大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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180 平成 河童の労働闘争前編

 

 

「ねずみ男、もう色々手遅れでしょう。鬼太郎に怒られたくないから私に相談して手を打つって言うのは失敗してるでしょうに。」

 

リモコンで河童の大暴動が映し出されているテレビ画面を指し示す。

 

「それに、貴方・・・。そそのかした河童は太郎丸だけじゃないし、送り込んだ企業も例の企業だけじゃなさそうね。正直に言ってみなさい。まぁ、板前姿の河童を見ればどこか想像つくけど・・・。」

 

ねずみ男は伏し目がちにかなり小さい声で答える。

 

「クワッパ寿司です。」

「あーやっぱり。最近の人間は金銭欲が馬鹿みたいに高いから困りものです。」

 

ニュース映像が切り替わり、クワッパ寿司の正社員が半殺しにされて看板の回転部分につるされている映像とともに、ニュースでは「非常に凶暴ですので屋内に避難してください!!」

 

「しかし、これだけ大事なら鬼太郎君も動いていると思ったのですが・・・。」

 

机においてある固定電話が鳴る。電話の相手が表示される。

 

アオボウズ

 

彼にシニア携帯を持たせておいたのは正解でした。

スマホはきっと操作できないでしょうし、ちょうど良かった。

 

『大樹様!大変だ!!河童たちが!!』

「知ってます。ニュースは見ました。」

 

『それだけじゃねぇ!鬼太郎がやられちまった!!』

「なんですって!?いくら何でも数が多いからと言って鬼太郎君が後れを取るなんて・・・。」

 

「そいつはおかしいぜ!俺が紹介した河童の数はたかが知れてるぜ!鬼太郎の奴を倒せるなんておかしいぜ!」

 

スピーカーにしていたので私たちの会話にねずみ男が割り込んでくる。

 

『ねずみ男。お前がカモにしてた人間からつまみ出された後で、あの社長、関連企業や知り合いに河童雇用を教えたんだよ!だから、捕らわれた河童が多いんだよ!』

「こいつは拙いぜ!大樹様よ!すぐに行かねえとかなりヤバいぞ!!人間は河童社会の事を知らねえ!!これだけの河童を奴隷みたいにしたのが広がったら・・・。」

 

そう、ねずみ男の言う通り河童は社会を形成している。

個人レベルなら割と簡単に収められるが、今回の度を越えた行為は河童社会への攻撃とみなされるのだ。

 

「蒼坊主、私もすぐに向かいます。ねずみ男!貴方の撒いた種です!!付き合いなさい!!ぐわごぜ・・・、西の白蔵主と護国会議に西の抑えは任せると伝えなさい。」

 

それまで、影に徹して控えていた ぐわごぜ が申し訳なさそうに応じる。

 

「おそらく、西の河童の大将たちはすでに関東入りしていると思われます。決起を抑えることは可能ですが大将たちとともに精鋭が先遣隊として関東に入っているものと思われますが・・・。」

「仕方ないか・・・。それで構いません。」

 

私たちは図書館島の私室をでるのでした。

とは言え、私は戦闘は苦手なので、まずはエヴァンジェリンの別荘に行きます。

 

 

 

雑役の妖精たちとぐわごぜ、それにねずみ男を引き連れて早足でエヴァンジェリンの住むログハウスに向かいます。私の部下たちをぞろぞろと魔法世界の出張所である麻帆良で引き連れて出歩くのはあまりいいことではないのですが、ここの長である近衛近右衛門はこちらとは協力関係にあり友好的な派閥なのであまり気にすることもありません。生粋の至上主義者は麻帆良からは弾き出されており、外国や戦闘地域の最前線送りになっているので問題ないのです。

 

 

しかし、エヴァンジェリンのログハウスの敷地はかなり広いのです。

直接、ログハウスに向かっても誰もいなかったので敷地の林をかき分けて探します。

彼女の趣味なのか壊れかけの煉瓦壁も多く、めんどくさい。

 

「あ、いました!」

 

うち一人の妖精が示した方向に視線を向けますと、ちょうど修業中だったようです。

エヴァに茶々丸、チャチャゼロ。それとネギくんと彼と契約した神楽坂さんと近衛さん、桜咲さん、宮崎さん。それに古菲さんと綾瀬さんがいますね。

 

あれは対物魔法障壁ですね。訓練中のようですがもうほとんど実戦で通用しそうですね。

ぞろぞろと引き連れた部下たちにちょっと驚いた反応をする生徒たちはひとまず置いておいて、エヴァに事と次第を伝えます。

 

かくかくしかじか。

まるまるうまうまっと・・・。

 

エヴァに一緒に来るように伝えると、エヴァは少々思案します。

 

