大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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214 平成 月の影

 

 

2019年8月20日

大樹たちは幻想郷にいた。

八雲紫から式の藍を案内役に遣わされた一行は迷いの竹林へ。

 

妖狐狸の兵士や武装した妖精巫女たちが隊列を組んで竹林前に並んでいた。

藍とは別に雇われた竹林内での案内役である藤原妹紅も藍と顔を見合わせて

 

「さすがにこの人数は・・・ねぇ。」

 

妹紅に振られた藍は仕方なしと苦言を呈すると大樹も困った様に応じた。

 

「大樹様…数がいささか多いように思います。」

「えぇ、梅林と水楢、それにぐわごぜたちも心配して護衛を多くつけろとうるさくてね。」

 

幻想郷在住だった大妖精たちも困惑気味であった。

 

「第一中隊は左へ!第二中隊は右側へ向かえ!砲兵は榴弾から焼夷弾に切り替えろ!」

「ま、待ってください!玄蕃狸!別に密林戦をするわけじゃないんですよ!」

 

初っ端から戦闘ありきの指示を出す玄蕃狸に大妖精が慌てて待ったをかける。

 

「しかし、竹林を進むときに奇襲をされてはひとたまりもないぞ。」

「これだから、南洋帰りは・・・戦争ありきで話を進めないでください。あくまでも交渉なのですよ。」

 

 

 

「そうです。大妖精の言う通りです。あまり目立ったことをすると2・26の再来などと騒がれかねません。」

 

「申し訳ありません。先走ってしまいました。」

 

大樹に叱責された玄蕃狸はシュンとして頭を下げる。

 

 

 

竹林外延部でうるさくしていると永遠亭の妖怪兎たちが集まって来ており、自然と睨みあいが始まった。

 

永遠亭は月出身者の勢力であり、かなりの旧式ではあるが月の武器を装備している。そのため幻想郷では珍しい近代化した勢力であった。

 

つまるところ、土嚢やら塹壕が築かれ銃口を向けあう一触即発状態になっていた。

しかし、幸運なことに永遠亭の兎たちのリーダーの因幡てゐは白兎神社の祭神として、大樹と面識があった。

 

「え、大樹野椎水御神様じゃないですか?」

「尼子家の氏神様の白兔神のてゐさんよね。懐かしいですねぇ~2、300年ぶりですかねぇ?」

 

色々あって何とか衝突を避けて、永遠亭との交渉に入ることができた。

ただ、永遠亭に入るための交渉でその主たちとの交渉の席を設けるための交渉があるのだが…。

 

何度かの話し合いで大樹と随行員数名という形で永遠亭に招待された。残りは竹林外で待機となった。

 

 

永遠亭の亭主である蓬莱山輝夜は八意永琳の上司であるのだが、大樹は国津神でありながら天照大御神ら一部の有力天津神から名誉天津神に召し上げられた経緯から一部の天津神をやたら持ち上げたがる気質がある。

 

八意永琳は八意思兼神その神であり、大樹がやたらと気を使うであろう枠組みにいる。

まあ、実際大昔も大昔であるが面識もある。

 

「あ・・・あ・・・あ・・・どうも、お久しぶりです。」

「え~と、何千年ぶりかしら?」

 

「たしか、人間がまだ猿だった頃ですから万年単位ですよ。」

「さすがに思い出せないわね。貴女もまだただの妖精だった頃だし。」

 

「え、えぇ、そうでしたね。」

「そういえば、あの時渡したステッキはまだあるのかしら?」

 

大樹は永琳の問いにバツが悪そうに答える。

 

「あれは、源平の…じゃなかった。2回目の元寇が攻めて来た時に壊れてしまいまして…確か・・・壊れた後は・・・玉名天満宮に仕舞ったはず…。」

「あら、そうだったの?今度持ってきたら直してあげましょうか?」

 

「え、いいんですか?是非お願いします。ただ、変身機能は省いて頂けると…。」

 

永遠亭、意外に直節間接問わず知古が多いかもしれない。

 

 

 

 

「こちらの部屋です。輝夜様がお待ちです。」

 

永琳がふすまを開けると円形の大きな座卓が置かれた部屋だった。

配置的に上座下座がわかりにくくなっている。

あえてだろう。

 

それぞれに私と蓬莱山輝夜が向かい合う形式に整えられてあった。

中央に鍋が置かれていた。

 

「会食形式でいいかと思ってね。私たちは月から降りた身、あまり気を使わないでちょうだいね。」

 

もともと持ち合わせていた気品ある雰囲気と、その場のアットホームな雰囲気が何ともいい感じの空気を作っていた。

 

輝夜たちに進められる形で大樹たちも鍋の輪に加わる。

 

 

お互いの昔話に花が咲いた。

ちなみに竹取物語はほぼほぼ実話だ。

 

