大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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165 平成 京都修学旅行①

 

 

紆余曲折ありましたが修学旅行は京都になりました。

正直に言えば、修学旅行先はハワイの方が良かった。

私個人も京都に行きたくないわけではないが、この件に関しては近右衛門とは激しく対立した。かなり激しい口論をしたため少々険悪な空気が魔法職員会議で流れていたと言えば、その通りだったと思う。そのせいで近衛学園長を当分近右衛門と呼ぶことは無いだろう。

麻帆良を本部とする関東魔法協会と、京都に本拠を構える関西呪術協会は仲が悪い。

そこで近衛学園長はネギくんに親書を持たせ特使として派遣する、という形を取ることにしたそうです。これで近衛学園長は当面の問題は解決したと思っている様だが、これは認識が甘すぎると言えるでしょう。東西の協会の問題として、両組織の長が近衛家の人間と言う時点でデキレースだ。力関係的に関東寄りの物であると理解できる。

 

近衛学園長の親書に書かれている「自分の部下も抑えられないとは何事じゃ!」と叱咤する内容であった。内容にも問題があるが、近衛詠春に部下を抑える能力などないのだ。

そもそも、近衛詠春は近衛家じゃない。青山の人間なのだ・・・。

本来、関西呪術協会の長は近衛家の血が流れている詠春の妻か、その子供じゃないといけないのだ。

皇后しかり、伊勢神宮や平安神宮といった神殿の斎主や宮司しかり、血筋や家柄は重要なのだ。

青山も術士や剣客としては名家だろう。だが違うのだ、そういった歴史ある術師の家々を纏めるのは貴族やそれに準ずる名門の家系でないといけない。政治ができる人間でないといけないのだ。英雄だろうが何だろうが、所詮は一兵卒だ。そう言った意味では青山家など神鳴流の師範以上の価値はないのだ。

そんな者に従うような奴はまずいないのだ。関西呪術協会の目に見える内部分裂はなるべくしてなったと言える。最低でも近衛木乃香をお飾りにしてでも近衛家の摂関家の正統性を押し出すべきだったのだ。それが無理なら、最低でも清華家あたりからでも長代行を引っ張ってくるべきだったのだ。

 

話がそれたが、関東魔法協会と関西呪術協会以外にも畿内には火種がたくさんあるのだ。

例えば比叡山天台宗と信貴山真言宗は命蓮寺(実は真言宗系)の件もあり今でも対立しており、天台宗のバックに関西呪術協会が、信貴山真言宗のバックには南紀に勢力を維持し続けている妖狐衆が付いており、無論バックの関西呪術協会と妖狐衆は敵対している。また、かつて相当規模の僧兵を擁していた寺院仏閣は攻勢に出れる規模ではないのが、ほとんどだが今でも裏の戦力を保有している。また、京都には私の従神であった碧奧蘭蒂の陵墓があり、そこを守るのが畿内一円の植物妖怪の長である万年竹だ。さらには、詳細はつかめなかったがぬらりひょん派の拠点もどこかにあるはずだ。今後起こるごたごたに絶対一枚かむはずだ。

だが、近衛学園長はそのあたりの理解に乏しいのだ。

 

そう言った火種がありながらも修学旅行先は京都になったのだ。

 

 

 

 

 

 東京駅を出発した新幹線の中、一つの車両丸々を貸し切る形で、麻帆良学園が京都への修学旅行の為に、新幹線を利用しているのだ。

 

 

「他の車両に迷惑をかけないようにしてくださいね。」

 

 

と注意事項を告げると席に戻り、騒がしい修学旅行生たちに我関せずを貫いた。

 

生徒たちは、さらに騒がしくなり始めた。中には、席を移動してゲームをし始めて騒ぎ出す者もいる。とはいえ、それも学生たちにとっては醍醐味の一つ。ネギくんを始めとした教師たちも口うるさく注意することなどはしなかった。

 

 車両内に蛙が行き成りわらわらと湧いて出て来るというハプニングはあったが、想像より遥かに生易しい関西の妨害の対処はネギくんにもできるだろう。

 

実際、拙いながらも対処できた。ひと段落ついて私は今回の引率教員のまとめ役である新田先生に許可を取るために彼の下に向かう。

 

 

「あの、二日目の班別行動のことなんですが・・・。」

「あ、旦那さんとお子さん方の墓参りでしたか。学園長から聞いていますよ。我々の事は気にせず行ってきてください。」

「ありがとうございます。」

 

 

無事京都駅を降りたネギたち教師と麻帆良学園御一行は、まず清水寺へバスで向かった。

 

バスを降りてネギが最後尾で追いかけて漸く追いついた時には、3-Aのメンバーは持ち前の元気さで、清水の舞台で騒いでいた。

 

 中学生である彼女たちにとって美しい光景や希少な歴史よりも、その先に有る物の方が強く興味を惹かれるのだろう。恋占いで有名な地主神社や音羽の滝の話を、綾瀬さんから聞き、そちらに駆けて行ってしまった。

 

置いてきぼりを食らった綾瀬さんはふと足を止めて私の方を向いて話しかけてきた。

 

「水御先生。明日の班別行動なのですが良かったら先生も一緒に回りませんか?」

「ごめんなさいね。綾瀬さん、先生じつは2日目は事情があって引率抜けるのよ。本当にごめんなさい。」

 

「いえ、大丈夫です。」

 

そう言って、綾瀬さんも友達の下に駆け寄っていった。

 

 

 

 

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