玉名にて、身の健在を伝える宣言が行われる。
四国の御家人たちが到着。全国各地の御家人たちも集結して日本軍の混乱は収まり、戦線の再構築がなされる。日本側の動員総数は30万とも50万とも言われているが詳細は不明。
戦場は肥前伊万里と筑紫平野と大宰府福岡平野の3カ所である。
時宗が二番目に号令を掛けた者たちは幕府と奉公の関係にない者たちであり、彼らは自主的に集まって来た者であり、幕府はその詳細を把握できていなかった。
大宰府での戦いは防戦主体だったのに対し、筑紫平野の戦いは双方の主力が激突した非常に大規模なものであった。筑紫平野の決定的な戦いが行われたのは六角川、佐賀、久留米である。
御家人を始めとする武士や雑兵、天狗や河童など数多の妖怪達が見守る中。私達は佐賀にて相対した。
四凶の窮奇と私達はにらみ合う。戦線が広がった分、四凶たちもバラバラに配置された様だ。
私が戦う筑紫佐賀の地は妖怪なら白蔵主と刑部狸の軍勢と天狗たち(天狗の軍勢は細分化されている。)、人間の軍勢は北条時宗の主軍が付いている。
元軍の弓から放たれた矢は弧を描いてこちら側に降り注ぐ、鉄製の盾が殆どない彼らは即席で木や竹で盾を作りそれを構えて身を守り、それすらないものは身を低くし丸くなり耐えた。
元寇軍の弓射撃が終わり、兵たちが前進を開始する。
今度は幕府軍の番だ。
弓を構えた御家人、僧兵、武装神官たちは弦を引き絞る。
「放て!!」
時宗ら将たちの号令で一斉に放たれる。
和弓と呼ばれる全長七尺三寸(約221cm)の弓から放たれる矢は真っすぐに進んでいき前進する元寇の歩兵達を仕留めていく。
弓の撃ち合いが終わると、御家人たちも刀や槍などの武器を持って掛けていく。
激しい打ちあいが繰り広げられる。
地上の妖怪達もこれに参加し始める。妖怪同士で戦う場合もあれば一人の妖怪が複数の人間を相手に戦う場合もある。
「「「これ以上、貴様らの好きにはさせん!!」」」
岩魚坊主と呼ばれる僧服を着た妖怪が元の歩兵に錫杖を向ける。
同数や逆の場合もある。
「どりゃー!!うりゃー!」
猿の妖怪狒々は同じく大陸の猿妖怪雍和を投げ飛ばし、雍和の手下である玃猿(かくえん)たち相手に勇戦していた。
私も精鋭を率いて窮奇のいる陣地まで突入します。
「弓を構えよ!!」
大ちゃんの号令で妖精たちが弓を構える。
私達妖精は小柄なので私の天之麻迦古弓以外は桃の木で出来た小弓でした。
私と大ちゃんは靫から天羽々矢を模した破魔矢をつがえる。
私達は弓を引き絞り狙いを付ける。
「上にいるぞ!!射殺せ!!」
地上で指揮を執っていた虎人(こじん)と言う黄虎と白虎の毛色の獣人が元寇兵に弓を向けさせる。
すると、私が首に掛けた八咫鏡から目を潰さんほどの眩い光が放たれる。
「ぐぁ!?目が!目がぁ!!」
「眩しすぎる!」
「目を開けられん!!」
私達は引き絞った弓から手を離す。
矢はみるみると大陸妖怪達に吸い寄せられるように当たっていく。
「ぎゃ!」「ぐぁ!」「げひぃ!」
巫女たちの矢は薄っすらと光の尾を描き降り注ぐ。
それは端から見れば光の雨の様であった。
光の雨が降り注いだ大陸妖怪たちの陣地は死屍累々であった。
元寇妖怪軍の陣地が蹂躙される様子が遠くからも見えた。
「いまぞ!好機!!」
「者ども!!突っ込め!!」
白蔵主と刑部狸は好機と見て全軍に突撃命令を下す。
「「「「うぉおおおおお!!」」」」
突撃していく妖怪達を見た御家人たち。
「続け!我に続け!!」
騎馬武者の号令に御家人たちが元寇の兵士を切り捨てながら進んでいく。
「怯むな!!行け!!ここで我らが奮戦すれば!!大樹野椎水御神様の助けとなる!!」
時宗も自ら前線に出て刀を振るった。
異常を察知した大陸妖怪の飛行妖怪たちが集まり出す。
大ちゃんは天狗の助っ人たちの隊長射命丸文に声を掛ける。
「射命丸さん、お願いします。」
「任せてください!この程度なら一捻りですよ。」
羽民、化蛇、飛頭蛮と言った飛行妖怪達は護衛の天狗たちが相手する。
護衛の天狗たちは精鋭で、彼らは一斉に切り掛かり、大陸妖怪達を圧倒し追い回した。
私達は全ての矢を討ち尽くすと、私は草薙剣を鞘から抜き、チルノちゃんは。
大ちゃんと妖精達は桃の棍を構える。
「よし!行くよ!!」
チルノちゃんが天羽々斬を抜き、突き進んでいく。
私達はそれに続く。
「オン・キリ・キリ・バサラ・ウン・ハッタ!」
一反木綿や唐傘の掴まって私達についてきている陰陽師たちも真言を唱えて、私達の降下を援護し、続いて降りていく。彼らは安部氏や加茂氏を中心とした陰陽寮の精鋭達だ。
「皆、がんばりんしゃい!!おいどんらも天狗様たちの手伝いに行ってくるけん!!」
陰陽師たちを下ろした一反木綿たちはその場を離れて行った。
「オン・アミリテイ・ウン・ハッタ!・・・巫女様方をお守りせよ!!」
陰陽師たちと妖精たちは共に奮戦し、地上に降り未だ混乱する大陸妖怪達を相手に優位に戦うことが出来た。
人面馬脚で赤い身をし、嬰児のような声を上げ人を喰らう窫窳(あつゆ)に数人の妖精が取り囲み四方八方から殴り掛かる。
「えぃ!」「せぃ!」「たぁ!」「りゃ!」
「ぐぇひぃ!!」
玃猿達をとも接戦を繰り広げる。
「攻め立てるんです!!」「「「おー!!」」」
「やっちまえ!!」「「「ウキー!」」」
「よし!俺たちも行くぞぉ!」「「「うりゃうりゃ!!」」」
勢いでついてきていた南方琉球の妖怪達も攻めかかる。
混戦する中、強大な妖気を隠すことなく現れた窮奇。
二人の虎人を率いて現れる。
「ずいぶんと、色々と引っ下げてきたものだ。お仲間と武具に頼った程度で勝てると思っているのか。羽虫が・・・。とは言え横槍が入ってくるのは癪だ。お前ら相手をしてやれ。」
「「っは」」
虎人二人は私の横に立つチルノちゃんに襲い掛かっていった。
チルノちゃん!?