「輝夜さんに入れ込んだ天皇って持統天皇?それとも天武天皇かしら?」

「あんまり覚えてないわね。どっちだったかしら?」

 

「そういえば、貴女たちを案内してくれた白い髪の娘がいたでしょ?」

「はい。」

「あの娘は藤原妹紅って言って不比等の娘だったんだけど気が付いた?」

「え、そうなんですか?因果なものですね。天智天皇が中臣鎌足に下げ渡した子の娘が今も生きているとは…世の中は奇妙なことばかりですね。」

 

大樹の顔がほのかに赤い。

大妖精は大樹に水を勧めた。

 

「大樹ちゃん。お水飲んどいたほうがいいよ。なんか今、歴史的にすごい発言があったよ。」

「え、そうですか?」

 

とりあえず、会談はおおむね良好に進んだ。

永遠亭からは技術協力と、一部兎たちの派遣が約束された。

永琳を介して結構古い情報だが綿月の御姉妹の近況の様なものが聞けた。

神武天皇の頃を最後に会った記憶がない。今もお元気にしているようで何よりです。

 

会談も終わりに差し掛かった時に永琳さんが差し出してきた手紙。

 

「そこの八雲紫がつい最近月にちょっかいを掛けましてね。事後処理含めてそのごたごたが終わった時に綿月の姫より預かったものです。」

「ありがとうございます。あとで、読ませていただきます。」

 

「懐かしい話が出来て楽しかったわ。また近いうちにいらっしゃいな。」

「そうしたいのですが、しばらくは私も忙しくて…近いうちに積もる話もありますのでお会いしたいのですが、なかなか・・・。」

「意外と、すぐに会えるかもしれないわよ。」

「?」

 

輝夜たちと別れの挨拶の時、永琳さんが意味深なことを言っていたけど何だったのでしょうか?

 

 

 

帰りの道すがら手紙の封を切り、内容に目を通す。

 

これは・・・

 

『月の都の一部に地上に対し善からぬことを考える者たちがいる。注意されたし…。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに、永琳の予言通りすぐにまた会うことになった。

と言うよりほぼUターンだ。

 

「綿月さまと連絡を取りたい。可能なら八意様のお知恵もお借りしたい。」

「あの手紙を読んだのね。思ったより早く動いたのね。」

 

「はい。喫緊の問題であると判断しました。」

「えぇ、そうね。理解が早くて助かるわ。月の綿月姉妹との連絡は時間がいるの。でも、私も彼女たちも手は打っているわ。すでにうどんげに連絡を取ってもらってるからすぐ来るわよ。」

 

永琳と話し合っていると鈴仙が二人の玉兎を連れて来た。

 

「貴女たち、そっちの金髪の子のは情報管理担当だったかしら…結構な権限を持ってるわよね。」

「えぇ、まあ。情報管理担当ですから…それなりに。」

 

永琳がその隣の青髪の玉兎に視線を向けると

「鈴瑚はイーグルラヴィの実質的な隊長です!」

「あ、おま!?清蘭!何、バラしてんの!?」

 

永琳が鈴瑚と呼ばれた玉兎に指示っぽい言い方で話しかける。

 

「じゃあ、指示書来てるんじゃない?開封しなさい。」

「え、あ、はい。」

 

「えー、綿月家分家に対する要綱。神武天皇即位紀元、綿月家の末裔にあたる国家の始祖たる神武天皇の摂政兼養母である大樹野椎水御神に対し、綿月家として援助を行うものとし綿月家の私戦力の一部を貸与するものとする。大樹野椎水御神の要請を受ける形を取り、各種作戦行動を請け負うものとする。・・・つまりは地上調査中隊イーグルラヴィは大樹様の指揮下に入るという意味です。」

 

「綿月様のご配慮感謝いたしますとお伝えください。それで鈴瑚さん、地球に害意を持っている月の民の派閥とは?」

 

「月の都が女王月夜見様が第一子都久親王殿下。」

 

 

 

 

 

 

 

帰路の車の中で大樹は思案に耽る。

 

月の強硬派、魔法世界の完全なる世界、ぬらりひょん一派・・・。

点と点が線で繋がっていく。

 

旧日本妖怪軍残党には明らかに地球外の技術が加わった形跡があった。

クーデター鎮圧後、刑部狸をはじめとした高位幹部級の古狸たちの大半が自決している。

残党軍はベアードと同盟関係にあったから、その関係から何かわかることがあればいいのですが・・・。

そもそも、残党軍とは名乗っているが一つの組織ではなく終戦を認めなかった部隊や個人の大小さまざまな寄り合い所帯、調べる必要がある。政権を取れれば日本の公安や内調などを使えるがそれまでは今ある手駒でやるしかないですね。

 

 

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