大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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177 平成 京都修学旅行⑫

祭儀場で千草はとうとうビオランテの力を召喚する最終段階へ入った。

 

 神楽が舞われ、祝詞が挙げられる。その光景は神秘的で、場を気とも魔力とも判別できない力であふれ、あたりへ浸透していく。

磐座が力強く眩い発光をし、徐々にそこから莫大な力が溢れ出す。光を発している場から、四方に向けすべてを吹き飛ばすかのような強風が吹き、水面を揺らす。

 

踊り狂う千草の顔には表情がない。いわゆるトランス状態へ入っている。こうなっては、周りがなにをしてももう儀式は止められない。

 

 舞が終わりに近づくにつれ、磐座の光が形を取り始める。幾度かその形を大きく崩したが、それでも形をゆっくりと形成していく。周囲の木々や草花を絡め巻き込み、一つの存在へと姿を変えていく。草花や木々を纏めて形成された太い蔦のいくつかは牙を生やしカチカチとそれを鳴らす。

そして、無理な召還をされた。神は伝承とは違う姿へと形を変えて表す。

美しく巨大な薔薇の花は無くより獣らしく禍々しい姿へ。口角にイノシシのような牙を生やしたワニ状の巨大な頭部が咆哮を上げた。

 

『キュオオオオオオオオ!!』

 

「ふふふ、喚び出しは成功やな。伝承よりも強そうな見た目やし、もう怖いものはありまへん!関西呪術協会の援軍も東の西洋魔術師も一網打尽やわ!あはははははは!」

 

千草は碧奧蘭蒂の召喚成功に狂喜し、一頻り哂うと自身の左右に控えていた。ぬらりひょんの部下の鬼たちに命じた。

 

「赤悪鬼さんも黒悪鬼さんも日和見するのは止めにしてあの目障りなガキどもを叩き潰してくれなはれ。」

 

「お、おう。」

「わ、わかった。」

 

あまりにも強大な存在に呆けていた二人の鬼は金棒を持って、雑多な取り巻き妖怪たちを率いて石段を下り祭壇の向こうで戦っている他の者たちの加勢へ向かった。

 

 

 

 

 

京都の茶屋の障子戸を開け、関西呪術協会を臨むその視界には巨大でそして禍々しい姿となった木々草花の獣、守護華獣・碧奧蘭蒂の姿が見えた。

 

「憐れですね。かつてこの国の礎となり散った聖なる存在が、人間の傲慢に利用され醜く姿を変えられて使役されようとは・・・。人は昔より進歩した。それと同時に高慢に、自己中心的になり、斯様にも心を腐らせてしまうものなのですねぇ。さて、芸者遊びはお開きとしましょう。」

 

不完全な碧奧蘭蒂の表皮や一部が崩れ飛んできて付近の家屋に被害を出している。

ぬらりひょんは手をパンパンと鳴らすと芸者たちに立ち去るように促し、彼女たちはそそくさと茶屋を後にする。この騒ぎだ、芸者たちも店じまいだろう。

窓の外から声を掛けられ、ぬらりひょんはその声に応じる。

 

「ぬらりひょん様ぁ!お迎えに上がりました。」

「待っていましたよ。朱の盆。」

 

ぬらりひょんは温和そうな表情を浮かべ同席者の鳩八馬に挨拶をする。

 

「鳩八馬くん、今日はどうもありがとうございました。ここは危ないようです。そろそろ帰った方が良い。」

「そ、そうはいいますが・・・。」

 

ぬらりひょんはすたすたと車に乗り込む。

 

「では、また。・・・・またがあればですが・・・。」

「え?」

 

ぬらりひょんの言葉に言葉に詰まる鳩八馬。

発進する車を見送る鳩八馬は自身の秘書に迎えに来させようと携帯に手を伸ばそうとした。

 

「あ。」

 

鳩八馬の眼前には巨大植物の一部が落下し、押しつぶした。

 

 

車内でぬらりひょんは一言。

 

「与党幹事長を死なせてしまうとは関西呪術協会の管理不行き届きは致命的です。これで関西呪術協会の影響力は落ち、後継も関西ほどの力は持ちますまい。少々で異様の魔法使いどもの影響が強まるかもしれませんが、手は打っています。計画通りとは行かないまでも良い方向に向かっていますな。」

 

碧奧蘭蒂召喚の儀式の余波で周辺家屋に被害が出ており、少ないながらも人的被害が出始めている消防のサイレン音がようやっと聞こえ始める。

 

 

「しかし、ゲゲゲの鬼太郎まで出てきたか。あ奴らの企み、ここまでかもしれんの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊毛ちゃんちゃんこ!!」

 

鬼太郎のちゃんちゃんこが獣化けした小太郎を雁字搦めに縛る。

 