「大丈夫!ティタ!あたい頑張るよ!」
「「小癪な!!」」
さらに後ろから刑天たちが現れる。
「「「わぁああああ!!」」」
「やらせません!!皆!!」
「「「やぁあああ!!」」」
大ちゃんの号令で妖精たちが刑天たちに立ち向かう。
二人の虎人は如意棒を振り回し、連携しチルノを追い詰める。
「っく!このままじゃ!」
「死ね!小娘!」
如意棒が迫る。
ガキン
チルノに迫った如意棒が飛んできた銭剣に弾かれる。
「ぐぉおおお!!し、痺れる!?だ、誰だ!!」
「誰だとは、つまらないお言葉ね。女の子相手に2対1で襲い掛かるような連中に気の利いた言葉を求めても難しいかしら?」
「き、貴様!」
「なにだと!」
虎人が視線を向けた先には桃の木剣と構えた霍青娥が立っていた。
「男のくせに、そんな手を使うならやり返しても文句は言えないわよね。」
青娥が手に持った鐘を鳴らすと、一斉にキョンシーたちが飛び掛かる。
「く、くそっ!誰か!!あれを何とかしろ!!」
「「「ぶるぁああ!!」」」
数体の窫窳がやってくる。
「あらぁ・・・じゃあ、貴方達は窫窳の相手をしてきて頂戴な。」
キョンシーたちは頷くと窫窳の方へ向かって行った。
そんな、二人に青娥は頬に人差し指をあてる。
「すこし、困ったわ。でも、少しだけね。」
そう言ってもう一回鐘を鳴らすと1体のキョンシーが現れる。
「芳香ー!やっちゃってぇ!」
「ワカッター!」
青娥の命令に従った芳香が飛び掛かる。
「ぐぉ!?こいつ並のキョンシーではないぞ!」
「か、固い!!だが!!」
虎人二人と接戦を繰りひろげる芳香。
「でもって、貴方達の相手は芳香だけじゃないのよ。」
「そういうこと!!」
チルノが天羽々斬で切り掛かり、青娥も呪符を飛ばす。
「3対2でも十分きついんじゃないかしら?」
「「おのれぇ!!」」
一方で私と窮奇は・・・
「一度負けたくせに、懲りずにまた挑んでくるとは・・・さすがは神の端くれと言ったところか。だが、何度来ようと同じ事。」
窮奇、今度はそうはいきませんよ!今です!!
「「「謹請し奉る、降臨諸神諸真人、縛鬼伏邪、百鬼消除、急々如律令!!!」」」
陰陽師たちの言上は符に乗って窮奇に殺到し、閃光を放つ。
「ぐぉ!?生意気な!!人間風情が!!」
窮奇の牙が陰陽師たちを捉えんとする。
が、それを守る様に私の構えた草薙剣がそれを防いだ。
もう一方の腕の稜威高鞆と八尺瓊勾玉に力を込めて窮奇の牙を殴りつける。
バキン
と、音を立てて窮奇の牙が折れる。
「ぐぉおおおおお!?き、貴様ぁ!!」
窮奇が腕を振り上げて鋭い爪のついた腕を振り下ろす。
そこから飛び退いて、窮奇の下に潜り込もうと滑り込む。
「羽虫の小娘がぁ!」
窮奇の斬撃が私の背に襲い掛かるが天石楯がそれを防ぐ。
しかし、勢いは消せず殴り飛ばされる。
っぐ!まだです!
「「「オン・マニ・ハンドマ・ウン!・・・蓮華の宝珠よ!悪しき者を捕らえよ!!」」」
陰陽師たちが放った術が楔を為して窮奇を捕らえる。
「ぬっ!!この程度!!ぬるいわ!!」
ガシャンと音を立てて、窮奇は楔を払い除ける。
私はこの隙を見逃さない。彼らの作ったこの隙を!
窮奇の喉元に滑り込み、草薙剣を突き刺した。
「ぐはぁ!?・・・この儂が・・・四凶筆頭のこの儂が・・・こんな羽虫の小娘にぃ・・・。」
勝った。勝ちましたよ!
私は窮奇の背に乗って草薙剣を突き刺す。
窮奇はピクリとも動かない。
私は鬨の声を上げる。
「四凶筆頭!!窮奇!!討ち取ったり!!」