大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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218 平成 日本妖怪内戦前編

 

 

8月29日早朝

 

「諸君らも知っての通り、何者かによって同時多発的に世界11か所のゲートが破壊され、この2週間魔法世界との連絡がとれぬ。非常に危険な状況じゃ!先日の世界樹の発光現象から完全なる世界の残党の線が確実となった。そして、完全なる世界の残党と言ったが奴らはこの20年で残党とは言えない規模に、かつてと同等に回復し魔法世界を混乱に陥れておるとの情報が入った。」

 

学園長の言葉に召集された魔法先生や選抜された生徒ら戦闘要員たちもざわめき始める。

 

「静まれ!話はまだ終わっとらん!・・・完全なる世界は普段ゲートを介してこちらに流れている魔力を封鎖することで魔力溜まりを作り20年前の再現・・・いや、それ以上のことをしようとしておる!恐ろしいことに、その影響はすでに完全なる世界の同盟者たちが動き出したことで目前の脅威となった!これ以上の事態の悪化はなんとしても避けねばならぬ!これより、麻帆良の・・・関東魔法協会は総員即応態勢に入る!弐集院君は図書館等に入り電子精霊戦の体制を取り、指揮を!明石君は学園内の生徒たちの避難を!ガンドルフィーニくんは各国魔法支部との連携を!刀子くんは護国会議との共闘体制の構築を!総員かかれ!」

 

「「「「「っは!」」」」」

 

 

 

 

 

茨城県水戸市大櫛之丘で復活したダイダラボッチは都心部へと移動を開始した。

 

 

『防衛出動の発令に伴い、自衛隊の部隊の移動、任務遂行上の必要な物資の輸送が優先されます。それに伴い関東北部各地で大規模な交通規制が予測されます。車での避難はできるだけ控え各地域の係員の指示に従い、バスなどの公共機関を利用して避難してください。また先ほど政府は人間に友好的な妖怪たちに対して正式に協力を要請するとともに、今回の事態への対処に関して共闘体制を構築すると発表しました。』

 

ニュースの映像が切り替わる。

『はい!こちらは館林上空です!!いつもは交通量の多い国道122号線も閑散としています!利根川橋一体の住民には避難命令が出ています!防衛省はこの辺りのどこかでダイダラボッチを阻止する考えの様です!!』

 

テレビを見ていたぬらりひょんが口を開く。

 

「まずは前哨戦、これで片が付くとは思ってません。いろいろと仕込みはさせていただきましたよ。まぁ、大樹様のお手並み拝見といきましょうか。さて、海外出張から戻ってすぐで申し訳ありませんが。もうひと仕事お願いしますよ。カマイタチさん。旧鼠、あなたもカマイタチに協力しなさい。」

 

ぬらりひょんの言葉でカマイタチが軽く首を垂れるとその場から立ち去り、旧鼠がそれに続いた。

 

「カマイタチたちには何をさせるのじゃ?」

「少々昔の遺物が出てきましてね。少し邪魔なのですよ。あれは・・・。」

 

蛇骨婆の言葉にぬらりひょんは苦虫を噛み潰したような顔で答えた。

 

「大樹織田家が後生大事あんなものを取っておくとは・・・三樹介文書・・・正直邪魔です。」

 

 

 

 

図書館島地下大樹執務室

 

「大樹様、自衛隊によるダイダラボッチへの初期爆撃が開始されました。津田官房長官より官邸危機管理センターに入ってほしいとのことです。」

「津田は織田の分家でしたね。武家は優秀な癖に私に頼りたがる。敵の本命は麻帆良です。ここが敵の本命なのは間違いないのです。」

 

大妖精は政府よりの要望を伝えたが否と答える。

 

「鬼太郎君たちにダイダラボッチの脳の破壊を依頼しています。こちらに向かってきている体は自衛隊に足止めさせますが、超さんのロボットたちにも足止めに加わってもらいたく思います。ぬらりひょんは前哨戦のつもりでしょうが、あれに利用されている七人同行は真剣でしょうから体そのものにかかりきりだと誤解させたいです。私たちはあれを回収しませんと・・・。」

 

 

大樹はそう言って執務室の椅子から降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

三樹介文書、第一次大戦の直前あるいは末期。妖怪と人間が共存する世界が武力によってなされそうになっていた時代。織田幕府国務奉行、織田大樹家16代当主織田三樹介によって起案され作成された妖怪と人間の社会を目指した法整備計画案。内容に関しては今となっては歴史的価値しかない。しかし、こういった意志を持った人間がいてそれを望んで現在までこの文書を残した人間たちがいるという事実は今を生きる妖怪たちの心を動かすに違いない代物であった。

 

大樹が期待し、ぬらりひょんが危険視する世界を変えうる力を持つ文書であった。

 

織田大樹家は16代三樹介を最期に男系が途絶し、三樹介の娘小菊が紀州織田(信雄)家に輿入れして織田大樹家の遺産を引き継いだ。

 

『己は清州織田家の当主なれど、その器ならざりしためしは重々承知せり。器の足らざりしおのれを助けし妖精殿には恩義を感じたり。故に恩義に報はまほしく思ふ。

 