「っくっそー!!」

 

「ここまでだ。どうしてこんなことをしたんっ!?」

「っ!?」

 

 

 

『キュオオオオオオオオ!!』

 

祭壇の方から巨大な怪物が姿を現した。

 

「千草の姉ちゃんが蘇らしたんやな。あの、碧奧蘭蒂とか言う神様を・・・。」

 

 

「び、碧奧蘭蒂じゃと?伝承とは姿かたちが違うようじゃが・・・?様子がおかしい・・・皆、気を付けるんじゃ!」

 

鬼太郎の髪の中から目玉おやじが顔を出す。

 

「危ない!」

 

むやみやたらに振り回された蔓が振り下ろされるが、間一髪のところで楓の放った大型手裏剣で逸らされ自分たちの隣にあった鳥居が破壊された。

 

「これは、山頂の方で何かあったのは間違いなさそうでござるな!」

「行こう!!」

 

鬼太郎と楓は小太郎を放置して石畳を駆け出す。

 

 

 

 

 

 

一方で先んじて祭壇に向かったネギであったが、神楽坂明日菜の援軍もあったが白髪の少年フェイト・アーウェルンクスによって足止めされ天ヶ崎千草の碧奧蘭蒂召喚を許してしまうのであった。

 

「君たちは善戦した。だけど、体力も魔力も限界・・・ここまでだ。」

 

さらに、天ヶ崎千草に送り出された赤悪鬼と黒悪鬼までもが現れて絶体絶命のピンチに陥ってしまうのでした。

 

「おうおう!あの姉ちゃんが行って来いって言ったが、残ってるのはボロボロのガキと小娘じゃねぇか!」

「完全に出遅れちまったな。」

 

ニヤリと加虐的な笑いを見せる赤悪鬼と黒悪鬼。

 

「今回の俺たちはお客様の様なもんだ。ガキどもを嬲り殺しにして憂さ晴らしといくかぁ!」

「悪かねぇな!ガハハハッ!!」

 

 

「くぅ・・・明日菜さん・・・逃げて・・・ください。」

「置いてけないわよ!!でも、すごいピンチよね。これは・・・」

 

 

倒れこんだネギを守るようにハリセンを構える明日菜。ネギも立ち上がって杖を構えようとする。

 

「僕が彼らを石化させて終わりにしようと思ったのだけど・・・。」

 

「いいじゃねぇか!見守りばっかで少しばかり血が見たいって思っちまったんだよ。」

「俺ら、悪鬼は人間を嬲り殺しにするのが大好きでな。」

 

フェイトは赤悪鬼と黒悪鬼に不服そうに言うが、彼らは軽く応じながらフェイトの前に出る。

 

「・・・・・・勝手にすればいい。」

 

そう言って、フェイトは一歩下がる。

 

「嬲り殺しだぁ!」

「苦しめ!」

 

 

 

 

 

「それは、やめて頂きます!」

「悪鬼封滅法 破!!」「「っぐぎゃああああああ!?!?!?!?」」

 

「おぉ、ずいぶん派手にやったな!」

 

ネギたちとフェイトたちの間に無数の弾幕が降り注ぎ、立ち込めた煙の中から姿を表したのは大樹と聖白蓮、そしてエヴァンジェリンだった。

 

 

 

魔人経巻を構えた聖白蓮。

八苦を滅した聖人あり、覚者。

法力僧としてはもはや世界最高の実力者である彼女の一撃を受けた赤悪鬼と黒悪鬼は声にならない悲鳴を上げながら、山門の向こう側に弾き飛ばされぶつかった木々や障害物に赤い何かが付着していた。

 

「殺生は本意ではないのですが、久し振りなので力加減を間違えてしまいましたが、あれを相手にするのなら加減は不要ですね。」

 

そう言って白蓮は復活した碧奧蘭蒂を見据える。

 

「碧奧蘭蒂が、苦しんでいます。救ってやらなくてはなりません。出来るでしょうか。」

「火力的に自信はありませんが、やってみようかと。」

 

格好をつけておいて大樹に本音を問われると少々気弱発言。

しかし、白蓮は「ですが」と区切って大樹に答えた。

 

「火力に関しては彼女に任せればいいでしょう。」

 

そう言って、彼女たちの真上で高笑いを上げているエヴァンジェリンに視線を向け、大樹に戻す。

 

「はははははは!!雑魚はそっちでやってくれ!!補助は任せたぞ!」

 

エヴァンジェリンの言いように「っふ」っと笑った大樹は白蓮の方に話しかける。

 

「えぇ・・・任されましたよっと。あ、聖はあの白髪の少年を相手してください。」

「任されました。」

「やれやれ、私自身は荒事はそう得意ではないんですがね。」

 

 

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