私は書簡に目を通す。
「う、うそでしょ。」
思わず、口から思っていることがこぼれてしまう。
「長瀬さん、この書簡は読みましたか。」
「いえ、読んではござらんが。」
「でしょうね。だからこそ、平静でいられる。」
拙い、日本人と日本妖怪。元に戻ろうとする力が強すぎる。
これは拙い。
早く手を打たないと、いえすぐに行動に出ないいけない。
これは、とんでもないことになる。
『陰神刑部狸率いる旧日本妖怪軍、日本侵攻の兆し。
これに同調する者有り。陸上自衛隊東部方面総監林田浩二、警視庁副総監永森圭史、以下30名余り、他調査中。』
「長瀬さん!!至急滝川に嫌疑段階のものも含めたすべての情報をあげさせなさい!!ぐわごぜ!!雪女郎、白蔵主、赤嵐坊に配下の状況を確認してください。同調者が出るかもしれません!!勿論、関東全域の妖怪たちの動きも再確認急いで!!あと、護国会議の白蓮にも!!水楢!!民自党と華族会の連携議員代表と席を作りなさい!!大至急!!民政党のバカ総理には悟らせるな!!あと抑えるなら市ヶ谷か…市ヶ谷にも連絡、私の方で抑えるので強硬手段はとるなと…。桜田門は…そうですね。私が直接話した方がいいか。」
重要事項を大声で回りを一切気にせず伝え指示を出す。混乱しつつも状況を整理し、すぐ打てる手を考える。
「あ、茶々丸!超さんと葉加瀬さんに地下のロボット、再掌握できてないのは全部処分するように伝えて。」
「え、いいんですか?先生?」
エヴァが自分を無視した会話を始めた私たちに少し不満そうだが、今はエヴァのケアをしてる余裕がない。少し我慢してください。
茶々丸の方も、地下の超さんのロボットを自分の戦力化したいと言う考えを超さん伝手に知っていたので意外そうだった。
「しかたないでしょう。この前の西洋妖怪軍団の襲撃時にロボットがハッキングされていたのは確実。どれがそうで違うのかがわからない以上、確実に大丈夫なもの以外は処分しないと拙いですから。」
「わかりました。」
私の言葉に納得した茶々丸は自身の通信機能で超さんと連絡を取り始める。
そして、私はネギくんたちの方をにっこり笑って、正確には電子精霊を保有する長谷川さんの肩をつかむ。
「ちょ、ちょっと手伝ってほしいかな~。先生、すごく困ってるの~。」
「えー。」
長谷川さん、すごく嫌そう。彼女はコスプレをする程度にオタク、こう言えば協力してくれるかな。
「断らないでね~。あなたが助かっても日本はバラバラよ。」
「考えたなちくしょー!」
よし!ネタで釣ったら引っかかってくれたわ。
※DBネタを使わなくても彼女は頼まれたら引き受けてくれたでしょう。
少しばかり空気が緩み、生徒たちが話しかけてくる。
「先生、なにがあったんですか?」
桜咲さんが何が起きているのかと尋ねてきた。
近衛さんの護衛役であるのだから当然の発言といえるでしょう。
「旧日本軍の妖怪による侵攻が迫っています。」
「旧日本軍の妖怪って?」
早乙女さんは旧日本軍の妖怪という言葉に疑問を述べた。
私は早乙女さんの問いに答えつつ説明を続ける。
「あの戦争で各地に派遣されたの日本妖怪たちの一部は敗戦を認めず、潜伏を続けていました。そして私の側近であった陰神刑部狸を中心に70年という時をかけて各地に散った日本妖怪たちを糾合。抗戦派の南洋妖怪を加え、西洋妖怪と共闘体制を確立。そして、機が熟すのを待ち国内の協力者と示し合わせていたのです。」
「気を熟すのを示し合わせていた…。」
私のそばで片膝をついたままの長瀬さんが反芻する。
「えぇ、その協力者は自衛隊、警察、官僚、政治家多岐に及んでいます。国内の妖怪たちも協力する者もいるでしょう。皆さんにも協力してもらってよろしいですね。」
ネギくんたちは頷いて肯定の意を示してくれました。
エヴァは拒否しなかったから協力してくれるでしょう。
さて、肯定も否定もしていないアルビレオ・イマですがここまで首を突っ込んで傍観者でいようなんて虫の良い真似はさせませんよ。
「アルビレオ・イマ。」
「今の私はクウネッ「お遊びは終わりです!」…おぉ怖い。」
「おそらく、警察が今回のクーデターに加担したのは30年前の事件が原因です。魔法使いが関わって。警察の溜飲を下げさせるには先ずは近衛学園長を説得しなければなりません。エヴァにも協力してもらうつもりですが向こうの英雄の一人である貴方の言葉も必要です。いいいですね。」
「わ、わかました。今回は確かにあなたの言う通り協力するべきでしょう。」
私のクーデターと言う言葉にアルビレオ・イマも少しばかり真面目に応じてくれたようです。
「僕たちは何をすればいいでしょう。」
ネギくんが生徒たちを代表して聞いてきました。
「そうですね。長瀬さんは滝川との連絡を確保、滝川家の指示に従ってください。あと、龍宮さんを雇い入れますから連絡をつけてください。長谷川さんはネットやメディアが騒ぐのを防いでください。」
「わかったでござる。」
「いやいや、いち学生にやらせることかよ。まぁ、やってみるけど。」
「お願いします。」
取りあえず、エヴァたちとアルビレオ・イマは学園長との会談に立ち会ってもらうとして、ネギくんたちは関東近郊の決起妖怪の鎮圧をお願いしましょうか。
「ネギくんたちは関東近郊の決起妖怪の鎮圧をお願いします。多分途中で鬼太郎君たちと合流することになるかと思います。あ、早乙女さんはこっちに残って雑兵を書き続けてください。」
ネギくんたちは戦力的にも遊兵にするのは惜しいけど、戦闘系の子たちはそれでよいとして…。早乙女さんは趙さんのロボット軍団が使えなくなった穴を埋めてもらいましょう。
「のどかさんに夕映さん、学園長たちとの話し合いがすんだら私についてください。」
「は、はい!」「はいです!」
宮崎さんの能力は私の横に置いた方が役に立つでしょう。綾瀬さんも先頭の矢面に出すには未熟ですし、私のそばに置いておきましょう。思考を回転させているとエヴァが私に小声で話しかける。
「敵の規模は?」
「地方の敵は人妖ともに抑え込めると思いますが、関東近郊は難しいです。」
「直近で詳細を言ってくれ。」
「旧日本妖怪軍に関東近郊の妖怪の小集団がいくつか……それと陸上自衛隊第一師団、警視庁、神奈川県警、千葉県警、埼玉県警の実働部隊。」
エヴァは少し顔をしかめる。
「おい、それはかなり拙いだろう。」
「だから、学園長と会談をするんです。」