大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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157 平成 時代の転換の前触れ

2015年、鬼界ヶ島の戦い、東京湾妖怪島の戦いと西洋妖怪軍団の大規模な攻撃が実施された。いずれも鬼太郎たちによって撃退された。しかし、西洋妖怪軍団の襲撃などはあくまでも妖怪たちの引き起こした騒乱の一例であった。現状に不満を抱えた妖怪たちはこの国の闇深くで蠢いていた。そして、この国の外からも虎視眈々と狙う者たちはたくさんいた。

 

 

「バックベアード様、日本国内にグレムリンたちを潜ませました。次期に奴らから決行準備の進捗が知らされるでしょう。」

「うむ、そうか。ドラキュラからの連絡とブリガドーンの第二射の準備は・・・?」

 

ベアードの問いにヨナルデ・パズトーリは書類束を読みながら答える。

 

「ドラキュラ公爵からは万事抜かりなくとのことでした。それとアルカナの魔女の娘たちも相応の年になりました故、コアは問題なく。あとは祭壇や指輪と言った儀式の準備次第ですな。」

「ドラキュラ公爵もうまくやっている様だし、順調なら構わん。ぬらりひょんの奴めも動き出しておる。」

 

ベアードは応用に頷いて見せ、ヨナルデは新たに不安要素ともいえる報告をする。

 

「実はそれ以外にも先んじて潜入しているゴーゴンやエリートから魔法世界、完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)の手の者が何やら不穏な動きありと報告を受けています。それと、友好関係にある旧大樹家臣団筆頭の隠神刑部も我々に隠れて何やら動いているようです。」

 

「むぅ・・・・・。今後数年は物事が大きく動くだろうな。」                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぬらりひょんが所有するビルの一室。

 

「そうですか。百々爺はうまく乗ってくれましたか。慈善家面をしてますがその実、非常に欲深い、実に単純で操りやすい男です。ところで邪骨婆、中国妖怪は何と?」

 

「姉を解き放てるのならと非常に協力的じゃよ。じゃが、中国妖怪と手を組んで良いのか?奴らは信用ならんぞ?」

 

邪骨婆の忠告を聞いたぬらりひょんはお茶をすすりながら応じる。

 

「当たり前だよ。中国妖怪は信用できん、捨て駒にするに決まっておろう。」

 

襖の向こうから朱の盆の声が聞こえた。

 

「ぬらりひょん様、たんたん坊様がいらっしゃいました。」

「そうですか。朱の盆、たんたん坊さんを早くお通ししなさい。」

「はぁい、ただいま。」

 

朱の盆がたんたん坊を迎えに行って暫く。

 

「ぬらりひょん、久しいな…。」

「妖怪の権威復権のためには互いに協力し合うことこそ必定。人間たちも良くない動きがある、いがみ合っている場合ではないでしょう。事実、この日本国内で厳然とした戦力を持っているのは我々だけです。妖怪たちを守れるのは我々だけなのです。」

「うむ、妖怪城を使う時が来たのかもしれん。」

 

 

 

幻想郷では春雪異変、永夜異変と言うものが発生し博麗の巫女によって解決した。

また、諏訪大社の巫女が疾走する事件が起きた。これは八坂神奈子、洩矢諏訪子の幻想入りが発端の出来事であったが、普段麻帆良に幽閉されている大樹がそのことを知ったのはすでに幻想入りした後のことだった。

そして、永夜異変から3年後の2018年。

妖怪の賢者の八雲紫が月へ仕掛けた戦争、第二次月面戦争。

紫の計画は、霊夢たちと自身は月の使者の陽動役に徹し、その隙に月人に怪しまれない幽々子を月の都に潜入させ月の使者のリーダーの屋敷に対し工作を行うというものである。この企みは成功している。と言えば破壊工作か何かの諜報活動に感じるだろうが単に酒泥棒である。この第二次月面戦争は八雲紫と永夜異変を起こした逃亡月人勢力の八意永琳の謀略戦であった。八雲紫と八意永琳は互いに二手三手を読んだ高度な諜報戦であったが、この第二次月面戦争はいくらかの月人たちの興味を幻想郷含めた地上に向けることになり、八雲紫も八意永琳も想像してもみなかった展開を迎えようとしていた。

