大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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17 仏教布教 豊聡耳神子と乙巳の変

 

仏教の流入、かの宗教は国をまとめる為に大いに役立った。

 

「人心の乱れを正し、すべてを受け入れる事が修行なんて、為政者の為にあると言っても過言ではないでしょう。」

 

豊聡耳神子・・・、なかなかの知恵者よ・・・。

仏教の教えは、まさに政治利用するに都合のいい・・・。それにあの修行内容を完遂できるもの等そうはいまいて・・・

 

「さすがは大樹様であらす。・・・いえ、ここは滅多なことは言うべきではないですね。仏教

の根付けは大樹様が影から思うままに主導するのがよろしいかと・・・。」

 

あら、御子が主導してはくれませんので?

 

「ご冗談を・・・私は人の子ですよ。仏教を根付かせ統べるまで、とても生きてはいられませんよ。ははは・・・」

 

あぁら?道教の仙人崩れとよろしくしてるのは、不老不死となり現人神ならぬ現神に至る道ではなくて?

 

豊聡耳神子は、顔をこわばらせた。僅かに後退っているようにも見える。

御子は頭を床に着け弁明する。

 

「大樹野椎水御神、決してそのような事は・・・!」

 

責めてはおりませんよ?貴女ほどの知者ならばそう考えるのも当然。罷りなりにもその方法を見つけるに至ったのは貴女だけですがね。

で、いつそうなるのです?貴女に天皇位を用意せねばなりませんからね。

 

「では、大樹様。賛同していただけるので?」

 

勿論です。この国は神武から始まる神の国、さかのぼれば天照大御神様に伊邪那岐尊にいたる尊い血族。御子はその尊い血を引く存在、それが神性を得るのです。これほどに国を統べるに適任な人材はいませんよ。して、いつになるか?

 

「青娥殿に聞いてみますが、非常に時間がかかるとだけ・・・。」

 

娘々とも話しておくべきかな・・・。

そうですか・・・貴女には大いに期待しますよ豊聡耳神子。

 

 

 

暫く経ち、大きな改革の芽を出させた後、豊聡耳神子がこの世を去る。一時的な物ですがね・・・。

豊聡耳神子が表舞台から去ることで、問題が起こった蘇我氏台頭である。

蘇我氏の横暴は目に余り、上宮王家を滅ぼしてしまう。蘇我氏も古人大兄皇子を擁していたが実態は蘇我氏の傀儡であった。

 

このままでは、日本は蘇我氏の物にされてしまう。

危機感を覚えた私は中臣鎌足を推して中大兄皇子を擁するよう動いた。

 

「大樹様、蘇我の横暴は見るに堪えません!今こそ蘇我を討つときです!」

「大樹母(皇族が大樹を呼ぶ場合の専用名詞)様!ご決断を!!」

 

ついに当時の御所である大極殿にて決行される。

 

『古人大兄皇子が側に侍し、蘇我入鹿も入朝しき。入鹿は猜疑心が強く日夜剣を手放さざれど、側役人に言ひ含めて、剣を外させたりき。中大兄皇子は衛門府に命じて宮門を閉じさせき。奏上役が上表文を読みき。中大兄皇子は長槍を持ちて殿側に隠れ、鎌足は弓矢を取りて潜みき。

 

中大兄皇子は部下らが入鹿の威を恐れて進み出られなきなりと理り、自らおどり出でき。大樹のお墨付きを知らぬ部下たちと違ひ中大兄皇子は天皇家養母の命を忠実に実行に移し、飛び出して入鹿の頭と肩を斬りつけき。入鹿が驚きて起き上がると、鎌足の部下が片脚を斬った。入鹿は倒れて天皇の御座へ叩頭し、

 

「私に何の罪があるや。お裁き下され」

 

と言ひき。

 

すると御座の奥より童女の声が聞こえき。

 

「貴様は皇族を滅ぼして、皇位を奪おうとしき」

 

御座の布が払はれ皇極天皇の座の後ろに控えた童女。

その童女には薄き羽が生え、発せられる威は尋常ならざりき。

 

大樹様なり。

 

「寶皇女(たからのひめみこ)、理解できたりな。」

 

皇極天皇は無言のまま殿中へ退きき。

 

御座の横にゐし巫女ら、彼女らも巫女服より薄羽が見え隠れしたりし彼女たちが入鹿の下に歩み寄り、入鹿を斬り殺しき。

 

この日は大雨が降り、庭は水で溢れてゐき。入鹿の死体は庭に投げ出され、障子で覆いをかけられき。 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これで邪魔者は消えた。

 

 

 

 

※『』国家機密指定文書 藤原鎌足日記

 

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