大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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32  弘安の役 神集島の敗北

 

大宰府で、神奈子に諏訪子、そして道真や将門たちと戦況を見守っていた私達は天狗の少女射命丸文の急報で事態を理解した。

 

「急伝です!!大天狗様よりの緊急伝です!!元軍に四凶あり!!大天狗様たちが戦っていますが戦況はよろしくありません!!後退しながら戦っています!!直に元軍は上陸するでしょう!!すぐにお仕度ください!!」

 

 

これは私達が前面に立って戦わないといけませんね。

神奈子と諏訪子に目配せすると二人は黙って頷いた。

道真殿、将門殿九州軍の指揮は頼みます。

「任されよ!!」「お任せください。」

 

伊吹童子、星熊童子、茨木童子、皆さんには檮杌の相手をお願いしても良いですか。

 

「檮杌・・・相手にとって不足なしだね。」

ニカッと八重歯を見せて笑う伊吹童子。

 

「いっちょやってやろうかね!」

拳をパンッと打ち鳴らしやる気を見せる星熊童子。

 

「油断できる相手ではないですよ。ですが・・・。」

髪を靡かせる茨木童子。

 

 

太宰府天満宮の楼門が全開に開かれる。

大妖精を中心に妖精巫女たちが唱和する。

 

「「「「「「大樹野椎水御神様、八坂刀売神様、洩矢諏訪ノ神様ぁあ!!御出陣!!!」」」」」」

 

 

 

大天狗たちは押されに押され、玄界灘から唐津湾の神集島まで追い詰められていた。

 

「食うぞ!食うぞ!!食うぞ!!!」

「なかなか頑張ったではないか。」

「こいつらは、飽きた。殺そう。」

「くはははっは!!敵ながらあっぱれとでも言うべきか。とどめを刺してやろうぞ。」

 

「窮奇!!俺、あいつら喰いたい!うまそう!!」

「饕餮、わし直々に止めを刺してやろうかと思ったが悪いなぁ。饕餮の奴が腹を空かせておる。すまんが喰われてくれ。」

 

窮奇が大天狗たちにそう言って、饕餮がその飽くなき食欲を持て余し大天狗たちを喰らおうと迫る。

 

「ぶぎゃっ!?」

 

饕餮の顔面に御柱が食い込む。

 

「悪いね!こいつらは貴様に食わせるほど安くはないんだ。」

二本目の御柱を構える神奈子。

 

「あー、こんな下品な奴。ミシャグジにだって居やしないよ。」

諏訪子が鉄輪を構える。

 

「大陸の妖怪たちよ。分不相応な考えは捨てて国へ帰ってください。」

私もバトンを構える。

 

 

 

「神と戦うのは初めてだが、所詮は矮小な日本の神・・・捻りつぶしてくれる!!!」

檮杌が猪の様な長い牙を向けて突っ込んでくるが・・・。

 

ドゴォ!!

 

横合いからの一発で横転する。

 

「だ、誰だ!!この俺様を殴ったのは!!」

 

檮杌は自分を殴った相手を睨みつける。

 

「いや~、すまないね。あんたの相手はあたし達さね。」

「強そうな相手じゃないか!!楽しそうだぁ!!」

「猪突猛進は猪の角だからですか?馬鹿ですね。」

 

星熊童子が拳を構え、伊吹童子が瓢箪の酒を煽って拳を握る。茨木童子は手刀を向ける。

 

「このアマぁあ!!ぶっ殺してやる!!」

 

檮杌は三鬼たちの挑発に乗って突っ込んでいった。

 

 

 

「い、痛い・・・。顔が痛い・・・。怒った!!お前喰えば怒り納まる!!喰らってやる!!」

 

饕餮が神奈子を睨み、狙いを定める。

 

「はんっ!お前如きに喰われる気はないね!!意地汚いお前は御柱でも喰らってな!!」

 

神奈子は二本目の御柱を撃ち放ち、すぐに減った分の御柱がどこからともなく現れる。

トリックとしては東松浦半島に布陣している妖怪軍乙集団のカマイタチが現地で必死に丸太を加工して御柱を製造しているのだが・・・。カマイタチには頑張れとしか言いようがない。

 

 

 

「私の相手は土着神か・・・。外れかもしれんな。」

 

諏訪子を見て馬鹿にした渾沌。

 

「ふ~ん、そう言ってられるのも今だけかもよ?」

 

諏訪子の方も安い挑発には乗らずに笑って返した。

 

 

そして、私は四凶の首領格である窮奇と相対する。

 

「渾沌はあぁは言ったが、鬼三匹に戦神と祟神・・・それに比べて戦いが苦手な豊穣の神・・・その上、元は妖精・・・一番の外れはワシではないか。軽く捻ってくれる。」

 

窮奇は前足でくいくいと掛かってこいと言ってきた。

 

「私だって、古より生きてきた神の一柱・・・戦えます。」

 

 

 

私達は東松浦半島の方まで戦いながら移動していた。

元の軍勢は肥前、筑前、長門にそれぞれ上陸。数を頼りに攻め寄せた。

各地を守る妖怪や御家人たちは必死に戦いい一進一退の攻防を繰り返していた。

しかし、戦況は一変する。

 

バトンが折れ、立っているのもやっとだった。

 

「くっ。」

 

「妖精よ。頑張ったが所詮はこれが限界よぉ!!」

 

窮奇の鋭い爪が私の体を捉える。

 

「あぎっ!!」

 

御腹の辺りが熱い、それに続いて猛烈な痛みが走る。

 

「ごふっ!」

 

私の口から血が溢れる。

そして、意識は薄れ空を飛ぶ力すら失い地面に吸い込まれるように落ちて行った。

 

 

「なっ!!大樹!!」「ティタ!!」

 

神奈子と諏訪子は御柱と鉄輪を構えそれぞれ渾沌と饕餮を相手取りながら、窮奇の前に立ち、立て直そうとするが・・・。

 

 

 

「た、大樹様・・・。」

「なんてことだ・・・。」

 

下で戦っていた妖怪や人間たちがその様子を目撃してしまったのだ。

 

「大樹様がやられてしまった!!」

「だ、ダメだ!!撤退!!撤退だ!!」

「退け!退けぇ!!」

「に、逃げろ!!もうだめだ!!」

「うわあああああああ!!!」

 

肥前の幕府軍と日本妖怪たちは総崩れとなってしまったのだ。

 

 

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