大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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176 平成 京都修学旅行⑪

 

 

「いいか、兄貴。無理はダメだ! 俺たちは木乃香嬢ちゃんを救い出す。それ以上は救援が来るまで逃げればいい。その為には魔力がすっからかんになっちゃダメだ!難しいけど、姉貴に送る魔力も最低限にしてくれ!」

「うん、分かってるよカモ君」

 

 

 額から流れる汗。苦悶に歪む表情。莫大な魔力を精密に扱うという無茶をし続けなければならない負担。それらが重くのしかかり、ネギを押しつぶそうとする。

 

考えにふけていた。だからカモは気が付けなかった。

 

「しまっ! カモ君!」

 

カモはネギの胸元に抱きかかえられる。 

 

「兄貴!!」

「風よ!」

 

カモは、素早く肩に登り、周囲を警戒している。

 

「兄貴、なにが」

「後ろから黒い影のようなものが来て、杖を攻撃したんだ」

「狗神っちゅうんや!それは。」

 

杖を構え、周囲をうかがっていたネギは、すぐさま後ろを振り向く。そこには先ほどまでいなかった犬上小太郎が立っていた。

 

いやな空気を感じ取っていた。

 

小太郎を中心に、草木が外向きになぎ倒されている。黒い霧のような、濃密な魔力が彼を中心に渦巻いていた。濃度は非常に濃くネギでは到底真似できないほど、彼の周りは魔力が色濃く存在している。

 

「俺は、ネギ! お前と戦いたいんや! 同い年くらいで、同じくらいの強さ! 初めてやで!」

 

「た、戦いなんて意味ないよ・・・試合だったら、後で」

 

「ざけんなや! 俺にはわかるでネギ。お前は今やないと全力で戦わん。俺は全力のお前と戦りたいんや。今ここで、この場所で!」

 

 

 

 

 

びしぃっ、と、僕を指さす小太郎。

 

「うらぁああああ!!」

 

昼間よりもその動きは速かった。

小太郎は爪を振り上げてネギの喉を貫こうとする。

 

 ネギの目だけが、その手をとらえていた。だが、体が動かない。

 

 

 

「あっ」

 

 

 

 小太郎の爪は気で覆われており、鋭く固い剣のようになって威力を脹れあがらせる。ネギの魔力障壁を呆気なく切り裂こうとした。

 

「リモコン下駄!!髪の毛針!!」

 

ガン!下駄が小太郎の手にあたり、爪の軌道を逸らす。

その後に続く毛針を避けようと小太郎はネギから距離を取る。

 

「君!大丈夫だったかい?」

 

長髪で左目を隠し、特徴的な髪型と古めかしい学童服と縞模様のちゃんちゃんこを着た少年、ゲゲゲの鬼太郎がネギと小太郎の間に入る。

 

「話は彼女から大体聞いているよ!早く、捕まっている子たちを助けに行くんだ!!」

 

鬼太郎の後ろには長瀬楓が苦無を構えており、小太郎も天ヶ崎千草から預かったのであろう式神を展開させた。

 

「で、でも君や長瀬さんは!?」

「兄貴! 今、俺たちがここで足止めされたら、木乃香の嬢ちゃんはどうなるんだ! 俺たちを信頼してくれた姉さんも、木乃香の姉さんにも面目が立たねぇ!」

 

カモの言葉に肩を震わせてネギは叫ぶ。

 

「分かりました!ですが、約束ですよ、楓さん。絶対に怪我ひとつしないでください!先生として許しません!!それと、初めて会った君も負けないでください!!」

「あぁ!任せてくれ!!」

「うむ。ではがんばらねばならないでござろう」

 

懐から出した苦無を駆け寄ろうとした小太郎へ投げ付けて牽制し、楓は言う。

楓の牽制で生まれたその僅かな隙に、ネギはまた空を飛んでいく。鬼太郎はオカリナソードを形成して構える。

 

「そもそも、お前らなにもんや!!」

 

小太郎の言葉に二人は答える。

 

「ゲゲゲの鬼太郎。」

「甲賀中忍、長瀬楓。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さようならぇ」

 

「刹那さん!!」

 

 

 

 

 

金属音が響き渡った。

 

月詠の刀は刹那の肌を薄皮一枚切ったところで止まり、彼女は振り下ろされる刀から逃れるために後ろへ跳んだ。

 

 

 

 

 

「らしくないじゃないか、刹那」

 

 

 

 

 

 声がする。刹那には聞きなれた声が。

 

 

 

「た、龍宮!?」

 

「おお、なんだか知らないアルがとてもまずそうネ!」

 

「クーフェ! なんであんたがここに!?」

 

「なに、助っ人さ神楽坂」

 

 

 

 

 

 

 

木々の影から、褐色の肌をした二人の人物が現れた。一人は龍宮真名。裏の世界に住む銃を主力兵装とした傭兵。そしてもう一人は、古菲。中国からやってきた拳法家。表の世界の住民なれど、その実力は裏にも十分通用する。

 

 

 

龍宮は、月詠へ銃を向け目線を話さず、刹那へ語りかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「どうした刹那、こんなところで。お前ならば『お嬢様』とすでに駆けだしているのではないか?」

 

「そ、それは」

 

 

 

 

 

 ふっと笑い、龍宮は告げた。

 

 

 

「仕方がない。私が格安でこの場を受け持ってやろう。お前は早く近衛を助け出せ」

 

「だが! 月詠は!」

 

「言っただろう。私はこの場を受け持った。なに、傭兵なんぞ死にぞこないがなるものだ。今回も精々死にぞこなうだけだ。さっさと行け。今の集中しきれていないお前よりかは、生き残れるさ。」

 

 

 

「龍宮」

 

 

 

 

 

「それに今回は、外部からの援軍もあるんだ。」

 

 

 

龍宮の言葉で視線を動かすと、近くの木から飛び降りてきた紫髪のおかっぱ頭にワンピース姿の顔つきもスタイルもかなり大人っぽい少女が飛び降りてくる。龍宮同様に大人びて見える女学生なのだろうか。

 

 

 

「まぁ、ずいぶんと狂気に飲まれてるわね。あの子・・・。銃メインの貴女や強い一般人じゃあ、荷が重いかもね。だから、あたしがここに回されたわけか。ま、任せて頂戴。あの子の言った通り時間を稼いであげるわ。」

 

 

 

猫娘はシッシと手払いをする。彼女がただ者ではないことは尋常な長さではない長さまで伸びた手の鋭利な爪が物語っていた。

 

 

 

「お婆と爺もいるぞ。」

 

「まぁ、そういうことじゃ。ここは任せるんじゃ。」

 

 

 

白髪に和装、大きな目が特徴的な老婆と腹掛けと蓑を身に着け、赤ちゃんの様な童顔の爺がぬっと姿を現す。彼らもただ者でないことはすぐ理解できた。

 

 

 

刹那は僅かに見える龍宮の瞳を見て、夕凪を鞘に戻した。

 

 

 

 

 

「行きましょう、明日菜さん」

 

「え、で、でも大丈夫なの?」

 

「大丈夫です。龍宮ならば絶対に」

 

 

 

 

 

 

 

 

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