「ここまでだ!」
「ふふふ、どうでしょうか」
天狗ポリスの天狗たちを一瞬で石に変えた女。
蛇女ゴーゴン。
「日本の治安の守り手はこんなに弱いなんて・・・情けないですわ。」
「なーにかっこつけてんのよ!ベアード様と姫様から命令が来てるでしょ!!鬼太郎を石にして連れて来いって!!」
そのゴーゴンに挑発的に問い詰めたのは魔女ザンビアだ。
「なのに何のんびりしちゃってるわけ?」
「私が何年も日本に潜伏していたのはもともと別の目的の為ですもの。急に鬼太郎を倒せと言われても色々と準備が必要なんですの。それに、近々私の親しい友人が尋ねてくるのよ。そっちが先ですわ。」
自分の敬愛する上司を後回しにされたザンビアはゴーゴンに悪口を言ってしまう。
「アンタみたいな時代遅れのおばさんに頼まなくても、鬼太郎なら私が!!」
「お子様には無理ですわ。それにこれ以上私を侮辱するのは許しません。」
ゴーゴンの目が光る。
「ふっふ~んだ!!そんな時代遅れな戦法に!そ~れ!アパラチャカニラチャノモゲーター!」
ザンビアは定石通りの鏡の対処法でゴーゴンに対抗するのだが・・・。
石にされてしまう。
「そう、石にされても意識はあるの。このまま砕かれたら痛いですよ。」
ゴーゴンはザンビアを持ち上げて言う。
「私の部下が失礼をしました。さすがにそれ以上はご容赦願いたいですね。」
「あら、プリンセス。ご覧になっていたので?どうしてそこに?」
路地の裏からさとり・K・ベアードが姿を見せ、ゴーゴンの問いにさとりは表情一つ変えずに答える。
「悪魔の貴族がいらっしゃると聞いてご挨拶を。あ、そうでした。私たちの方は彼の件が住んでからでいいですよ。」
「あら、さすがは西洋妖怪のプリンセス。事情通ですわね。そう、今日は私の古い友人が訪ねてきてくださるのヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマン。爵位持ちの貴族悪魔の方がね。」
さらに物陰からもう一つの影が現れ会話に加わる。
「おや、メデューサ?迎えに来てくれたのかね。うれしいよ・・・。ところで、彼女はバックベアードの・・・。」
「そう、さとり様・・・ベアード様の御長女様よ。」
ヘルマンがそう言うとゴーゴンが彼にしなだれかかる。
ゴーゴンは悪魔ヘルマンの現地妻なのだ。
「ほぉ・・・そうであったか。これは失礼、ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマン氏がない没落貴族ですよ。少しばかりこちらでお世話になります。よろしく、プリンセス。」
「では、プリンセス。これから私のホテルでディナーなどいかがです?」
「・・・・・・。」
悟りが言葉を濁しているとゴーゴンが「これは失礼。」とザンビアの石化を解く。
「っひ!?」
石化を解かれたザンビアが慌ててさとりの服の裾を握って、背に隠れる。
「あらあら。」
「多少邪気を抜かれたのでしょうな。」
「ふふふ。」
ゴーゴンとヘルマンは面白いものを見たと言わんばかりだ。さとりも面白がっている様子だった。
さとりは2人の誘いに乗り会食に応じる。ザンビアも同席しているが邪気を抜かれた影響か借りてきた猫のようにおとなしい。さとりも普段からこれくらいならちょうどいいのですがなどと思いながら、視界の隅に追いやり2人と歓談を進める。
「では、ヘルマン殿は新しい契約に基づいて麻帆良を襲撃すると・・・。ゴーゴンはそれの手伝いですか。」
「概ねその通りですな。」
「できれば、プリンセスにも手を貸してほしいのですけど・・・」
「そうですね。せっかく日本にいるのに御祖母様に会えないのはさみしいですもの。いい機会ですし私も麻帆良にちょっかいを出そうかしら?」
「よ、よろしいのですか姫様?ベアード様からのご命令では・・・。」
「いいのよ。あの計画はヴィクター・フランケンシュタインの主導ですから、補佐の私たちが手を抜いても支障はないわ。ヘルマン卿のお遊びにお邪魔させていただく手前、御膳立てくらいはしないといけないでしょう?」
「ではさとり様。いってらっしゃいませ。」
「さとり様、いってらっしゃい。」
