をしているのが解る。侍従たちが無理をしない様にと声を掛けるが彼はそれを抑えて窓の縁を支えに外の方を示す。
「この国の多くの民が、かつての在りし日を忘れてしまっているのは事実です。ですが、まだ終わりではない。そう思いませんか?大樹母様?」
彼の視線の先に、鬼太郎たち妖怪や妖精と楽しそうにしている少女、天童夢子の姿があった。
「そうですね。あれはかつてありし日の姿・・・、そして理想の未来。」
彼の目に写った大樹の姿は影が差し、大戦中に見た凛々しい姿は影を潜め儚さと危うさとでもいうのだろうか。暗いものを本能的に感じてしまったのであった。
「あの、大樹母様・・・。」
「私はこれで・・・。」
彼は声を掛けようよしたがそれよりも早く大樹が退室の言葉を述べて退室してしまったのでした。
その翌日の31日の大晦日。
「うっ!?」
今上天皇の容態が悪化、意識はあるがとてもまともに会話できる状態ではなかった。
宮内省はこの情報を徹底的に遮断し、関係各所に徹底的に管制を敷いた。
皇居全体に静かに動揺が広がる中で、ついにぬらりひょん派の総攻撃が始まった。
皇居周辺の公共の道路部分や敷地に進入禁止措置が取られマスコミがシャットアウトされているので、一般人が中の様子を知ることは無い。
警戒線の警察官の空気が張り詰めているのを記者たちも感じているようだった。
鬼太郎の頭頂部の毛髪がアンテナ状に逆立つ。
「皆!!来るぞ!!」
周辺から機動隊のM39拳銃との発砲音が聞こえてくる。
魔法や術を放った時特有の収束音や放射音が続いて聞こえてくる。
鉄鼠と子分のねずみ妖怪たちが因縁ある天台宗の法師達をなぎ倒していく。
「やっちまえ!おまえら!!」
「「「チュッ!シャー!!!」」」
邪魅や魍魎と言った妖怪たちが機動隊の銃撃を物ともせずに突っ込んで行く。
各所での戦闘は激しくなりついには特殊部隊の短機関銃の発砲音が響き始めた。
外の方では警戒線の警官たちがニューナンブ拳銃を抜いて皇居側を向き始めた。
報道関係者が異常を察知しカメラを廻そうとし始める。
「カメラが回らない!?」
「どうなってる!!電話が通じないぞ?」
報道関係者に混乱が広がる一方で、パトカーの無線機を操作する警官が上司の警官に皇居側と連絡がつかなくなっていることを知らせた。
そんな様子を影から見ていたぬらりひょん。
「八雲の仕業か?余計なことをしおってからに・・・。まぁ、いいでしょう。」
通信障害が八雲紫の仕業と見抜いたぬらりひょんであったが、これが八雲紫の妨害の限界であると見抜き総攻撃の合図を送る。
「さて、総攻撃です。」
そう言ってぬらりひょんは大量の煙幕弾を報道陣の居る雑踏に放り込む。
「な、なんだ!!」「火事か!?」「ガスだー!?」
ぬらりひょんは人ごみの中をぬらりと進んでいく。
「私とて男ですからね。性に合わないと解っていても少しばかり暴力的にやってみたくもなると言うものです。それに本気じゃなかったとしても、ここまでうまくいくと行けるところまで行ってみようと言う気にもなるのですよ。ふはははははは!!」