大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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181 平成 河童の労働闘争後編

 

 

曹源寺に到着した一行であったが、河童たちは人間たちと戦う意思を明確にし始めていた。

 

「「「「「戦争だ!戦争だ!戦争だ!」」」」」

 

河童たちは皿をぺちぺちと叩き興奮気味に叫んだ。

 

「人間たちと本気で戦争なんてしたら、それこそとんでもない犠牲が出てしまいます!馬鹿な真似は止して河童の隠れ里に戻るのです。」

 

だが河童たちは、納得せずさらに大きな声で抗議する。

 

「「「「「戦うぞ!!戦うぞ!!戦うぞ!!」」」」」

 

「本当に死んでしまいますよ!よしなさい!」

「「「「「戦争だ!戦争だ!戦争だ!」」」」」

 

 

大樹の声が搔き消されかけたその時。

 

「我らを止めたいのならば!!その聖なる土俵で我らに勝って見せよ!!」

 

長老ある水虎河童の一声で河童の四天王と土俵上で戦うことになるのでした。

 

「偶数じゃ引き分けになるだろうが!3回試合だろう!?」

 

4人試合にしようとしてエヴァに突っ込みを入れられる一幕はあったが何はともあれ、第一試合。河童の行事が声を上げる。

 

「東~!ガラッパ~!西~ねずみ男~!見合って見合ってはっけよい!のこった!!」

 

「あ痛ぁ!?ぎゃああ!!ぎょえええ!?うひぃ!?」

 

第一試合のねずみ男はボロ負けだった。

正直なところ、今回の事件の発端の責任を取ってボコボコにされて来いと言ったところであった。これで彼のことは許してあげましょう。

 

 

第二試合。

 

「東~メドチ~!西~ゲゲゲの鬼太郎~!見合って見合ってはっけよい!のこった!!」」

結果から言って鬼太郎の勝ちだ。さすが界隈で有名な鬼太郎君です。

ここは手堅く勝ってくれました。

ただ、今回は尻子玉抜かれて腑抜け状態だったのですが妖怪バリバリに憑りついてもらってのドーピング状態、後日の反動がきつそうです。今度お見舞いにでも行きますか。

 

 

さて、最期の鳥です。

ここはエヴァの推薦でネギくんが戦ってくれるようです。正直、少し心配でしたが「私の弟子だぞ?この程度で負けるなら私が血を吸い尽くしてやるさ。」などと言って自信ありげでしたのでここは信じて送り出しましょう。がんばれネギくん。

彼はエヴァの弟子ですが、古菲さんの弟子でもあり功夫を修めていますので大丈夫とは思いますが・・・。

対する河童側も外観は身長1メートルほどの小さな子供のようで、全身に毛深い体毛が生えているシバテンと言う河童です。見た目的にはつり合いも取れているのですが・・・。

 

「東~シバテン~!西~ネギ・スプリングフィールド~!見合って見合ってはっけよい!のこった!!」

 

シバテンは全身に毛深い体毛が生えている身長1メートルほどの小さな子供のような外観で、背丈的にネギくんの対戦相手には適当な人選と言えるでしょう。

しかし、その見た目に騙されると痛い目を見ますよ。何せ大人を上回る力は勿論、一晩中相撲を取っても息切れ一つ起こさないスタミナは長期戦になればなるほどネギ君には不利となりそうです。

とは言え、ネギくんだって負けてはいません。単純な戦闘センスはエヴァにスパルタ的に磨かれていますし、古菲さんに中国拳法を習っていますので押されてはいますが、シバテンの張り手をすべていなしています。普通の相手ならネギくんが敵を疲れさせて逆転勝ちと言う流れなのですが、今回の相手は破格のスタミナの持ち主です。どう戦うのか・・・見ものですね。

 

お、ここでシバテンがさらに攻め手を強めます。

 

「くらえ!へのかっぱ!!」

 

屁と共に張り手連打を放つと言うシバテンの必殺技です。

キュウリ臭い。

 

ネギくんはシバテンの張り手の腕を思いっきり引っ張りました。

 

「うおっとっとっとっと!?うわっ!?」

 

確かあれは、八極拳の六大開「頂」と言う技で本来なら、ここから別に技に繋げるらしいのですが今回は土俵上の戦い。土俵から相手を落とすのが勝ちですし、相手の力を受け流す技と言うのは力比べ主流の妖怪の戦いには珍しいですが卑怯とかではないので、シバテンも素直に負けを認めました。

 

「お前、人間のくせに強ぇえな!!」

「貴方こそ、すごい力です!!」

 

シバテンに声をかけられたネギくんはお互いを称え合います。男の友情的なものでしょうか?美しいですね。

 

 

と言うわけで、河童の大暴動は河童の長たちの連名で収束宣言が行われ解体となりました。

ブラック企業の経営者がつるし上げられて、看板に括り付けられたり、ゴミ箱に放り込まれたりしていましたがいい薬でしょう。どうせ叩けば埃が出てくるような輩です。

 

さて、ネギくんたちを連れて帰りましょうか。

 

「あ!そうだ!良いこと思いつきました!ネギくんたち、たまに鬼太郎君のお手伝いをしなさい!エヴァは頻繁には麻帆良外には出れせんし、実戦訓練も兼ねて鬼太郎君の負担も減る!名案ですよね!」

 

「危険ですよ?妖怪たちは河童のように手心を加えてくれるような奴ばかりじゃない。」

 

大樹はとんとん拍子に話を続けようとしたが鬼太郎は乗り気ではない。

最近の鬼太郎くんは人とのなれ合いは昔ほど好まなくなっている。

この返答は予測済み、さすがの鬼太郎君も私相手だと強くは出れない。

 