空とお燐現在進行中の計画の補佐に残して、息抜きと相手の麻帆良襲撃の為にヤングジェネレーションズを率いて麻帆良へ向かうのだった。
「ヤングジェネレーションズ、着いてらっしゃい。」
「「「っは」」」
道中で狗族の少年をいたぶっているヘルマン卿とゴーゴンを見つけたさとりは声をかける。
「あら、これは余興ですか。」
「あぁ、余興だよ。」
さとりとヘルマンらが話込んでいる間に狗族の少年は姿を消していた。
「よかったのですか?」
「余興ですから、これから起こる事へのちょっとしたスパイスだよ。」
「刺激的ですわ。」
「貴女も日本住まいは長いのでしたね。麻帆良にも不動産があるなんてねぇ。」
「麻帆良の土地も戦後直後の混乱してた時期に資産家として買ったものですので少し古いですがなかなかいい物件ですわ。」
さとりの問いになんてことないと言った空気を出して答える。
「しかし、姉妹喧嘩で日々争っている貴女が、それ以外のことで積極的になろうとはね。」
「それはそうですよ。今の私、お姉さま方に一歩先んじたんですもの。」
女なれば、この優位は大きいですか。
「ヘルマン卿ですか?」
「あら、わかります。ちゃんとした恋人を得たのは女として最大の優位ですもの。」
ここはお祝いの言葉を送っておきますか。
「石像作りの趣味は同じですからね。お似合いですよ。」
「あら、お褒めに預かり光栄ですわ。」
「ははは。」
ヘルマン卿はゴーゴンを遊び相手にしか考えていなさそうですが、そこはおいておきましょう。さて、行きましょう。
「犬上小太郎は懲罰のために能力の一部を封じられているわ。」
「これなら楽勝じゃな~い。」
「ヘルマン卿、ご命令の変更は?」
さとりより遣わされたヤングジェネレーションズの3人を率いたヘルマンが彼らに指示を出す。
「変更はないよ。君たちは予定通り作戦を実施したまえ。それと、闇の福音には気を付けた、まえ。介入されると作戦を大幅に変更しなくてはいけないからね。」
「お任せください、主の名誉を汚す真似は致しません。」
ヘルマンの指示に3人の代表として了承の意を示すドラキュラⅢ世。
彼らは行動を開始する。
「で、最初の仕事が入浴中の女子を誘拐するってやつだけど?」
「・・・いや・・・命令だし・・・。」
「美女を誘拐するというのは王道じゃないか。たまには、こういうのもいいじゃないか。」
ザンビアの不満混じりのツッコミにバツが悪そうに言葉を濁す狼男のワイルドとは対照的に美女に目がないドラキュラ三世はノリノリだ。本人は隠しているつもりだろうが、口元がわずかに緩んでいた。
「おい、エセイケメン…キモいのよ。顔がやらしいのよ。」
「んな!?と、とにかく!!姫様からのご命令だ!!小娘どもをヘルマン卿のところまで連れて行くぞ!!」
痛いところを疲れたドラキュラ三世は大声をあげて胡麻化して、話を区切る。
だが、ザンビアに言われて事を気にしてか。誘拐ではなく連れていく等、言い回しを変えていた。ただ、大浴場の脱衣場での会話なのだから、どう考えても閉まらないものがあるのだが…。
「アパラチャカニラチャノモゲーター!・・・・・・スライムにやらせていいでしょ。」
ザンビアはスライムを召喚し浴場に侵入させる。
「もったいない、もう少し遊んでも・・・。」
「なんか言った?」
「いや何でもない。」
「ドラキュラ三世・・・その女癖、少し直した方がいいわよ。」
「っく」
ザンビアに絶対零度の視線を向けられ、ワイルドにも呆れの視線を向けられたドラキュラ三世は肩身が狭そうに俯いた。
「アデアッっ」
「さて、神鳴流の剣士と聞いていましたが不意を打たれては手も足も出ないと言ったところですか?」
ゴーゴンは石化した刹那の頭を持ち上げる。
「あら、最近の石化は意識が残るのですよ?驚きましたか?貴女の友人方やお嬢様とやら酷い目に合うのを特等席で見ると言うのはいかがですか?我ながら楽しい趣向と思いますよ。」
ゴーゴンは石化した少女を引きずってヘルマンの下へ向かう。
雨の中、女子寮の中からネギが飛び出していったのを確認したさとりは瓶の蓋を開ける。
中から出てきたスライムたちが少女の形を取り始める。
「さて、スライムさんたちお仕事ですよ。」
「「「ラジャー」」」