大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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213 平成 闇の先の光明

 

日本に帰国した大樹は今までにないほどに精力的に動き回る。

帰国後に最初にやったことは妖狸衆の長である刑部狸の後任に二ツ岩マミゾウを指名することであった。

 

「妖狸衆の変わらぬ忠誠に期待します。」

「っは。」

 

源平の頃より大樹に従った妖狸衆は妖怪の種族組織としては最初に大樹に従った集団であり、妖怪の中では最古参の集団であった。

 

首を垂れるマミゾウに大樹は語り掛ける。

 

「しかし、刑部…早まった真似をして…しばらく隠棲させてから帰参させるつもりでしたのに。」

 

刑部狸は間違いなく股肱の臣であった。間違いなく人妖融和の理想に共感していた。故に世界大戦の敗北によって自分たちの理想が崩壊したことを受け入れられなかった。

 

マミゾウは首を垂れたまま聞いている。

 

「なぜに死んでしまったのでしょうか。まだまだ、やってもらいたいことがあったのに…。あれの2000年前は私の後を追いかけてくる賢しい子狸であった。付き合いは八雲紫や妖精たちに並ぶのだ。私の思いを汲めぬはずがないのです。二ツ岩、あれは死の間際に何か言っておりませんでしたか?」

「申し訳ありません。私からは話せるようなことはございません。」

 

狸は愚直なのだ。一つの理想を見つければただ純粋に進んでいく。

私への忠誠は妖怪の中でも頭一つ飛びぬけてる。

 

深く首を垂れたままのマミゾウに大樹は何度か促したが頑なに答えなかった。

ため息をついて

 

「そうですか。」

 

とだけ答えてその場を後にした。

 

まあ、少なくても・・・妖狸に叛意はないことは確認できた。

隠し事はありそうだが・・・私に害意はないのなら、目を瞑りましょう。

 

 

 

 

幻想郷 マヨヒガ

 

「紫様、大樹様から幻想郷から外に送り出してほしい者たちのリスト一覧です。」

「どうでだった?様子は?」

 

紫に尋ねられた藍は思ったことを素直に伝えた。

 

「人間も妖怪も妖精も、そとではこれまでにないほど慌ただしく動いていましたよ。」

「でしょうねぇ。本人は認めないでしょうけど大樹様って昔っから謀とか政が大好きだから。」

 

藍は少し眉をひそめる。

 

「ですが大丈夫なのですか?魔法世界の妨害がありそうなものですが。」

「大丈夫でしょうよ。完全なる世界連中がゲート全部壊しちゃったから。こっちに残ってるやつらじゃ大樹の足だって引っ張れないわよ。藍、彼女の周りをよく見ておきなさい。流れが変わっていくわよ。いえ、もう変わり始めているはずよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

『いや~驚きました。衆院選を控えている今、民政党が分裂とは…』

 

テレビの流れる映像を見ていた大樹は赤坂プリンスの小ホールに集まっていた。

 

「流れが出来ましたな。」

 

出席者の一人安倍川元首相がつぶやく。

それに大樹が応じ、さらに華族会の党首織田信春が答える。

 

「民政党が護憲民政党や国民民政党やらいろいろと大分裂して連立の共社党との不協和音はこちらに利すりますからね。それに革新の党の合流も決まりましたので…。」

「まさに翼賛状態ですね。」

 

「ははは、大政翼賛会ならぬ大神翼賛会と言ったところですな。」

「ふふふふ。」

 

「しかし…失礼ながら、大樹様を前面に出すやり方ですと戦前の右翼のあまりよろしくないイメージが付きまといます。戦後、諸外国や国内メディアのネガキャンが国民の意識内で尾を引いています。」

「それについては、妖怪や妖精を前面に出します。ファンタジーの華やかなイメージを日本の未来に当て込んで有権者の目を引き付けましょう。私たちには国力増強・経済成長・技術革新の実現ができるという明確な強みがあります。今までの蜃気楼を追うような虚ろなものではないのです。この際です寡頭政治となっても問題ありません。」

 

そういえば、ネギくんが戻ってくるであろう夏休み明けは約半月後。トラブルに巻き込まれたであろうけど彼らなら何とかなると信じています。

そして、その頃は選挙戦も終盤といった時期ですね。いっそのこと魔法世界のことを公表するのも面白いかもしれません。おっと、あまりやりすぎても危ないですね。

 

何の脈絡もなく隙間が割れるとそこから八雲紫が現れる。

 

「大樹、頼まれてた幻想郷の住民たちを連れて来たわ。」

 

紫の後から続々と姿を見せる幻想郷の住人たち。

さて、とにかく見栄え良く派手にやりましょう!

