ネギたちが関西呪術協会で歓迎を受けていた頃、大樹たちは春日大社に訪れていた。
天狗ポリスを伴って、鎮圧の動きを見せた大樹と、決起した寺社衆及び南近畿一帯の妖怪による連合との間で交渉の席が持たれたのであった。
「いやはや、なんとも大それたことを・・・。」
大樹の反応は一見呆れているようにも見えたが、感心してもいた。
今回の反乱行為に明確に敵対反応をしたのは天台宗だけであり、その多くは中立を守った。
信長の菩提寺の宗派の臨済宗はこちらに合流していた。
敵意を受けるでもなく、大樹は連合軍の品定めをする。
「大樹様・・・。」
沈黙を破ったのは白蔵主。今回の首謀者だ。
「決起と言うのも解らなくはありません。裏で済ませようとしたのは良策でしたね。私としても良い落としどころを見つけられました。」
「と、言いますと・・・。」
「もとより、日本古来の破魔勢力は陰陽寮、今もその後継たる関西呪術協会が担ってきましたが、戦後を機にみるみる弱体化していきました。関西の・・・日本の破魔系の治安維持能力にも疑問がありますね。・・・しかし、本当にいいタイミングでいい人が来てくれましたよ。」
大樹はその席にいた人物に視線を移す。
「聖白蓮。」
「道徳が廃れ、世は、大騒ぎして派手に目立った者こそが正義という末法の世界。私が封じられていた半世紀程でずいぶんと世界は様変わりしたようです。」
白蓮の言葉に大樹は笑顔ではないが口角を吊り上げて、「あはは」とごまかすように笑って見せた。
「実際酷いものです。わが身の不徳の致すところと言ったところでしょうか。」
「貴女を不徳とするのなら、それはもはや世が処置なしと言うこと・・・悲惨極まる。」
「至らぬとも至らぬなりに手を打とうと思っています。貴女が封印を解いて世に出でたのもある種の思し召し。」
「わたしに何をしろと言うのです。」
「なに、大したことではありませんよ。真言宗十九本山総大長者たる聖白蓮殿ならば・・・。」
白蓮は大樹の怪しげな目つきに馴れ合い程度に眉をひそめる。
「大樹様は昔から謀を好む。私がこの時期に封を破ることもお見通しでしたか?」
大樹は軽く笑みを浮かべて答える。
「謀は密なるを尊ぶと言いますでしょう。ことを起こしてしまえば、政権もメガロも手は出せませんよ。」
大樹と聖白蓮の対談の成果はすぐにわかる事となる。
その頃
「京都との連絡が付かないですか?府庁からの報告は?」
「総理、裏関係の内容ですので府庁では対応できません。ここは関西呪術協会の連絡を待って対応しましょう。」
首相官邸では官房長官を交えて近畿の事態への対応を迫られていた。
「この際、我が国の暴力装置・・・。自衛隊を使ってみるというのは?」
「こういったことであれを使うのは、周辺国との友好が傷つきかねません。それに通常火器が妖怪どもにあまり有効ではないことは過去の騒乱で確認済みです。」
官房長官の仙石由渡は左翼系の人間ではあったがメガロへの忖度からか自衛隊とぶつけるべきと発言した。
「我が国の勢力圏内で妖怪どもの勢力に勢いが付くのは宜しくない。麻帆良学園側に介入を要請しましょう。」
「なるほど、麻帆良はメガロの出先機関。メガロの介在があっての失敗なら彼らも強くは出れないというわけですね。」
「えぇ、そうです。魔法使いたちには矢面に立ってもらいましょう。ですが、我々も動いておかないと後で何か言われかねませんのでね。引き続き関西呪術協会へ対処を求めつつ、警察で対応をしましょう。」
連舫総理の言葉に従い仙石官房長官は麻帆良と連絡を取り戦力の支援を求め、引き続き関西呪術協会に対処を求めた。
京都の隣滋賀県の大津市では逢坂山トンネルを前に京入りを果たそうとする浅井家の武士団と真言宗や一部浄土真宗の僧兵がこれに合流し、これを食い止めようとする警察機動隊のにらみ合いが発生。
「許可のない集会は禁止されています!!ただちに解散しなさい!!」
大阪では都市部と言うこともあり目立った動きはなかったが、大阪府警が雑踏警備に所轄を動員し、大阪府の機動隊部隊を出動準備状態にした。諸寺社勢力も兵力を動かす支度はしていたが敷地外に出ることは無かった。三重、兵庫、福井も同様であった。
京都府庁本庁庁舎緊急対策室。
「なんて無茶苦茶な指示なんだ。避難指示もダメ、自衛隊は出動させるな。警察で対処しろだなんて。」
京都府知事は頭を抱えつつ嘆いた。そもそも京都は文化財が多数存在し、そんな場所での戦闘行為自体が御法度なのだ。
「そもそも、警察で対応できるのかよ。」
「近畿管区機動隊を総動員します。それと中部管区から援軍が来る予定です。」
京都府警察の本部長が知事に警察の対応を告げた。
「全く!無茶苦茶な政府も、役立たずの呪術師どもも、妖怪どもも迷惑極まりない!それに確か電力会社の事件で機動隊の銃対が返り討ちにあっただろ?本当に大丈夫なのか?」
「それに関しては、やくざの組長を市長にしてしまう選挙制度の穴と、電力会社に許可を出した当該の県庁にも問題があるのでは・・・。」
「っ・・・そ、それは・・・。」
知事は違法な電力会社絡みの事件を発端に発生した妖怪カミナリの事件のことを上げて府警本部長に追及した手痛い反論を受けて押し黙った。
「とにかく!対策を考えてくれ。」
天ヶ崎千草とフェイトの襲撃によって本山の巫女たちは瞬く間に石化され無力化された。
本山自体が関西呪術協会の京都の中心と言うこともあり従来敵襲は想定されていなかった為に武装巫女衆の儀礼的なものばかりで練度が低いことも襲撃がうまくいた要因である。
そして、油断していた長である近衛詠春も同様であった。
「連合の英雄も落ちたものだね、青山詠春」
「なっ!!?」
書き物をしているその背中に向かって放たれた石化魔法はレジストこそされたものの、確実に石にしていく。事態のまずさに、逃走の一手に手にした刀で壁を切り裂き、飛び退く。
二人は詠春に出来る事がなにもないなど分かったから見逃す。その程度の人間に関わるほど暇ではない。
「錆びついた刃に価値はないよ」
フェイトは詠春の逃げた方を見て、そう呟いた。
「これで、ええ。あとはお嬢様だけや」
「いや、まだだよ」
「うん? ああ、そうか。まだ一般人がおったんか。何をホンマ考えていたんやろうか。裏の本部に表の人間連れ込んで」
「さあ、知らないよ。」
「……さよか。」
詠春は固まる足を引きずりながら、人を探した。真っ先に助けを求めた詠春の忠臣は全員石化されており、助けにはならない。
それでも諦めずに歩き続けた詠春は運よく近くにいたネギと刹那に出会えた。
「二人とも、も、申し訳……ない。本山の結界を些か以上に過信していたようで。か、かつてのサウザンドマスターの盟友が情けない」
「長ッ!!」
「ネギ君、刹那君。気を付けなさい。白い髪の少年は別格だ。助けを呼びなさい。すまない。木乃香を、木乃香を」