故に以下の家訓を定む

 

紀州藩たるは大樹を守護すべきに、従はばこの信雄の立藩を支へし三妖精に若し二心を懐かば、 則ち我が子孫に非ず、面々ゆめゆめ従うべからず。』※紀州家訓十五か条より抜粋

 

紀州家は初代藩主織田信雄が大樹の側近であった光の三妖精と懇意にしていたこともあり、大樹ら妖精たちに対して現代華族の中では群を抜いて忠誠心が高く、昭和国内最大の親大樹派勢力天導派の最大後援者であり、現在も政党華族会党首織田信春を輩出している人間たちの中での急先鋒であった。

 

「この命に代えても三樹介様の遺された文書を大樹様にお届けいたし候。」

 

三妖精を始めとした妖精たちを伴い先祖代々の鎧を着こんだ信春が螺鈿細工の施された漆箱を大事そうに抱え込んで乗り込んだ黒塗りの高級車が紀州織田家和歌山城から出てきて、門の外に待機していた陸上自衛隊第三師団隷下第37普通科連隊の車両が取り囲み護衛する。警察の白バイ隊が先頭を走り先導し、警察車両が続く。護衛に関西呪術協会の派遣隊も加わる。上空には警察のヘリ飛んでいた。

 

車列は大阪、京都、滋賀、三重を通過し愛知へ

 

「これより、東名高速道路へ入る。」

先導の白バイ隊員が無線で本部へ報告する。

 

 

 

 

 

 

 

「大樹様、護送車列が東名高速自動車道に入ったと知らせが入りました。」

「そうですか。鬼太郎君たちはダイダラボッチに・・・、ネギくんたちは魔法世界。麻帆良の魔法使いたちは防御態勢を取っています。ぬらりひょんが仕掛けてくるのは間違いないでしょう。」

 

「大樹様・・・。」

「大丈夫です。こちらも手の者を護衛につけています。」

 

図書館島地下執務室の私の側には大樹大社の大神官である大妖精と大樹恩顧の妖怪筆頭であるぐわごぜが控えいた。

 

「大宰府の道真公と梅林らには中国妖怪に対する警戒は厳にと・・・中国妖怪は必ず動く。中国妖怪の上陸を何としても阻止するようにと。」

 

大樹はぐわごぜを介して各地の妖怪たちに指示を出す。

 

「っは、そのように大宰府には伝えます。先ほど北方の雪女郎様より古き盟約に従い兵力の約半数を帝露のハバロフスクへ援軍に向かわせ。残り半分を北海道及び東北の守りに回し、少数の精鋭をこちらへの援軍に送るとのことです。」

 

「雪女郎に感謝すると伝えなさい。」

 

「っは。」

 

今度は大妖精が報告を上げる。

 

「東京都が戦場になる可能性を考慮して先ほど内閣で住民の避難の審議のために閣僚たちが招集されました。」

「遅いですね。恐らく当該地域からの避難は実施できないでしょう。となると都の災害時マニュアルに手が加えられたものになるでしょう。」

「・・・妖精たちに警察、自衛隊との連携を密都とし都の守りを固めさせます。」

「任せます。」

「それと、チルノちゃnあ、いえ、チルノには北方の妖怪たちとともにロシアのレティ・ホワイトロックとの連絡役を任せたいのですがよろしいですか?」

「あ、仲良いんですってね。あの二人・・・いいですよ。そうしてください。」

 

側近たちが慌ただしく動き出す。

 

「あ、あの大樹先生。」

 

この執務室にまず踏み入ることのないの者の姿があった。

 

「雪広さん。・・・場所を変えた方がよいですね。」

 

3-Aのクラス委員長雪広あやかの姿があった。

 

 

 

 

 

教室に移動した大樹を生徒たちが出迎えた。

そして、自分たちもネギたちのために何かしたいと訴えたのであった。

 

「皆さん、協力したいと・・・。」

 

だが大樹は、険しい顔をして答える。

 

「ダメです。」

 

生徒たちが一斉に反論する。

 

「今までだって!!」「私たちだって役に立ちたいよ!」「パクティオカードだって!」

 

大樹はさらにきつい口調になる。

 

「今回ばかりは・・・今回のそれは、今までの生易しいものではないのです。京都での出来事や麻帆良でのそれとは大違いなんですよ。昨今各国で起こっているテロは今回のそれの序章の様なもの・・・死者だって少なくない。これから起こることは日本、アメリカ、欧州・・・世界中の国家種族を巻き込んで正面切って大勢で殺しあう。実質・・・戦争なんです!今までの様なお遊びとは違うんです!!皆さんは死ぬかもしれない。死ぬ覚悟があるんですか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『東名多摩川橋にて車列が襲撃を受けた全車急行せよ!繰り返す全車急行せよ!』

 

神奈川県警の警察車両と警視庁の警察車両が多摩川橋のに殺到する。

車列は襲撃を受け自衛隊や警察、それに大樹恩顧の妖怪たちが、ぬらりひょん派の妖怪たちと衝突ししていた。

 