「ですが、この前だって結構な戦力になったでしょ?今回も・・・ねぇ?」

「それに、こいつらは私の弟子だ。それでも不安か?それにこいつのことだ。悪いようになならないだろう。いや、させないだろう?」

 

おや、エヴァが援護射撃してくれるのは予想外でしたが、助かりますよ。

重要なところを私に投げてくるのはちょっとでしたが・・・。

 

「う~む・・・そうじゃのぉ・・・。」

 

目玉おやじさんは、かなり悩んでいるけどギリギリ賛成してくれそう・・・。

私はさらに畳みかけます。

 

「それに、鬼太郎君は以前もシーサーを弟子にしてたじゃない?」

「いや、それはシーサーが勝手に付いて来ただけで僕が何か教えたわけじゃないですよ。」

 

鬼太郎君も傾いてますね。ネギくんも目をキラキラさせたりして鬼太郎君を見ていましたし、そう言ったところはシーサーに似てるところもある。なんだかんだ言っても鬼太郎君、面倒見がいいしゲゲゲの森の妖怪たちも良い妖怪ばかりで信用できる。ねずみ男はまぁ・・・えっと・・・いい奴だよ。蒼坊主に頼むという手もあるが、送り出したら生徒たちが卒業できなくなりそう・・・迷子で・・・。

 

とにかく、鬼太郎君に先輩県兼友人ポジションをして欲しいと言うところがある。

エヴァも自由に麻帆良を出れないので、今回のは学園長が判子推し続けると言う京都同様の対応中だ。彼の腕を助けるためにもウンと言ってほしいところなんですよね。

 

「それに、貴方人間嫌いってわけじゃないでしょ?見上げ入道がドーム占拠したときに助けた子と仲良くしてるらしいじゃない?」

。」

 

鬼太郎の仲間たちがちょっとニヤッとしてる。

 

「まぁ・・・いいんじゃないの?」

「わしも構わんよ?」

「じゃな。」

「おいどんも別に構わんとよ~。可愛い女の子たちも大勢いるし眼福と~。」

「ぬりかべ~(賛成している)。」

 

 

仲間たち全員の後押しを受けて鬼太郎も何とか納得してくれる。

 

「危ないと思ったらすぐ逃げるんだ。君たち人間は妖怪とは違う・・・そこだけは気を付けてくれ。」

 

「あと、概ねわしも構わないと思うのじゃが・・・あの子たちは元気すぎじゃの。エヴァンジェリン殿や大樹様が必ず引率してくだされ。」

「え、あ?はうぁ!?」

 

目玉おやじさんが困った顔を向けてきたので視線を動かすと河童たちとキャッキャワイワイしている生徒たち。

 

「河童のお皿って乾くと大変なんでしょ?」

「甲羅ってカメと同じなの?」

「わぁ、口が嘴になっとる。」

 

あー別の問題がありますね。まぁ、そこはなんとかしますよ

 

「皆さーん!?あんまり、河童さんをいじりすぎないでくださーい!」

「ネギ君も見て見なよ?」

「え、うわ。」

 

ネギくん、先生でしょうが・・・。

 

「子供が元気なのは良い事じゃよ。あはは。」

 

目玉おやじが笑う。

 

「本当に皆さん!!ちょっと、やめなさい!!河童さんたちも困ってますよ!!エヴァも手伝ってください!!」「断る、そう言うのはお前の仕事だ。先生?」「ぐっ」

 

 

 

 

 

 

結局我々は罷りなりにも関わっていた人間社会から追い出されてしまった。

河川下流中流域にいた河童たちも、上流の山林地域への移住を選択する者たちが増えていった。

同胞たちも過激に反応したことは悪かったと思う。だが、もとを正せば人間たちのやり方に問題があったのだ。この件に関わった人間たちも大なり小なり裁かれ失うものがあった。しかし、失ったものは我々の方が遥かに多い。

 

河童たちや山童たちが人気のない山道を登っていく。

 

大樹様の計らいもあって、今のこの国としては丸く収まったと思う。今のこの国としては・・・だ。昔は良かった。人間も妖怪も互いに尊重し、互いを侵さないように気を使い合っていた。大樹様の顔を立てるためにも、今回は矛を収めた。

 

途中で山道を外れ獣道、それ以下の道を藪をかき分けて進む。河童の長老水虎河童が先頭を進む。付き従う者たちも各河川や山林領域のリーダー格ばかりだ。

 

地方だって山林開発で住処を奪われる一方だ。観光と言う名で水源を汚されることもあった。大樹様を疑っているわけじゃない。そう言うわけじゃないのだ。

 

彼らは洞窟の前で止まる。大きな岩で蓋をされている。

 

住処は奪われ続けている。今回は尊厳を奪われかけた。次は何を奪おうとする気なのか?

人間たちは・・・。大樹様は今も信じている。だが、人間は信じられない。

 

「岩をどけるのじゃ。」

 

水虎河童の指示で、ガラッパや他の者たちが岩をどける。

 

次は何を奪われる?否、次はない。次はないのだ。

 

洞窟の中から鈍色の輝きが見える。

 

「次はない、次はないのじゃ。これらを各地の同胞に・・・。」

 

洞窟の中に外の光が差し込み洞窟の中が露になる。

大砲や鉄砲、70年程前のあの戦争で使った古の武器がほとんど無傷の状態で積みあがっていた。

 

「我々はこれ以上は耐えない。次はないのじゃ。」

 

 

 

 

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