大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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178 平成 京都修学旅行⑬

 

「これだけの式神と魑魅魍魎を相手にするのは酷と言うものじぇありまへんか?あきらめぇ。」

 

視線の向こうでは不利を察した天ヶ崎千草が待てるすべての式神と、ぬらりひょんから借りた雑兵妖怪たちを大樹たちに差し向ける。

 

一方で関西呪術協会本山外環を包囲していた妖狐たちが結界術を展開し、本山を封鎖。周辺への被害を抑え込む。

 

「大樹様、結界を展開。周辺への被害の心配はありません。」

「ご苦労です白蔵主。そのまま警戒を続けなさい。」

「っは。」

 

大樹はそのまま正面のフェイトとその奥の天ヶ崎千草に向かい合う。

 

精鋭と思われる妖狐数人が大樹の前に並び、呪文を唱えると上空にちょっとした打ち上げ花火の様な光が上がるのを合図に、その上空から錫杖を携えた天狗たちが姿を現す。

 

「ネギくんに他の子たちも、雑魚とあの大きい子は任せてください。・・・天狗衆!!総攻撃です!!」

 

天ヶ崎千草の手勢はかなりの数であったが大樹は上げていた腕を振り下ろす。

ほら貝の音が鳴り鳴り響き、それを合図に天狗たちが天ヶ崎千草の手勢を攻めていく。まさに乱戦であった。状況は飲み込み切れていないが、チャンスだと理解した刹那は戦いの隙を縫って木乃香を助け出すのだった。

 

「さてさて、エヴァ。魔力は渡すから、お願いね。あれは私の功臣です。なるべく苦しまないようにお願いします。」

「・・・ずいぶんと大変な注文だな。まぁ、考慮する。」

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!!ト・シュンボライオン  ディアーコネートー・モイ・ヘー クリュスタリネー・バシレイア!!(契約に従い我に従え 氷の女王 とこしえの闇、永遠の氷河!)」

 

 パキパキと音をたてて、世界が凍る。碧奧蘭蒂とその周囲が凍りつく。さすがは稀代の魔法使いに、上級の魔法。その威力は凄まじい。

植物は寒さに弱く、碧奧蘭蒂もその通例に外れることは無かった。

 

「キュオオオォン・・・。」

 

碧奧蘭蒂は弱弱しく泣いたのを最期に崩れ落ち動かなくなった。

 

「・・・・・・。」

 

大樹はそれを黙って看取ったのでした。

その背中は悲哀を感じさせるものであった。

 

刹那に助けられた木乃香はネギと仮契約を結び、その治癒術の才能を開花させるのでした。

パクティーオの効果を確認した木乃香に大樹は声をかける。

 

「さてと・・・木乃香さん。貴女のお父さんやここの巫女さんたちの石化を解かないといけないので協力してくださいますか。」

「え、あ!?はい!!大樹先生!!」

 

大樹は、余計なお世話と思いながらも刹那にも声をかける。

 

「白とは古より神の化身あるいは神の使いの動物を象徴する神聖な色。神に捧げられる幣帛や幡も白色です。白を忌み嫌う文化は異国から入ってきたもの、確かにその色は目立ちますが悪い意味ではないのです。先ほど木乃香さんが言ったように天使・・・天の使いの様な清らかで神聖なものなのです。これからは卑下するのではなく誇りと思って精進してください。」

「は、はい!」

 

大樹は刹那が自身の出自を気にかけていたことも知っており、半妖や混血に関して昔から何かしらの差別があったことも知っていた。その上に自身も生粋の神族ではなく妖精が転じて神となった存在。さらに言えばその過程で妖怪化もしており自身も混血であるからこそ、彼女の苦悩は少しは察せるものがあった。ただ自分は立場上彼女ほどの問題は抱えることは無かったのだが・・・。

 

白蔵主が大樹に「そろそろ…」と耳打ちすると「わかりました」と応じてその場を離れようとするが、エヴァンジェリンがチャチャゼロに何か指示を出しているのに気が付く。

 

「エヴァ?何かするのですか?」

「ん?あぁ、逃げ出した女術士を捕まえておこうかと思ってな。」

 

大樹は視線を宙に彷徨わせてから冷淡な表情を浮かべてエヴァに伝える。

 

「不要です。あれの扱いは万年竹に任せました。」

 

大樹の言葉に何かを察したエヴァは「そうか。」と応じてチャチャゼロに命令取り消しの旨を伝えるのであった。

 

 

 

 

「っひ、ひぃい。な、なんやあれは!?」

 

竹林の中を逃げ惑う天ヶ崎千草の後を竹人間と呼ばれる竹の妖怪たちが追いかけてくる。

 

「うあ!?」

 

竹の根が彼女の足に巻き付き転ばせる。

 

「た、たすけて!?」

 

『貴様は我らの神の眠りを妨げ、愚弄した。人間如きが神を愚弄した。人間の小さき都合で神を弄んだ罪。その命をもって償え!!』

 

何本もの竹が彼女の体を貫く。

 

「ぐぎゃああああああ!!!」

 