拳銃に銃弾を籠めた警官たちが下車する。

 

「文書を守れ!!」

 

 

 

 

 

 

官邸危機管理センター

 

舘林の防衛線で戦闘ヘリ群による威力偵察が行われ、ダイダラボッチに傷一つ与えられなかった。

以前首都に向かって進んでいた。

 

「総理御決断を。」

「今より、武器の無制限使用を許可します。」

 

新総理に就任した麻田首相が津田官房長官に促され決断する。

 

戦闘ヘリ群、戦車大隊による攻撃が始まり、特科大隊の攻撃もこれに加わる。

 

「効果はあまり見られないようです。」

「爆撃も効果がないのか?」

 

映像にはF-2支援戦闘機による爆撃が開始されている。

 

「全くないわけではありませんが、いま一つの様です。」

「だが、攻撃の手は緩めてはいけません。ゲゲゲの鬼太郎がダイダラボッチの脳を破壊するまではこちらで引き付けなくては・・・。」

 

 

 

 

 

 

大櫛貝塚の地下に隠された洞窟。

そこにダイダラボッチの脳が隠されていた。

 

七人同行の守るダイダラボッチの脳を破壊するために鬼太郎たちはこの場所に奇襲をかけた。

 

「七人同行!お前たちの企みもここまでだ!」

「っく!お前たち、返り討ちにしてやれ!」「「「「「「おお!」」」」」」

 

七人同行が応戦し鬼太郎とその仲間たちに襲い掛かる。

 

「鬼太郎!ダイダラボッチの脳はあれじゃ!」

 

目玉おやじが指す先には祭壇に置かれたダイダラボッチの脳があった。

 

ぬらりひょんが前哨戦と言い切ったこの戦いは当然の様に鬼太郎たちの勝利に終わる。

七人同行は倒されダイダラボッチの脳は破壊される。

 

 

 

 

舘林の防衛線で自衛隊と戦闘を繰り広げたダイダラボッチは体を維持できずに崩れ去る。

 

「目標!沈黙!」

「総理、目標が沈黙しました。」

「目下の脅威は取り除けたな。」

 

「総理、多摩川橋の・・・、そろそろ警察対応では限界が・・・。それとそろそろ大樹様も・・・。」

 

津田が麻田に次の問題の指示を乞う。

 

「な、それは拙い。練馬の普通科と1察戦を向かわせよう。それと大樹様には官邸危機管理センターにおいで頂きたい。」

「再度打診します。一先ずは自衛隊を動かしましょう。」

「文書が到着し次第、この国の内閣として公表しよう。これが、大樹様の願う人妖の共存の呼び水となればよいのだが。そういえば有識者の方々は?」

「招集しています。到着した方から控室へご案内しています。」

「そうか。であれば、我々も支度をしよう。法令の発布の様なものなのだから防災服じゃなくて、背広の方がいいな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書館島の正門に黒塗りのセダンと護衛の警察車両。

 

大樹は側近たちとそれに乗り込む。

 

「皆さんは麻帆良で大人しく待っていてください。ここからは子供の出る幕ではありませんよ。」

 

雪広さん立ちに釘を刺してから警察車両に先導され、大樹たちは麻帆良を後にする。

大樹の言葉はかなり厳しかったため、さすがの3-Aの生徒たちも迷いがあった。

纏め役の雪広あやかも強引にでも大樹や魔法世界に行ったネギや明日菜たちを助けたい思いもあったが、大樹の言葉も重かったのだが・・・。

やはりと言うか。3-A本質は伊達と酔狂、そしてノリだ。

 

「・・・大樹様はこうは言っているけど。麻帆良も魔法生徒たち含めた即応体制に入っているし国としても戒厳令下アル。けども、私たちは自由に動けているネ。大樹様は来ないでほしそうな気がするアルけど。学園長は私たちを抑えに来ないネ~。学園長は学園長の思惑があると思うけど。この場合は・・・そういう事にできるアルよ。」

「そういう事?・・・あぁ、そういうことにね。」

 

そう全部学園長に誘導されてやったことなんです!大樹先生!全部学園長が悪いんです!!ということだ。それでも後ろ髪をかなり引かれるが最初の一歩を進めてしまえばあとは勢いだ。

 

 

 

 

津田官房長官は危機管理センターの会見控室に向かう。

その道中で有識者として集めたうちの一人である女性が控室から荷をまとめて後にしようとしていたのを見かけて呼び止める。

 

「君?どちらへ?時期に会見が始まると思うのだが。」

「か、官房長官さん。あ、わ、わたし行かないと・・・。」

 

官房長官は彼女のプロフィールを思い出す。

「そうですか・・・わかりました。警察の車両を一台回しますのでそれを使ってください。」

 

 

官房長官は官邸の裏口まで彼女乗せた警察車両を見送った。

夕方の薄暗くなる、昼と夜の移り変わる時刻。

 

「逢魔が時・・・戦後最初の繋ぐ者だった彼女。・・・これはやはり運命か。」

 

 

 

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