 

 

 

 

 

 

 

東北地方で自身の地元で遊説し支持を得るために回る。この時期の議員たちのルーチンワークのようなものだ。しかし、この選挙戦は歴史的に見て異質であった。

 

「応援ありがとうございます!我々が政権を取った暁には!食料自給率を直近で3倍に上げます!将来的には趣向品も含めてすべてを国内で自給します!!お集りの皆さん!!彼女たち妖精たちの協力があれば!!日本の農業林業の未来は明るい!!」

 

議員がそう演説し、妖精たちを手で指し聴衆の視線を集めさせる。

 

「ご覧ください!!彼女たちの力を!!」

 

妖精たちが畑に手を突っ込み力を籠める。

すると畑の作物が不自然に育ち始める。それはまるでハイスピードカメラの映像だ。

みるみるうちに作物が大きくなり、鈴なりに実ををつける。

 

「我々が政権を取れば、この国の繁栄を待ったなし!!是非に1票を!!」

 

聴衆であった農家たちが妖精たちに手を合わせて拝み始める。

「奇跡だ!!御使い様じゃ!大樹の神さんの御使い様じゃ!!ありがたやありがたや!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

北関東のとある森の中、深く大きな縦穴の中にロープを垂らして下りていくのはねずみ男。

色々あって彼は今、大樹の下で働いている。

 

「相変わらず。深い穴だなぁ…よっと」

 

ねずみ男は懐中電灯で辺りを照らす。

 

「おー、居た居た。」

「なによ。何しに来たのよ!」

 

「まだ、やさぐれてたのかよ。姑獲鳥。」

 

多少丸みのある大きな鳥の妖怪がいた。

 

「あの一件で、人間に嫌気が刺したのは知ってるけどよ。まぁ、なんだ少し考えなおしちゃくれねえか。」

「あんた、鬼太郎みたいなことを言うのね。」

 

「っか~!あんなくっせぇ事いうような奴に見えるかよ。俺様が?仕事だよ仕事、今や俺様もしがない宮仕え。大樹様がなお前さんに仕事を頼みたいんだとよ。」

 

ねずみ男は背負っていたリュックサックからパンフレットの様な冊子を渡す。

 

「じどうようごしせつ?NPO?子供を見守る会?」

「身寄りのない子供たちをある程度の年になるまで育てるっていう仕事だよ。お前さんにはピッタリだろ?大樹様次第なんだけどよ。うまくいけば、お前にそこで働いてほしんだとよ。また来るからちょっと考えといてくれや。またな!・・・・・・・・・・・えっと次は白神村の雷獣か。」

 

そういって、ねずみ男はもと来た道を引き返していった。

 

「あたし…また、子供の面倒をみていいの。」

 

 

 

 

 

大樹は自身の姉貴分にあたる二柱と面会していた。

 

「はい。お二人にはそれぞれ農林水産省の農産局と林野庁で省のオブザーバーとして計画に参加してほしいんです。静葉様、穣子様。」

 

「大樹ちゃんの頼みだもの!任せなさいな!ねぇ?姉さん!」

「えぇ、私たちでできることなら協力するわ。」

 

「お二人とも協力してくれた感謝します。」

 

大樹は国内の緑化計画や自給率向上計画のために幻想郷から秋姉妹に協力を要請したのだった。

 

 

また、他にも大樹は幻想郷で八坂神奈子らが企画した発電事業を逆輸入して妖怪たちによる幻想水力風力火力原子力電気公社計画が進行中であった。

 

 

 

また、別の場所別の時間。

 

ホテルのホールを借り切った決起集会。

大樹がシャンパンの入ったグラスを掲げ音頭をとる。

出席者には民自党、華族会、改革の会と言った翼賛会議員以外にも妖怪や妖精の姿もあった。

 

「人間に妖怪、それに妖精や精霊たち。数多の者たちが手を取り合いより良い時代を目指すのです!この選挙戦、皆さん勝ちましょう!!えいえいおー!乾杯!!」

 

「「「「「えいえいおー!乾杯!!」」」」」

 

 

 

 

 

某所

 

「ぬらりひょん様ぁ。」

「ぬらりひょん…少々拙いのではないかえ。」

 

上座に座るぬらりひょんに朱の盆と蛇骨婆が心配そうに訴えかけるが、それに困った様に応じているのはぬらりひょん。だが、その口元はにやついていた。

 

「あぁ、少しばかり驚いた。いや、非常に驚いた。まさに復権・・・いや、欧州の国々も抱き込んでいるあたりで戦前以上の影響力を僅か半月で得るとは流石としか言いようがないのぉ。じゃが、どうにもならんわけじゃあないんじゃよ。そろそろ、わしも手札を切っておこうか。」

 

 

 

 

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