大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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187 平成 嵐の前

「さとり様、軍団本隊の件でご報告があります。」

 

自身の最側近である火炎猫お燐がいくつかの書類を携えて報告に現れた。

 

「お父様が来ることは把握していますし、東南アジア諸国で人妖双方で動きがあることも把握しています。ゴーゴンの勝手働きの尻拭いで煩わしいのです。それにあえて乗った私も強くは言えませんが些事は省いて欲しいのですけどね・・・。」

 

さとりは把握しているとお燐の報告を省こうとしたのだが、お燐は続ける。

 

「さとり様、本隊先遣の新四天王がゲゲゲの森を奇襲したのをご存じですか?」

「続けなさい。」

 

さとりは手で追い払うしぐさを促すしぐさに変えて続けさせ、お燐から受け取った書類に目を通す。

 

「南方支配領域の反逆者追討という建前ですが・・・その実・・・。」

「身内の失態か。」

 

さとりの読んでいる報告書にはブリガドーンのコアが新四天王の最上位者である魔女アデルの妹アニエスによって盗まれたことが記載されていた。

確か、その少し前に彼女たちの母親がブリガドーンの贄としてインドネシアで起爆していたのを思い出す。確かあの地域は反抗的で独立した勢力が抑えていた場所だ。インドネシア政府は独立初期のような妖怪に忖度する様なことはなく、態度を硬化させ米国などにすり寄っていた。ブリガドーンの発動は妖怪への態度を硬化する東南アジア諸国に対する警告を兼ねたものでもあった。インドネシア政府は地震による津波被害として発表している。このブリガドーンによる人間への被害は1万近くインドネシア政府は米国と距離を置き、我々に近い南方妖怪へ取次ぎを求めているありさまだ。

 

「お父様から、彼らを援護するような指示はあったかしら?」

「いえ、特には・・・。」

「じゃあ、お父様からの命令は当初の予定通りね。ブリガドーン計画とあの計画は完全に別枠ですからね。どちらが本命かは知りませんが、どちらもかなり強引な気はしますが・・・。今は世界が大きく動いています。私たち西洋妖怪も今は動くときということでしょう。人間たちもこざかしく動き回っているようです。」

 

『アメリカ第7艦隊は西太平洋上にてアメリカ第3艦隊と演習を行う計画を発表。すでに両艦隊は合流地点へ向かうために母校を出港したとの情報が・・・。』

 

ニュースの映像が流れる。

 

「さて、関係各所に連絡調整かしらね。確かお祖母様も日本の半分を再掌握したと聞いていますし、日本妖怪のぬらりひょんも何やらせかせかと動き回っているようです。何か大きなことが起きたり起こしたりしそうですね。お燐。」

「はい、さとり様。」

 

 

 

西洋妖怪軍団本隊

 

「申し訳ありませんでしたベアード様。」

「次こそは必ず。」

 

四天王のリーダー格である魔女アデルが最初に頭を下げ、続いて人狼ヴォルフガングが続く。

 

「いえ、次は我々四天王全員が・・・。」

 

そうアデルが言おうとするのをベアードが遮った。

 

「いや待て。ゲゲゲの森を攻撃することも、アルカナの指輪も必要だがもう一つの計画も進めなくてはならん。ゲゲゲの森だけと言うような単一目標ではダメだ。攻撃目標は日本国首都東京とその周辺各都市!!日本妖怪、否!日本の首根っこを押さえ付け、さらにその奥深くをも手中に収めるのだ!!ヨナルデ!!」

 

ベアードの呼び声に応じたヨナルデ・パズトーリが声を上げる。

 

「占領下の南方妖怪たちは先鋒として編成は完了。オセアニア方面軍は現在北上中、レティ・ホワイトロックは中国妖怪の抑えに対して快諾の旨が届いております。細かい取り決めは無いですが刑部狸率いる外地日本妖怪も大枠協調することに異存なし。姫様の軍勢も行動を開始するとのこと。我が軍団も四天王の皆様以外の諸兵力を含めすでにご命令を待つばかりにございます。」

 

ヨナルデの返答に満足げに頷くベアード。

ベアードは全軍に号令をかける。

 

「そうか。ならば・・・征け!我が精強なる軍団よ!!」

「「「「「ベアード様の御名の下に!!!」」」」」

 

 

 

 

 

日本国首相官邸

 

「奴良先生。情報提供、非常に感謝しております。先生の様にそういった関係に通じた方にご助力いただけて非常に助かります。」

 

日本国の連舫首相の前に座っている奴良を名乗ってはいるが日本妖怪の総大将を自称する大妖怪ぬらりひょんだ。

自身の計画のためにも西洋妖怪も大樹の勢力も日本国もまとめて揺さぶってやらんとする意図を伺える。

 

「いえいえ、日本の危機・・・国体護持の為にこの老体がお役に立つなら何より。して、総理?策はあるのですかな?」

 

ぬらりひょんに促されるままに答える連舫首相。

 

「対妖怪の武器はいまだ開発途上ですが・・・」

「おや・・・。」

 

「幸いにも、東太平洋上でアメリカ合衆国の二つの艦隊が演習中。我が国には日米安保条約というものがありますので・・・使い時といったところと考えております。もちろん、襲撃が予想される地域は政府が総力を挙げて対処に当たる予定ですが・・・。」

 

ぬらりひょんは満足げに頷くのであった。

 

「それなら安心というものですな。」

 

「国際学園都市である麻帆良の学園祭は都市規模のイベントです。その経済効果は万博や五輪に並ぶ大規模なものです。それを妖怪如きに邪魔をされるわけにはいきませんので・・・。」

 

 

 

 

 

南洋諸島旧日本妖怪軍根拠地。

 

軍装の妖狸や天狗、妖精たちが慌ただしく動き回っている。

複数の軍艦に木箱や鉄箱が積み込まれる。

 

そう言った物資の一つである木箱を境に大妖狸隠神刑部狸と部下の妖怪が挟むように向かい合っている妖怪兎たち。

 

刑部狸の部下たちが箱を開けて中身を確認し終えると、刑部狸が妖怪兎から渡された書類にサインをする。

 

「確かに、月の都防衛隊より武器の受領を確認した。月の御女神様に最上級の感謝を・・・。必ずや地上を大樹の御代に戻すことかないましょう」

「それは良いことです。月夜見様も綿月様も喜ばれましょう。」

 

 

 

 

 

 

「戦 民草 根無し草 燃え広がりて焼け野原。憎しみこそが こよなき甘露。」

面を被った黒い影がつぶやく。

 

 

 

 

 

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