エヴァは少し顔をしかめる。
「おい、それはかなり拙いだろう。」
「だから、学園長と会談をするんです。」
状況をつかみ切れていない子たちもいたようですが、事態は風雲急を告げています。
ネギパーティー、便宜上そう呼称しましょう。
「ネギパーティーの戦闘要員の皆さんは鬼太郎君たちに連絡しますので彼らと合流して陰神刑部の敵本陣を叩いてください!!」
「ん?ネギパーティー?戦闘要員?」
あ、私の頭の中で組み立てた言葉でした。
「ほら、ゲームとかってこう言うグループってパーティーって言うじゃないですか。ネギくんがリーダーっぽいですしネギパーティーかなぁって思いまして…戦闘要員とかっていうのは…以下略。」
急に思ったことを言ってしまうと伝わらないことってありますよね。
彼らの戦闘要員、ネギくん、神楽坂さん、古菲さん、桜咲さん、長瀬さん。
補助要員、近衛さん、早乙女さん。
後方要員、長谷川さん、相坂さん、朝倉さん、のどかさん、夕映さん。
と、言ったことを説明しました。
「と、とにかく!!戦闘要員は敵本陣を叩いて!早乙女さんはいっぱい兵隊の絵を書いて雑兵を作ってください!!長谷川さんは電子戦担当でそれ以外の皆さん一先ずは私についてきてください!長瀬さんは連絡を取りながらできますよね?お返事は!?」
「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
「拙者だけ、仕事が多いでござるがやるでござるよ。」
「け、腱鞘炎になりそう。」
良い返事です。
ネギパーティーに指示を出したら今度は…。
「茶々丸は超さんのところの使えるロボットたちと関東近郊の治安維持に回してください。水楢は巫女衆の動員編成を早乙女さん作の雑兵の指揮も任せます。ぐわごぜは政治関係のセッティングをお願いします。」
「わかりました。」
「「御意に!!」」
「エヴァも戦闘要員ですが学園長との会談が済むまでは私といてください。イマ殿も交渉要因です!!」
「あぁ。」
「はいはい、わかりました。」
アルビレオ・イマ。
すすすっとどこかに行こうとするの、本当に不安になるからやめていただきたいですね。あ、イマのやつエヴァに白い目で見られてる。
私はエヴァやアルビレオ・イマなどのメンバーを連れて学園長室へ乗り込んだ。
学園長室ではタカハタ先生やガンドルフィーニ先生や葛葉先生などの筆頭格の魔法教師たちが集まっていた。その様子から、事態の全容こそ掴めていないものの事の重大さは理解しているようで対策会議を始める直前だったようだ。
「近衛学園長。いえ、メガロメセンブリアの全権委任者である関東魔法協会の長である近衛近右衛門に天皇家養母兼摂政大樹野椎水御神として会談を申し入れる。」
近衛近右衛門は当代の摂関近衛家の人間である。彼女の巫女装束に施された黄櫨染と黄丹の刺繍の天皇や皇族に許された色を使っている意味は理解できていた。彼女が天皇の上にいる神であり、この国の本来の最高権力者であるということだ。
その絶大な権力を使っての交渉だ。
要求も相当のものだろう。近右衛門も覚悟を決めて会談に臨んだ。
しかし、その要求は非常に難題と言えた。
「関東魔法協会は直ちに護国会議の傘下に入り、関西呪術協会他と同様に護国会議の統制下に入ること。これ以上、日本国内で外国勢力が我が物顔で跋扈することは看過できない。」
私の言葉に学園長の周りにいた魔法教師たちが身を固くする。
私の言葉は聞きようによっては敵の発言と言えたからだ。
「それは無理難題じゃ。むしろ、聞けぬ話よな。」
私は学園長の言葉を鼻で笑って応じる。
「よく言う、GHQのごり押しで日本に割り込んできた異世界国家の出先機関が。」
「じゃが、それは日本がかつての帝国主義に走らぬようにという予防措置じゃろう。」
「その予防措置がやることなすこと裏目に出ているではないですか。」
学園長が渋い顔をする。
「関西呪術協会を中心とした土着機関との内ゲバ、かつての妖怪同士のコミュニティを寸断し人に害為す妖怪の跳梁跋扈をさせる切っ掛けとした。さらには魔法世界の問題であるはずの完全なる世界…コズモ・エンテレケイアがこちらでも蠢動するに至り。そして、今回の大規模決起です。この大決起の責任はあなた方魔法使いに寄るところが大きいのではないですか。」
私の言に異議を唱えようとする魔法先生たちの声に被せて声量で打ち消す。
「昭和63年12月31日。」
学園長も思うところがあるのだろうか押し黙った。
「日本の警察に撃たせましたね。国民を守る盾であるはずの日本警察にやらせてはならぬことをさせましたね。」
学園長は何も言い返せなかった。他の教師たちは何を言っているか理解できなかった。
「貴様ら魔法使いが機動隊員の一人を操って天童夢子を撃たせたなと言っている!!」
「なっ」
「…あれは仕方がなかった。本国の命令だったし、実行したのは本国から派遣された担当官じゃった。」
私の言葉と学園長の反応に教師たちは驚愕している。
あの事件にかかわったエヴァも驚いていた。
「近衛。あれが無ければあの後どうなる予定だったかご存じですか?」
「いえ。」
「昭和天皇は病床の余命少ない御身の最後の仕事と気力を振り絞っていました。あの頃は皇室の影響力も社会に大きな影響を持っていましたし、まだ完全に骨抜きにされるようなことも無かったから、ある意味最後の機会と言えました。」
学園長は俯いたまま顔を上げられなかった。
「過激派の妖怪の襲撃を人間と融和派の妖怪が協力して防ぐ。そして、それを取りまとめた人間の少女。彼女は人妖融和の象徴となるはずだった。」
学園長の取り巻きの教師たちも言葉が出ない。
「昭和天皇は彼女の功績をして、人妖の融和の第一歩とし、公式に融和を社会に訴えかけるという物語が出来ていたのです。それを台無しにした。そして、あろうことか日本警察に罪を擦り付けた。…近衛近右衛門。貴方は火星の魔法使いなのか摂関家の人間、いや日本人なのかどっちだ。」
学園長は声を震わせて答える
「…京都生まれの日本人、近衛家の人間です。」
「そうですか。近衛近右衛門、この先はわかりますね。」
「やりすぎたということか…。関東魔法協会は護国会議の傘下に入り、謹んで従います。」
大樹はソファーに沈み込んだようにもたれ掛かる学園長に続ける。
「近右衛門、先の陛下を弑逆した逆賊の誹りを受けることは、回避できましたね。」
「それはいったい?」
学園長は何の話だと呆けた様子で聞き返す。
「さきほど、皇居に控えさせていた妖精巫女から連絡がありました。宮内庁長官の身柄を拘束したと…。なんでも、クーデター発生後の革命政権を容認する発言をしたうえで、魔法協会を名指しで批判する声明を出す予定だったそうですよ。」
大樹の言葉に顔を引きつらせる学園長。
そして、それをしり目にため息をつく大樹。
「はぁ…。調べれば調べるほど大物が出てくる。あなた方…戦後日本を好き勝手にやったツケが回ってきましたね。……私には何もしなかったツケが回ってきたわけですが…。さて次は、警察との交渉ですか。」