大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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24 鎌倉幕府と大陸妖怪の影

壇ノ浦の戦いの後、山城国愛宕神社にて大樹野椎水御神と大妖怪たちの間で話し合いが持たれた。鬼の四天王、九大天狗、隠神刑部狸、白蔵主、ぬらりひょん、水虎河童と言った大物たちが集った。

 

「平氏方に大陸の妖怪が加わっていただと?」

「夜叉と言えば、それなりに名の知れた妖怪だ。他にもいた大陸妖怪はかの者の支配下か?」

「そやつは・・・あれほどの大陸妖怪を率いるのか?」

「むむむ、大陸の妖怪についてはわからんことが多い。」

 

鬼たちは難しいことは任せると言う感じで何も言わない。

他の妖怪達は遠慮しているのかあまり喋らない。

天狗たちが議論の中心になって話を進めている。

 

「大樹様は何かお考えでもありますか?」

刑部狸が場の流れを変えようと私の顔を伺う。

 

そうだね。大陸事情に詳しい専門家を呼んでいる彼女の話を聞きたい。皆、よろしいか。

 

私が合図すると愛宕神社の壁が円形状に切り取られてふたが取れるかのように外れる。

鬼たちや一部の物たち以外が驚き一斉に身構える。

 

「あら、少し悪戯が過ぎたわね。ごめんなさいね。」

青娥は軽い調子で謝る。

どうみても本意ではない。

 

青娥娘々。たまたま、日本にいてくれたから都合よく大陸の情報を解説してもらおうと招いたのですが場違いでしたね。でも、適任者は彼女しかいないし・・・。

とにかく、解説してください。

 

「はいは~い。大陸の妖怪たちは最近まで覇権争いで群雄割拠それはそれは荒れてたのよ。それが最近纏まって来てねぇ・・・と。それは置いておいてその今の大陸妖怪の総大将がチーって言う九尾の狐よ。」

 

青娥の説明を聞いた者たちの多くが、驚きの表情を浮かべる。

九尾の狐、天竺、殷王朝を滅ぼした後に日本へと渡り、鳥羽天皇に取り入り国を滅ぼさんとした大妖怪を彷彿とさせた。

 

「きゅ、九尾・・・。」

「玉藻前・・・。」

 

彼らの様子を見て青娥は、まじめな表情になって危機感を煽る。

 

「チーはその玉藻前の弟、大陸を制した暁にはかつての大陸妖怪九尾の後継を謳う都合上、日本の殺生石を手に入れたいのでしょう。そしてこの国も・・・。」

 

 

皆の衆、これで理解できたでしょう。次の戦いに備えねばなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都の朝廷と地方の荘園・公領はそのままで、源頼朝が鎌倉殿として武士の頂点に立ち、全国に守護を置いて、鎌倉幕府を開いた。頼朝は時の権力者として、大樹大社の機嫌を損ねることを恐れていた。そのため、大樹大社に使者を立て敵意のない証拠として相模国足柄(現在の小田原)のあたりに社を寄進する約束をした。相模大樹宮と呼ばれる大規模なものである。

以後の武家政権は政権樹立の際に大樹大社へ社の寄進を行う慣わしが出来た。

 

 

鎌倉幕府は頼朝の主導で体制を固め、1192年3月に後白河法皇が崩御し、同年7月12日、即位した後鳥羽天皇によって頼朝は征夷大将軍に任ぜられた。

 

頼朝死後の鎌倉幕府は、源頼家、源実朝と続いたがいずれも短命の政権であった。その後の鎌倉幕府は有力重臣同士の権力争いを経て北条氏へと継承される。将軍位は摂関家子弟や皇族がつき、執権職を北条家が任ざれる形となった。

 

その後、後鳥羽上皇が討幕の動きを見せたが朝廷内の多くは不支持、私・・・大樹野椎水御神も興味を示さず。後鳥羽上皇の起こした乱は失敗に終わった。(承久の乱)

 

 

私としては鎌倉幕府が私の邪魔をしないと確約している時点でどちらが勝っても構わなかった。仮に後鳥羽上皇が勝ったら以前のように朝廷に自分の意志を伝え動かせばよいだけなのだから。それに予想通り鎌倉幕府が勝つのなら、大陸妖怪との競り合いが予想できる現状武家をより容易く動かせる武家政権は時期的に都合も良いのだ。

 

承久の乱の後で、傀儡になっていた摂関家出の将軍が執権北条家と争い負けた。

まったく、朝廷は健在なのに出先機関の鎌倉の権力などあったところで煩わしいだけなのに、私が朝廷でも幕府でも意のままに従うようにしているのだから要らんことはしないで欲しいものです。

 

「大樹様・・・後鳥羽院が敗れました。」

大ちゃんが私に耳打ちで報告する。

 

皇族を死罪にするような愚を幕府が犯すとは思えませんが、北条には釘を刺しておきなさい。

 

「はい。」

 

私の意向を汲んでか、幕府の当初の予定だったのか。後鳥羽院は壱岐に流される直前に法皇となり隠棲した。

その後の幕府は評定衆に引付衆を設置し支配体制を盤石に固め、法典を発布し実績を作りを行っている。

 

 

次期将軍は討幕に加担した藤原が嫌なら、皇族を引っ張りなさい。大樹の膝元である関八州なれば、朝廷も嫌とは言いはしないでしょう。

 

 

「っは!大樹様の心遣い感謝いたします。」

 

北条時頼は畳に頭を擦り付けていた。

 

京より招く皇族には、幕政には口を出させませんよ。今は大陸との戦に備えるのが第一です。

 

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