大樹は図書館島の自室に向かう。
途中でネギパーティーの面々とも合流する。
図書館島の私室は配下の妖精たちと茶々丸たちが戦った形跡が生々しく残っていたが、大
樹は特に意に介した様子はなく。妖精たちに必要な書類やらを指示して運び出させる。
「大ちゃんの方がこういったことはよくやってくれたんだけどね。」
「音に聞こえし大緑光ノ精様と比べられるとは光栄でございます。相模大樹宮に妖精たち
と隷下の妖怪たちを集結させています。あそこは源氏、北条氏と我々に懇意の者たちの土
地、現政権の膝元とはいえ融通はかなり利かせられます。」
「…あなたも十分優秀ですよ。水楢。」
麻帆良学園祭は当たり障りのない日程で無事最終日を迎え、翌日の振り替え休日。
日本に上陸していた西洋妖怪軍団ベアード本軍とさとりの方面軍が行動を開始した。
西洋妖怪たちはまたたく間に東京タワー、東京スカイツリーを制圧。
麻帆良にある学園大電波塔をもその手中に収めようとしていた。
この3つの場所でグレムリンたちが怪しげな装置を組み立てていく。
転送装置と探査レーダーであった。
東京スカイツリーを襲撃したのは今や、西洋妖怪軍団地獄侵攻軍総司令官に昇進した。さ
とり・K・ベアードであった。
「これより、日本の地獄を占領する。これにより、地獄の炎を手に入れ我ら西洋妖怪の力
を確たるものにするのです。」
「「「「「っは!」」」」」
「ドラキュラ三世、地獄に潜伏している公に連絡。時は来た我らに呼応し決起せよ。」
「ただちに。」
ドラキュラ三世が頭を垂れて引いていき、それと入れ替えに火焔猫お燐が質問する。
「しかし、さとり様。これほどまでに大規模な策です。大樹様や鬼太郎たち、それにぬら
りひょんどもとて行動を起こすのではないでしょうか?少々厄介では?」
さとりは妖しく笑ってそれに応じた。
「そう、非常に大規模な策です。万全の用意をしてきました。ぬらりひょんとは不介入の
密約を結んでいます。中国妖怪にはロシア妖怪たちが目を光らせています。ゆえに、ぬら
りひょんとその同盟関係の中国妖怪への備えは出来ています。鬼太郎達にはお父様を中心
とした新四天王の精鋭があたることになっています。ブリガドーンの関係上そうなるでし
ょう。それ以外には刑部狸さんがあたってくれます。」
「よく刑部狸が、大樹様に刃を向ける気になってくれましたね。」
「えぇ。」
さとりは思い出す。
「私に大樹様に刃を向けよと申すか!大樹様のお世継ぎたるお方とは言え、言葉が過ぎま
すぞ!」
「だからこそです。御祖母様の理想実現の為には、多少の強硬手段をとらざるを得ないの
です。私たちは御祖母様ではないのです。私たちに御祖母様のような御力はありません。
ゆえに私たちは私たちのやり方でより近い現実を勝ち得なければならないのです。御祖母
様にその意思がない以上、誰かがこれを為さねばなりません。かつて御祖母様は世界の業
を背負い東西の妖怪と多くの人間たちを光ある理想郷へ引き上げてくださいました。です
が、私たちを闇の世界に押し戻そうとする輩。そして、御祖母様を後ろから撃った輩によ
って私たちは再び闇の世界に押し戻されてしまった。再び私たちがあの頃に戻るためには
誰かが業を背負うことになるでしょう。」
さとりの言葉に刑部狸は驚きの表情を浮かべ、すぐに神妙な表情になる。その表情には強
い敬意も含まれていた。そして、さとりから渡された作戦計画書に目を通し始める。
「私は、事がなった暁には東洋と西洋の統合の象徴として、御祖母様の後継として妖怪の
頂点に立つつもりです。もちろん、お父様を上に置くつもりはありませんし、御祖母様に
は相談役になっていただきを無下に扱うつもりはありません。これを持って私の覚悟とし
て受けていただけますか。」
刑部狸が重くなった口を開く。
「大樹の若樹様は、本当に美しく輝かしくお育ちになられた。そして、お強くなられた。
わかりました…この度の西洋妖怪軍団の戦い…我らがお力をお貸ししましょう。」
「無理な願いをお聞きいただき、ありがとうございます。」
頭を深く下げたさとりに刑部狸は強い口調で伝える。
「もとより、本土奪還の計画はあった。たまたま、時期が重なったのだ。」
「本当にありがとうございます。」
自分は偉大なる父と祖母の跡を継ぐのです。