「河童か・・・。後れを取っても死にはしないだろうし・・・ちょうどいいか。よし!お前たち!実践演習だ!!一緒に行くぞ!!」

 

エヴァの一声でその場の全員が一緒に行くことに、ここ数日修業漬けでニュースなんて見ていない生徒たちには道中でラジオをつけて状況を教え、河童たちの暴れる東京都心へ向かうのでした。

 

 

東京都台東区松ヶ谷曹源寺、かっぱ寺の別名を持つこの寺に河童の名士たちが集まっていた。九州のガラッパ、四国のシバテン、関東の禰々子(ネネコ)、東北のメドチ、そして河童の頭領水虎が集まっていた。

 

「泣きながら仕事をさせられている。給料は1日1本のキュウリだけ。正社員は、河童たちが逃げたりサボったりしないよういつも監視している。恐怖心を植え付けるため、時々無意味に電気ショックを与えたりする。」

 

河童たちの訴状を読み上げるシバテンは読み終えると同時に訴状を威ぎりつぶす。

怒りに震えているのだ。

 

「河童たちの暴動も当然だ。彼らの為にも我々が立ち上がり、人間たちに痛撃を与えるべし。」

「そうさね。関東河童の多くはすでに暴動に加わってる。後には引けないよ!」

ガラッパと禰々子がそれに続く。

 

「しかし、人間たちも手強いぞ。軍隊が出てくるかもしれん・・・。」

メドチが慎重論を述べる。

 

かっぱの四天王である4人の視線を受け河童の頭領水虎が口を開く。

 

「関東河童を止めるつもりはない。他地方の決起も致し方なし。戦支度を始めよ。」

 

 

 

 

合羽橋の交差点で警察機動隊と河童たちが激突する。

 

『河童と機動隊が合羽橋で睨みあいを続けています!!』

 

ジェラルミン盾を並べて警棒で打ち鳴らし威嚇する機動隊。

相対する河童たちも口からジェット水流を放ち機動隊の隊列を崩す。

上空をマスコミのヘリが飛び報道を続けている。

 

『あ!今、機動隊が突撃していきます!!』

 

金属製で伸縮式の特殊警棒、もしくは警杖を振り上げた機動隊員が河童たちに突撃していく。

金属製の棒が河童に振り上げられ皿を割る。河童たちもやられるばかりでは無く機動隊員の尻子玉を抜き無力化し、一進一退の激しい攻防が繰り広げられていた。

 

同様の光景が東京の各所で見られたのであった。

 

 

蒼坊主と合流した私たちは、その足で鬼太郎たちと合流。後れを取った鬼太郎だったが妖怪いそがしの協力を得て腑抜け状態を脱している様だ。

 

「河童の首魁は曹源寺にいるはず。そこを抑えるしかないじゃろう。」

「そうだな。それが良いだろう。行くぞお前ら・・・。」

 

私を除いた年長者である目玉おやじとエヴァンジェリンの相談で曹源寺へ向かうことに・・・。

 

道中では河童と機動隊や警官隊が激しく争っていた。

体と体や警棒がぶつかり合う嫌な音や怒声が常に聞こえていた。

河童によって占拠された場所も出始めており、警察側の場所では救急車や警察車両が行き来していた。

 

私は電話に集中するため、茶々丸さんにお姫様抱っこで運んでもらっています。

 

「銃火器の使用は絶対ダメです。河童たちが抜いてるのが尻子玉だけで水流もウォーターカッターじゃないのは、彼らとて本格的に私たちと争う気がないからです!!」

 

私が電話をかけているのは国家公安院長で私の息がかかっている数少ない人物であった。

 

「彼らは恐らく、一部の人間による搾取への反抗です。数十年前の少々過激な労働闘争の様なものです。ある種の春闘ですから彼らとは条件によっては話し合いで解決ができます!だから、銃器の使用はご法度ですよ!!いいですね!!内閣は妖怪をかなり敵視していますが、軽々しく連中の口車に乗ってなりませんよ!・・・・・・そ、それは」

 

 

公安院長からの情報で今日中に自体が収束しない場合は射殺許可が下りるだろうとの事だった。人間側が一線を越えるなら河童たちだって越えるだろう。

大樹の裏工作によって戦力の立て直しのために一時後退するのだった。

だが、それは銃火器戦闘への移行の準備でもあった。車両の中にあったH&K MP5機関拳銃を取り出し装備する機動隊員。大型防弾装甲車両の銃器対策警備車から特殊急襲部隊、通称SATの隊員が降車し整列する。一般の警官たちも拳銃の弾丸を確認する者たちがちらほら現れていた。

 

 

 

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