大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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43 戦国群雄割拠 桶狭間の戦い

天文21年(1552年)以降の三好政権を作り上げた三好長慶は連歌を愛好し、禅を好み、源氏物語などの古典に親しむ風雅の士でもあり、キリシタンに対しても寛容な対応を示すなど、仏教、神道、キリスト教など幅広い宗教を認めた。そのため、仏教内部の対立は沈静化した。

この手法は、かつて大樹野椎水御神が思考した物に近く大樹大社と三好政権は長慶の代の一時的にではあったが友好関係にあった。

そのためか、関東の大樹大社の庇護下にあった元興寺の還俗僧侶が秋大社再建を目的に京入りした。

また長慶の有能な弟達を各所に配置し、大きくなった勢力を統治した。応仁の乱以降の長い戦乱で荒廃した都を復興し、堺の町を一大貿易港として整備するなど精力的に活動した。

 

 

天文23年(1554年)、今川義元は嫡子・今川氏真に北条氏康の娘(早川殿)を縁組し、武田氏・北条氏と互いに婚姻関係を結んで甲相駿三国同盟を結成した。これにより後顧の憂いを断った。

永禄3年(1560年)義元は上洛を決意。今川義元は自ら2万の大軍を率いて駿府を発ち、尾張を目指して東海道を西進した。そして尾張国への侵攻を開始した。

 

「これより我ら今川は西進を開始する。向かうは尾張、織田が囲いし豊かな土地よ。大うつけと噂される当主信長の器量、この義元が測り、見極め・・・・・・そして、必ずや飲み込んでくれようぞ。」

 

義元は織田家を完全に屈服させ、京都への道を切り開こうとしていた。

 

 

SIDE尾張津島港

 

今川が攻めてくる。

この事態を聞いた尾張の民はたいそう動揺した。

勿論、運悪く居合わせた旅のものも同様だ。

 

「えらいこちゃ!織田様もお仕舞じゃ!」

「もう、鳴海の方は攻め落とされたらしいぞ。」

「近江の方にでも逃げるか・・・」

「わしらの様な行商や旅人はまだしも、ここに住んでる皆の家財はどうするんだ?」

「戦になれば、乱捕りで酷い目に合う・・・困った。」

「どうしたものか・・・。」

 

話し合う人々、町人たちは肩を落とし困り果てる。

そんな中、小箱を持った幼げな童女が話に入ってくる。

 

「それなんだけど…実はわたし、制札の写しを持ってるんだ。」

 

町民たちはニンジンを模した首飾りをした彼女に喰いつくように話しかける。

 

「ほ、本当かい!!」

「お嬢ちゃん、いったいどこで?」

 

町民たちの言葉に少しおどおどしながら彼女は答える。

 

「うん、前に今川の重臣の家で奉公してた時に、こっそり書き写したの。良ければ売ってあげるよ。」

 

「それは本当に今川様の乱捕り留めの制札なの!?」

 

「疑うなら買わなくてもいいよ。欲しい人間はいくらでもいるウサ。」

 

制札を疑う者もいたが、彼女の答えに彼らは決断した。

 

「ま、待て!買う!いくらでも買うから売ってくれ!」

「買った!いくら払えばいい!」

「俺もだ!」「私も!」

 

(うししし・・・儲かったウサ!)

 

制札を売り切った彼女は隠していた兎耳をぴょこんと晒して、元来た道を戻っていく。

その途中で彼女と同じような耳をした少年少女たちが寄り集まってくる。

 

「よぉし!あんた達!他の尾張の町でも制札を売れただろうね!」

「もちろんでさ!てゐさん!」

「ガッポガッポですよ!尾張の人間ども町人でも結構持ってましたよ!」

 

てゐと呼ばれた彼女は笑って応じる。

 

「尾張は景気の良い国だからね!こういう時は結構吐き出してくれるよ!これなら、結構な間やってけるだろうさ!何せ月の御仁は雅だからねぇ・・・お金がかかるのさ!」

 

 

 

SIDEOUT

 

「と、殿、お待ちくだされ!!」

「何じゃ!」

「あまりに急なご出立ゆえ、兵が集まっておりませぬ!」

「よし、ここで小休止じゃ。権六、後続の兵を纏めい!」

 

松平元康と朝比奈泰朝は織田軍の丸根砦、鷲津砦に攻撃を開始する。前日に今川軍接近の報を聞いても動かなかった尾張の小大名織田信長はこの報を得て飛び起き、幸若舞「敦盛」を舞った後に出陣の身支度を整えると、明け方に居城清洲城より出発。小姓衆5騎のみを連れて出た信長は朝頃、その後軍勢を集結させて小休止に入った。

 

「殿いずこへ?」

「少し考え事をしながら歩きたい。時間はかけぬ故、権六はそのまま後続を纏めておけ。」

「っは!」

 

ふらりと歩き出した信長に家老の柴田勝家は不審に思い声を掛けた。

が、信長は軽く勝家を手で制しながら気にするなと告げて歩き出して行った。

 

ふらりと歩いていくうちに信長は鳥居の前までたどり着いた。

 

「確か、ここは、神社だったか・・・。神主は不在か?」

 

神主はいないのかと信長は周囲を一回りすると、ひょっこりと巫女が顔を覗かす。

 

「あら、参拝の方ですか?こっちに来る方はめずらしいですね。」

 

巫女は少々幼く見えたが、何か思わせる雰囲気があった。

巫女は神楽舞の鈴を社において歩み寄ってきた。

 

「立ち寄っただけだが、そういえばここはどう言った神を祀っているのだ?」

「大樹野椎水御神様と言って土地や水の力を清め強める豊饒の神様ですよ。」

「そうか。」

 

巫女は信長に微笑んで見せた。

 

「・・・・・・・巫女よ。籤引きはあるか?今川との戦の吉凶を占いたい。」

「少しお待ちくださいね。」

 

そう言って巫女は神殿の方に入っていき、比較的すぐに籤引きを持って戻ってきた。

信長は籤を引いて中身を確認する。

 

 

「うむ・・・。」

巫女は信長の御神籤をのぞき込んで読み上げる。

 

「吉兆ありて、福増してなお日すすんで望み事の多くは心のままになる。しかし、思いがけぬ災いに気を付けられたし。・・・・・・・・今川の戦は勝てそうですね。」

 

「最期の方が凶兆にも感じるのだが・・・」

「油断しなきゃ勝てるってことでは?」

「そうか・・・邪魔をしたな失礼する。」

 

信長はそう言って社を後にした。

 

「きっと、貴方の勝ちでしょう。」

 

巫女も社の中に戻っていき、鈴の音が聞こえてきた。神楽舞の練習を再開したのだろうと信長も鳥居を越え元来た道を戻って行った。

 

 

ふらりと戻ってきた信長に勝家は声を掛けた。

 

「殿、どちらへ行っておられたので?」

「あぁ、随分幼い巫女であったがな。そこの神社で吉凶を占ってもらったのよ。なかなか良い結果であったぞ。」

「そうでございましたか。でしたら次は城の近くの桃園大樹宮に行っては・・・ん?あそこの神社は去年老神主が亡くなって誰もいないはずですが?」

「・・・・・・何?」

 

 

 

 

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