大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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46 大樹信長記 神に愛された覇王

永禄9年(1566年)、信長は、木曽川を渡って河野島(現在の岐阜県各務原市)へ入った。それを知った斎藤龍興は直ちに河野島へ進軍し、織田側は川べりまで後退して布陣した。斎藤側は、境川を限りとして守備したが、翌30日に木曽川が洪水となったため、両者は動きが取れなくなった。漸く、川の水が引き信長は渡河を兵に命じた。

 

織田軍が渡河を命じて、しばらくゴゴゴと音が聞こえると引いていたはず水が押し寄せてきたのであった。

信長は慌てて引き返すように命じ、自身も戻ろうと踵を返したが時すでに遅し川の水はすでに目前まで押し寄せていた。

 

すると、信長が懐に入れていた黒御縵が川に落ちてしまう。

拾おうと手を伸ばした瞬間たちまち蔓が伸び枝が生え、押し寄せる川の水をせき止めたのであった。

 

織田軍はそのおかげで撤退することに成功した。

 

信長は、清州城に戻るとすぐに桃園大樹宮へ走った。

 

「巫女の娘よ。」

 

信長は巫女の姿を見つけるとそのまま駆け寄った。

 

「巫女よ・・・おぬしは・・・。」

 

大樹は信長に渡したはずの黒御縵が無い事に気が付きすべてを察した。

 

「気づいてしまったのですね。」

 

大樹は悲しそうな顔をして妖精の羽を広げた。

 

「信長様、私は貴方の気質を理解しています。貴方は独立独歩の強い人、私のしたことも好ましくは思わないのでしょう。ですが・・・!?」

 

信長は大樹の細腕を強く掴み、天高く舞い上がろうとした大樹を引き戻した。

 

「我が命を救った者を、誰が憎く思うものか!そもそも俺は桶狭間でも、此度でもお主に救われた。浅井との同盟でも一計が加わっていたのは気付いていた。自分に好意で手を貸してくれるものを邪険にするほどのうつけではないぞ。」

 

信長は私をそのまま神殿の床に押し倒した。

 

「俺もおぬしほどの存在に目を掛けられるほどに才を認められていたのか。」

「はい・・・っっ!」

 

信長は私の顎をクイと反らせると、唇を奪った。

 

「あぁ・・・。私は、貴方がこの国を導くにふさわしいと・・・。」

「為政者として嬉しい言葉だ。だが、それじゃあない。」

 

私の胸の鼓動が激しくなる。吐息が熱くなるのを感じる。

 

「わ、私は・・・の、信長・・・貴方をお慕いしています。」

「そうだ、それでよい。大樹野椎水御神、いや大樹!」

 

信長の鎧が外れガシャンと音が鳴る。

私の巫女服が脱げ肌があらわになっていく。

 

「はい。」

「お前はこれから俺のそばで俺の天下取りを手伝ってくれ。」

「喜んで・・・。」

 

私達は、神殿の中でお互いを強く求め合った。

この国を変える男とこの国を守る女が一つになった。

 

翌年、斎藤龍興を伊勢国長島に敗走させ、美濃国平定した。

稲葉山城を岐阜城と改めた信長の横には薄羽を生やした幼い巫女の姿があった。

 

 

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