竹林の中で彼女の恐怖の色を帯びた悲鳴が響いた。

彼女の亡骸は翌日、関西呪術協会の竹林内で発見され内々に処理された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結構な被害を出した天ヶ崎千草の企みを潰し、ぬらりひょんの介入を退けた。大樹は魔法世界の不穏分子の匂いを感じ取った。

 

畿内京都と言う古き時代の権威の影響が他の地域よりも有効だったこの地域の混乱を鎮めることは、大樹の名を使うことで比較的容易に行えた。

 

大樹自身、今回の件では自身の権能を十全に発揮し事態の抑え込みを図った。

 

「近衛詠春、此度の一件。関西呪術協会だけの責任とは言いませんが、関西呪術協会の責任は非常に重い。」

 

関西呪術協会の本山ではその日の深夜には協会の重鎮たちや周辺組織や機関の代表や代行が集められこの度の一件の裁定が下されようとしていた。対象都道府県の知事やその代理も出席しているが今回はオブザーバーだ。

 

「重々承知しています。」

 

その責を問われた詠春の表情は重く暗い。

他の関西呪術協会の支部長たちも状況を受け入れて沈んでいる者もそうではなく反抗的な感情を持っている者も総じて暗いものであった。

 

「関西で意見が割れている現状も宜しくない。関東と仲違いをしろとは言いませんが距離感を保つべきです。近衛詠春、貴方は過去の経歴に現在の職歴を見ても貴方の能力では関西呪術協会の長として十全に手腕を発揮できていない。陰陽寮時代のそれを引き継いでいるとは思えない。近衛詠春・・・、貴方はこの役職に相応しくない。私、大樹野椎水御神は宮内庁引いては天皇陛下より託されている権限を持って近衛詠春。貴方の長の役職を罷免とします。」

 

協会の関東との融和を臨んでいない派閥の支部長たちが一瞬顔を綻ばせたが、次の言葉で関西呪術協会の所属の者たちは表情を引きつらせる。

 

「関西呪術協会の長の後任は娘、木乃香とする。」

 

詠春含め、関西呪術協会の者たちは意外な後任に驚きを隠せていない。さらに続く言葉で彼らの混乱は頂点となる。

 

「また、関西呪術協会は日本の裏社会の治安組織として大きな問題を露呈するに至り、現状関西呪術協会では治安の維持は難しいと判断するに至り、関西呪術協会が保有している権限の大幅な削減を行うものとする。以降は神社本庁並びに仏教各宗派の本山の合同組織である神仏護国会議を組織し、これが国体護持を担うものとする。なお、神仏護国会議の長はそこの聖白蓮とします。」

 

大樹は関西呪術協会の事実上の解体を宣言した。

呪術協会側から反対意見が多く出たが大樹の

 

「あなたたちは裏の関係で起きたさくら号事件や三種の神器事件、そして今回の事件も貴方方は未然に防げるはずのものを内ゲバで手を打てなかった。これを不適格として何が問題か!」

 

大樹の一喝で協会の多くの人間は押し黙る。

しかし、詠春はなおも追い縋る。

 

「こ、木乃香はこちら側に関わらせたくありません。」

「五摂家の近衛家に生まれた者の宿命です。諦めなさい・・・。どうしても裏に関わらせたくないのなら近衛も青山も名乗らずに生きるほかないでしょう。それに、勢いを失い下部組織となった関西呪術協会のお飾り・・・座布団の上に座っていればいい名ばかり職。これでも貴方の気持ちも汲んでいるつもりです。」

 

「ですが、義父さっ・・・いえ、近衛近右衛門氏はどうなのです。」

なおも追い縋る彼にいささかの煩わしさを感じ、冷たく突き放す。

 

「関西呪術協会も関東魔法協会も新設の神仏護国会議も宮内庁所管の組織であり、名目上は私や陛下の下にある。たかが、下部組織の長が上位組織のそれも陛下や私の意向もある決定を私的な理由で反故にしようとは何事か!!」

 

関西呪術協会は事実上解体され詠春も更迭される。

西日本に大樹支持の大勢力が誕生し、これを機に大樹の権威は回復の兆しを見せる。

これは、ぬらりひょんや魔法世界勢力、そして現政権に衝撃をあたえた。

 

 

 

 

関西呪術協会で一泊し、ネギたちが目を覚ました翌朝には裁定は下った。

詠春の長としての最期の務めは、ネギたちを関西呪術協会管理下のサウザントマスターの書庫に案内することだった。以後は一剣士として活動することとなった。

 

しかし、エヴァ・・・昨日の夜から未明までの会議にしゃべりことしなかったが参加してたのに、ネギ君たちを連れて京都観光に行くなんて元気よね。

 

まぁ、私も修学旅行4日目は完全に別行動だ。新田先生たちへの建前は、今回の修学旅行生が起こした問題行動について関係各所への謝罪と根回しと言う建前で、野党第一党自由国民党や野党第二党華族会の有力者たちとの接触するのでした。

 

翌日にはネギくん他の生徒の皆は麻帆良に戻り普段の学生生活に戻っていたのですが、私は京都に残り人間の協力者や白蔵主や赤嵐坊ら西日本の有力妖怪たちと会合を行い今後についての対策を話し合って1週間ほど経過してしまうのでした。

 

 

 

 




修学旅行終了〰️
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