神器集結
胤仁親王が玉名天満宮に着いた頃には、私の傷もだいぶ癒えて意識も戻り会話もできる程度には回復していた。
「大樹母様!!御無事でっ…!!」
申し訳ありません…。わ、私は負けてしまいしました。
「大緑光ノ精様、これをお使いください。」
「はい」
胤仁親王から塗り薬を受け取った大ちゃんはその薬を私の患部に塗っていく。
胤仁親王は薬についての説明をし始める。
「昔の話でございます。垂仁天皇の妃に極々わずかな期間でしたが月の御仁をお迎えしたことがございました。その妃さまは垂仁天皇と結ばれてすぐに月へ戻らなくてはならなくなり、その詫びにと二つの霊薬を置いて行かれました。一つは良く知られている不死薬、これは富士の山で焼かれております。そして、もう一つの霊薬は手元に残され代々天皇家に引き継がれていきました。どんな傷でもたちどころに癒す薬で黄色粉末で水と混ぜて使います。その黄色い見た目から時の帝たちはこれを蒲黄(かまのはな)と呼んでいます。」
胤仁親王の説明通り私の怪我はすっかり良くなりました。ですが・・・
魔法のバトンも壊れてしまいしました。どうやって戦えばよいのでしょう。
「神杖が折れたのですか・・・。大樹母様・・・神杖が折れることは予想しておりませんでしたが、私は帝より・・・大樹母様のお力になればと神器を預かって参りました。」
胤仁親王が漆箱のふたを開けさせ神器の数々を見せる。
こ、これを使っても良いのでしょうか。
「天照大御神様を始めとした天津神々がお使いになられた神器の数々です。肥前、筑前の戦いに敗れ・・・皇国の存亡の危機を迎えた今。皇国を守るためならば高天原へ行かれた神々も、きっとお許しくださるでしょう。帝はそう思い、万一の際にはと私に託したのでしょう。」
わかりました。天照大御神様、此花咲夜姫様、他多くの神々から託された私の責任です。今一度武器を取り大陸の悪意と戦いましょう。皆さん、戦支度をお願いします。
胤仁親王と大妖精それに従っていた妖精巫女、宮廷神官たちが一斉に頭を下げた。
宮廷神官たちが漆箱や桐箱から布にくるまれた神器を取り出す。
私は立ち上がり、両手を広げる。
大ちゃんと妖精達が私のボロボロの巫女装束を脱がしていき、新しい物へと着替えさせる。
「秋比売の二柱様が手ずからお作りになられました。黒御縵でございます。」
妖精巫女が二人左右に廻り私の髪に飾り付ける。
「皇大神社より借り受けました。千入の靫です。天照大御神様がかつて須佐之男命襲来に備えた際に背負い携えた物です。そして、こちらは腰に携えた五百入の靫。これは私が使います。」
大ちゃんは千入の靫を私の腰に括り付けると自分の腰に五百入の靫を装備した。
大ちゃん・・・大ちゃんは・・・そんな危ないことしなくていいんだよ。
「大樹様、私は神武東征のおりこの身朽ち果てるまで貴女についていくと決めています。だから、置いて逝かないでください。お願いです・・・。」
大ちゃんの涙交じりの強い視線を受けて、すぐには何も言い返せなかった。
だけど、なんて答えればいいかはわかったんだ。
うん、ちゃんといるよ。私はずっと大ちゃんといるよ。どこにもいかないから・・・。
「ごほん・・・。」
胤仁親王の咳払いで、二人の世界から引き戻される。チルノたちがニヤニヤしながら私達を見ていた。少し恥ずかしいけど気を取り直してと。大ちゃんに変わり神官たちが解説を続ける。
「瀧原宮よりお借りしました。稜威高鞆です。」
私の両腕にその籠手を装着していく。
「伊勢神宮よりお借りしてきました。八咫鏡です。」
少し重いこの鏡を革紐で通して首にかけられる。
「帝よりお預かりしました。八尺瓊勾玉です。」
これが私の腕に結わい付けられていく。
「名のある鍛冶職人たちが奉安した天羽々矢を模して作られた矢です。」
私と大ちゃん、それに妖精達の靫に収められていく神聖な矢。
「それと、廣田神社から借り受けた天之麻迦古弓は道中わたしがお持ちします。」
そう言って天之麻迦古弓を大ちゃんが肩にかける。
「鵠沼皇大神宮よりお借りした。天石楯です。」
その盾を背負わせる。
「そして、こちらが伊勢神宮よりお借り受けした草薙剣です。ご武運を・・・。散瑠乃殿は石上神宮からお持ちした天羽々斬をお使いください。」
鞘に入れられた剣は私の腰の辺りに結ばれた。
行こう。みんな、今度は負けない。