官房長官から告げられる新元号。
「新しい元号は、『平成』であります。」
昭和天皇崩御の日(1月7日)、内閣総理大臣梅下登の承認を得て、新元号は平成と定められた。
『地平かに天成る。』
国の内外、天地とも平和が達成されると言う意味であり。
狭山事件、瀬戸内シージャック事件、よど号事件、三島事件、三無事件、三里塚闘争、さくら号事件、あさま山荘事件、三菱重工爆破事件、三種の神器事件と警察の実働部隊や一部自衛隊が関わる重大事件が多く発生し、官民問わず少なくない数の犠牲者が出た時代であり、地祇の時代は何事もなく平らかな時代であって欲しいと言う願いが込められた元号であった。
カルト教団が引き起こした事件や阪神淡路大震災があった90年代は過ぎ去り、テロとの戦いが始まるのが2000年代。と、それはさておき・・・
2000年になる直前の頃だったか。
近衛近右衛門学園理事長から、日本史の非常勤講師にと打診を受けた。
私としては断るつもりでいたが、懐かしい顔が麻帆良に現れた。
「教育実習生として、こちらに来ました。天童夢子です。皆さん仲良くしてくださいね。」
私は学園長に直接、辞退の意向を伝えるために麻帆良学園本校女子中等部の教室を通り過ぎた時に聞こえた言葉だった。
私は思わず教室の中をのぞいてしまった。
あの頃と比べて大人になった今では背格好も、声だって声変りがあるのだから違っているのだが判ったのだ。
今私が見ている彼女は、あの天童夢子だと言う事が・・・。
彼女の身が纏う妖怪との繋がりが強いものから伝わってくる陰の気が、かなり薄らいでいる事も、分かっている。だが、彼女は天童夢子なのだ。
かつて、私が人間と妖怪の友好の未来を見出させた人間天童夢子なのだ。
それが今、何の因果か私の前に再び現れた。神である自分が言う言葉ではないが運命を感じてしまうではないか。
だから私は近右衛門の打診に対してこう答えてしまうのだった。
「麻帆良学園都市の非常勤日本史講師の件・・・お引き受けします。」
私はその後、麻帆良学園都市で非常勤の日本史講師として学園本校や聖ウルスラ、大学付属中高の非常勤講師としての活動が続いた。
戦後からは大樹大社祭神としての仕事はGHQや戦後政権によって骨抜きにされたのでほぼ無かった。戦後、関東大樹大社が取り壊されてからは清州城の近くにあった桃園大樹宮と安土城敷地内にある大樹宮が神道大樹派の主要拠点であった。それ以外は源頼朝が寄進した相模大樹神社や浅井家が寄進した琵琶大樹神社、藤原氏の誰かが寄進した平泉大樹神社が挙げられるだろう。
2002年に私とは縁のある植物系の大妖怪風見幽香が幻想郷でひと騒動起こした様だ。幻夢界の悪魔姉妹もこれに便乗したとかで大騒ぎだったらしい。
幽香は妖怪としては隠居よりで大人しくなったと聞いていたのだけど、偶には暴れたいときもあったのだろうか?