 

 

綿月家は地上の監視を担う家柄であり、綿月家に所属する月兎たちはいざとなれば地上の者たちと戦えるように鍛えられている。

 

 

綿月姉妹の下に届く報告や情報は、自分たちに関係のない地上の国々の動静や幻想郷の様子であった。

この日、寄せられた報告の中に姉妹の気を引く報告があった。

 

「姉さん・・・。」

「わかっているわ。」

 

報告の中には援助、要請と言った文言が記されていた。

穢れを嫌う月人たちは地上に住まう者たちと関わるのは避けることが当然であった。

しかし、豊姫も依姫もこの名を聞いては無視する気にはとてもならなかった大樹野槌水御神。

以前の報告では二回にわたる大戦後、敗戦国の元首のセオリーである幽閉の憂いにあることは知っていたが自分たちが手を出すことは自重していた。

 

しかし、機会は巡ってきた。

20年ほど前から地上に派遣していた月兎たちと接触し、私たちとの謁見を望んでいた。

 

通信機のモニターの先から声が聞こえてくる。

 

「この度は月の尊き貴人の方々と拝謁賜れたこと感謝の念に堪えません。我々は千年以上と大樹野槌水御神様とともに歩み、その御偉業を微力ながら御支えさせていただきました。ですが、我々は欲深き者たちに敗れ臣としての恥辱に塗れ、打つ手はなく。情けなくもあの方をお助けすること叶わず今に至るまで生き恥を晒してきました。このままでは欲深き者たちは地上を完全に穢れた世界にするでしょう。それこそ、あなた方が許容できなくなるほどに・・・。大樹野槌水御神様こそが地上を澄ませすことができる唯一無二の方なのです。この世界の希望を潰えさせるわけにはならんのです!なにとぞ我らに雪辱を果たす機会をお与えください!!我らの願いをお聞きと届け願いたい!!月の御貴神らの御慈悲を!!なにとぞ!!なにとぞぉお!!」

 

声の主は古い軍の高官服を着た姿で画面の向こうで頭を床にこすりつけていた。

綿月と大樹の関係は非常に深いものであった。触れ合った期間こそ長くはなかったが綿月と大樹の間にあったことは二人にとって無視できるはずがなかった。

 

月の要職の立場上、動くことはできなかったが介入する建前があればすぐにでも手を出していたはずだ。そして、ついにたまたま機会が巡ってきたわけだ。

 

綿月豊姫にとってはやむにやまれぬ事情で泣く泣く地上に置いて行った息子を、自分に代わって育て今の時代にいたるまでその血筋を繋いだ恩人なのだ。そして依姫にとっても自分の夫であり甥っ子であり、息子である者たちを育て育み今につないだ恩人である。

 

私たち姉妹と大樹のつながりは永琳様を除けば他の神々の比ではないだろう。

仮に永琳様の反対を受けたとしても、ぎりぎりまで手を貸しただろう。

故に、この決断は必然だった。

 

豊姫は画面の向こうに声をかける。

 

「面を上げなさい。大樹家臣団筆頭陰神刑部狸。」

 

 

 

 

 

 

 

2018年、これまで政権を担ってきた保守系政権が転落、妖怪だったり日本古来の呪術師たちに忖度してきた政権は野党に転落し、メガロメセンブリア礼賛の左翼政党が政権を取った。

 

「日本初の女性総理、連舫新総理の誕生です!」

 

そういった時期だったがゆえに、魔法世界の英雄の息子とは言え無茶苦茶な忖度が通ったともいえる。

彼がこの国に渡ってきたことは、良い方向へ進むか。はたまた、悪い方向へ進むか。

この幼さすら残る少年が歴史にどのような影響をもたらすのかは、まだわからない。

 

 

 

 

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