「あぁ!?夢子ちゃん!!」
鬼太郎の悲痛な叫びが響く、彼女の胸からは赤い染みが広がっていく。
現場は破魔組織も警察も蜂の巣を突いたような大混乱になっていた。
夢子は今上陛下の計らいもあって宮内庁病院に運ばれたが、間に合わずあと一歩でというところで息を引き取ってしまうのでした。
手術台に運ばれた直後に息を引き取ってしまう夢子。
「そんな・・・。」
力なく膝をつく鬼太郎。
ダメ!彼女を死なせたらダメ!
大樹が鬼太郎を押しのけて、神気に妖精特有のマナと言ったあらゆる好天的な力を注ぎこんでいく。
「天童夢子、貴方を死なせるわけにはいかない!」
ピッ
心拍計が反応する。
息を吹き返したのだ。
「よかった。」
鬼太郎たちや集まって来ていたゲゲゲの森の妖怪たちからも歓声が上がったのでした。
そして、数日後。夢子は病室で目を覚ます。
「ん…あぁ…ここは。」
「宮内庁病院の病室だよ。」
「あら?鬼太郎さんたちは・・・。」
だが目の前にいるはずの鬼太郎たちがいない。
医師は一瞬だけ眉をひそめた。
「天童さん…君は・・・・・・、そうだ、もう少ししたら検査をするよ。」
病室のテレビには神器を盗もうとした不届き者が都内を逃亡中と言うニュースが流れていた。
そんな状況に、夢子は夢を見ていたのかもと思う。
『子供の優しい心だけが見られる夢、大人になったら忘れなくちゃいけない夢…。さようなら私の夢。』
あら?
向かいの木に一瞬だけ、鬼太郎さんが映ったような。
気のせい・・・なの?あれは、夢・・・だったの。
夢子さんは一命を取り留めた。
でも・・・、銃で撃たれた後遺症・・・はたまた、私の込めた力が悪かったのか。
私たちの事が見えなくなっていた。
彼女は私達のことを夢幻と思い始めている様だ。
「夢子さん」
大樹は麻帆良に戻ると学園長室にも寄らず。
図書館島への道を行く。
いくら希望を見出しても・・・
人類と妖怪の未来に差し込んだ光明であっても、多くの人間の持つ暗く深い心の闇がすべてを飲み込んで、結局はこんな悲しみだけが繰り返されていく。
幻想郷に戻る大妖精たちとも顔を合わせることは無く。
図書館島の下層へと続く階段を下りて行く。
かつて、日本の人間たちは妖怪たちと楽園を築き上げ、希望の光に満ちていた。
日本人たちは海の向こうにもその光を広げようとその戸口を開いた
この考えに賛同した異国人や異国の妖怪たちは大勢いた。
そういう意味では、確かに世界に希望はあったのだ。
だが、希望足りえる人間たちは次々といなくなっていく・・・。
希望を見出しても行き着く先がこれでは・・・。
なら、わたしは・・・。
皇居、吹上御所。
「そうですか。天童さんは命に別状はない。よかったです。」
今上天皇は病床からほっと息をついた。
「ですが・・・。」
侍従長の次の言葉を聞いて絶句する。
「見えなくなってる・・・。あの事を・・・ゆ、夢だと・・・思っているのです。あぁ・・・そんな。大樹母様は、大樹母様にお会いせねば・・・っ!」
侍従長は今上天皇のただならぬ様子を見て麻帆良学園に連絡を取った。
そして、侍従長は今上天皇に言うべきでない言葉を告げた。
「大樹様は図書館島の最下層に籠られ、誰ともお会いしないとのことでした。」
それを聞いた今上天皇は天を仰ぎ、嘆いた。
「あぁ・・・これは、こんなことが・・・、なんという、何と言う事だ・・・。これは、この先は・・・あぁ・・・ダメだ。こんなことがあっていいのだろうか。これは、あまりにも、あんまりにも・・・・・・・・・ぐっ!?うぅ・・・ぐはっ」
今上天皇はひとしきり嘆くと吐血して意識を失った。
「へ、陛下!?誰ぞ!誰ぞ医者を!!」
病室の向かいの木から夢子の病室をのぞく鬼太郎。
「一命を取り留めたようじゃの。儂らの事が見えなくなって忘れてしまうかもしれんのう。」
目玉の親父は悲しそうに呟いた。
「僕は夢子ちゃんが無事で良かったと思いますよ。それに、いつかきっと・・・。」
1989年1月7日、昭和天皇崩御。昭和と言う時代が終わり平成へ。