あと、2003年の始め?もしかしたら2002年の終わり頃には幻想郷と魔界の間で小競り合いがあった様だ。で、その後すぐにスカーレット家の当主レミリア率いる集団が向こうでは紅霧異変と言う異変を起こして、博麗の巫女にボコボコにされたらしい。
戦後すぐに先代ギュスターヴの訃報が入ってからはすっかり御無沙汰の吸血鬼名門でしたが、西洋妖怪の駐日大使であるエリートが安土大阪時代に別邸と言う拠点を築いてから、実に400年ぶりに出来た西洋妖怪の日本国内拠点だ。国内に西洋妖怪の拠点があることは鬼太郎たちに伝えるべきなんだろうけど、その気にはなれないわね。
話が脱線してしまったが、私自身は大きな変化があった訳ではない。本校中等部、エヴァンジェリンが入部している茶道部の顧問をさせられたことくらいだろうか。
夢子ちゃんのことだが、麻帆良で教育実習を済ませた後は調布市の学校に赴任してしまった。ただ、私自身の未練もあったのか教育実習生だった時に、連絡先を交換しており2,3カ月に一度くらいではあるが連絡を取り合っている。あくまでも麻帆良で働く教員仲間としてだが・・・。
なんだかんだで、私とてメールも携帯通話使いこなせたりするのです。
「ねぇ、エヴァ?赤外線通信ってどうやるの?ケーブルなんて買った箱にはなかったけど?」
「赤外線通信は無線だ!ケーブルなどいらん!」
さすがは現役女子中学生、流行に詳しいわねぇ。
日々平穏に過ごしていると、ある日のことだ・・・
昭和63年の事件以後、鬼太郎たちの妖怪と人の融和の為の活動に消極的になってしまった。むしろ、西洋妖怪の情勢を知っているのに教えない時点で非協力的かもしれないが、ぬらりひょんのやり方を肯定する気は毛頭なく敵対しているわけじゃない。
鬼太郎の仲間たちとの関係もだらだらと続いてはいた。だから、彼が私のところに挨拶に来るのはおかしい話ではないわけで・・・
「一人で行くのはおやめなさいな蒼坊主。あなた、極度の方向音痴でしょ・・・。」
大樹の目の前にいる男前と言えば、まぁ男前の青い衣を着た行脚僧姿の青年妖怪は蒼坊主。
人間の行脚僧として振舞いながら生活しているが、実は悪妖怪の封印を巡視する役目を持ち、日本各地を旅しているのです。
「つっても妖怪横丁は同じ都内だろ?大丈夫だって、大樹様は心配性だぜ。」
「はぁ、タクシー呼んだから近くまではそれで行って、そこから先は呼子を呼んで連れてってもらいなさいよ。」
まったく、大妖怪とかそれに類する妖怪って何かしら欠点があるわね。
蒼坊主の場合は、その驚異的な方向音痴が麻帆良の結界の穴を通り抜けるって言うエキセントリックを決めたから、私の前に来たわけで・・・。
「もうとにかく、ゲゲゲの森と横丁の妖怪たちよろしく言っておいてね。」
「おうよ!ありがとな、大樹様!」
そう言うと蒼坊主はタクシーに乗って去って行った。
この鬼太郎の兄貴分でもある青坊主は、戦後私の統制から外れて派手に暴れまわった妖怪たちに頼んだわけじゃないけど自主的にお灸をすえている実力者なので、そういった意味では心配してないのだけど。
「ものすごい方向音痴なのよねぇ。さてと・・・」
大樹はそういって青坊主が来る前に書きかけていた手紙の続きを再開したのでした。
タクシーから降りると速攻で「やっほー!」と大声を上げて呼子を呼び出した。その過程で不審者扱いを受けるのは御愛嬌だ。
そこから、蒼坊主は鬼太郎の家に立ち寄って目玉の親父に挨拶をする。
「蒼坊主、立ち寄らせてもらいました!」
「うむ。」
蒼坊主は鬼太郎たちに飛騨の天狗たちから託された古今東西妖怪図鑑を託す。
その日は歓迎の宴をして翌日にはゲゲゲの森を一人で去ろうとする蒼坊主だったが、鬼太郎に見つかり見送られることに。
そこで、彼らは見つけたのだ。
都会の明かりを吸収して巨大な炎を纏った火取魔に・・・。
二人は火取魔を操るぬらりひょんを見つけるのだった。
「行燈や火鉢の炎を吸っていた時とは文明が違うのだ。現代の熱エネルギーを吸収し続けたお前は無敵・・・。さぁ!鬼太郎たちをやつけるのだ!」
ぬらりひょんが火取魔を操り鬼太郎打倒を目指し火取魔に鬼太郎を呑み込ませる。
すると火取魔は自身の力に気づきぬらりひょんの言うことを聞かずに暴走を開始。
一方の蒼坊主もぬらりひょんに不覚を取り、一時撤退。
妖怪横丁に戻って封印の札を古今に用意して、横町の仲間たちと協力し、封印術を使って火取魔を封印するのでした。
ちなみに、ぬらりひょんはどさくさに紛れて逃走した。
「ここまでくれば、大丈夫じゃろう。朱の盆、車を廻せ。」
「あれ、レンタカーなんで返してきちゃいました。」
「なら、邪骨婆か旧鼠に迎えに来させろ。」
「あ、火取魔に携帯の電池吸われちゃってます。」
「馬鹿もんがぁ!!」
そう怒鳴ってぬらりひょんは朱の盆を杖で殴るのだった。
あと蒼坊主ですが、封印した火取魔を石川県に持っていくところ何故か鳥取砂丘に行ってしまうほどの方向音痴っぷりには呼子ですら呆れてしまうのでした。