大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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48 大樹信長記 上洛の戦い

本陣の観音寺城に当主・義治、父・義賢、弟・義定と馬廻り衆1千騎を、和田山城に田中治部大輔らを大将に主力6千を、箕作城に吉田出雲守らを武者頭に3千をそれぞれ配置し、その他被官衆を観音寺城の支城18城に置いて態勢を整えた。

 

 

織田軍は愛知川を渡河すると、3隊に分かれた。第1隊が和田山城へ、第2隊は観音寺城へ、第3隊が箕作城へ、残りの者たちが周辺の各城や砦に向かった。

 

戦端は箕作城でひらかれた。木下隊2千3百が北の口から、丹羽隊3千が東の口から攻撃を開始した。この箕作城というのは急坂や大木が覆う堅城で、吉田出雲守隊の守りも固く、苦戦を強いられていたが午後三時頃に加わった天狗たちの助勢により門戸は討ち破られ、

夜までには敵を本丸まで追い詰めた。7時間以上戦ったその日のうちに夜襲を仕掛けてくるとは考えてもいなかったのか箕作城兵は驚き、防戦したが支えきれず、夜明け前に落城してしまった。200以上の首級が上がった。

翌朝、箕作城の落城を知った和田山の城兵は敵に備え防御を固めたが敵の姿を見た城兵は我先に逃げ出した。

彼らの視界に移ったのは空を舞う天狗たち、城の正面で隊列を組む妖怪達。

その中央では葉を広げた大樹の紋が描かれた旗を掲げる神官が立っておりその陣の周りを守る様に武装神官と戦巫女らが武器を持って整列していた。

 

尾張桃園大樹宮の宮司と近江琵琶大樹大社の宮司が陣内で妖精巫女の言葉を聞きつつ指揮を執っていた。

 

「和田山の兵達よ!上洛は神意である!これに抗うは天津神々の意向に背くと理解せよ!

これより一刻より城を明け渡さなければ!神罰を下すものである!!」

 

神罰を恐れた城兵は農民上がりの雑兵から、武士たちまでたちまち逃げ出したのであった。

また、砦の多くが上洛軍の各軍に攻め落とされて行った。

 

 

その過程で、織田軍に加わった美濃衆1万、尾張の後詰1万、徳川の派遣軍第二派5000、足利義昭の手勢200、三河美濃尾張近江の妖怪達およそ5000、その総計は5万超えた。

さらにその頃には河童の隠れ里より届いた火縄銃3000丁が織田軍に献上された。

 

 

迫りくる人妖合わせた5万超えの大軍勢を前に、六角親子は周囲から敗走してきた兵達を搔き集めた4千の兵では観音寺城を守り切ることは出来ぬと思った六角承禎は息子の義治と共に戦わずして夜陰に甲賀へ落ち延びた。

当主を失った18の支城は、1つを除き次々と織田軍に降り、ここに大勢が決した。

 

六角家老臣の蒲生賢秀は、敗北を聞いてもなお1千の兵で日野城に籠もり、抵抗する様子を見せていた。しかし、賢秀の妹を妻としていた織田家の部将・神戸具盛と大樹大社の妖精巫女・水楢が日野城に乗り込んで説得した結果、賢秀は降伏し、信長に人質を差出して忠節を誓った。この人質が後の蒲生氏郷である。

 

六角氏は観音寺城を失ったが、それでも織田軍に対して抵抗の姿勢をみせた。しかし、本領を失った六角氏の勢力は奮わず、小規模な戦闘が精一杯であった。戦国大名としての六角氏の没落は決定的なものとなった。

 

 

観音寺城陥落と同時期、武装した妖精巫女たちが京入りした。

向日葵の髪飾りに向日葵の飾り彫りが施された薙刀や小太刀、弓を装備した一団は大樹恩顧の大妖・風見幽香から直々に手ほどきを受けた精鋭の集団、向日葵衆であった。

彼女たちは京都を支配する三好やその背後のぬらりひょんの目を掻い潜り、白蔵主が幽閉されている伏見稲荷大社へ入った。

 

大樹大社の使者である彼女たちを白蔵主は秘密裏に迎え入れ、大樹野椎水御神よりの書簡を受け取った。

 

「大樹野椎水御神へお伝えください。我ら妖狐の一族は御神の上洛を心より歓迎します。我らは上洛に合わせて決起いたします。」

 

白蔵主は畿内に潜む一族の妖狐たちに武装化を指示し山城国へ集結促し、各地の稲荷神社に潜むように命じた。

 

 

 

対する京のぬらりひょん及び三好政権では足利義栄と三好三人衆が京の守りを固め、ぬらりひょんは境港まで引いていたが手勢の一部を山城国へ派遣し、上洛軍に盾突く動きを見せていた。

 

一方で三好政権の宿老松永久秀に対して、大樹大社の神官を使者に立て筒井順慶らを諭し戦わせ上洛の戦いに関わらせないようにした。

さらに三好政権内で勢力を失いつつあった三好義継を懐柔し、上洛に協力させた。

 

上洛軍が瀬田川を越えた頃、伏見稲荷大社の白蔵主が周囲の稲荷神社に潜ませていた配下の妖狐たちと共に決起。

 

「者ども!!大樹様を!!織田候を京へ迎え入れるのだ!!」

 

京都の各所で戦端が開かれた。

 

三好政権軍は背後の敵と上洛軍の大軍に挟まれて、白蔵主の手勢に京より追立られ、

三好三人衆と足利義栄は苦も無く上洛軍に一蹴され阿波へ逃げ延びた。

 

翌週には白蔵主より連絡を受けた四国の隠神刑部狸は、先んじて使者を送ったたんたん坊に次いで配下の親分衆を率いて上洛し、大樹と信長に拝謁賜った。刑部狸は暫く京に残り大樹の補佐に廻り、配下の化け狸たちに四国で三好攻めを行うため最近勢力を伸ばしつつある長曾我部氏と結び、軍勢を用立てるように命じた。

 

時を移さず正親町天皇は信長に禁中警衛の綸旨を与え、さらに翌月足利義昭を正式に征夷大将軍に宣下した。

 

 

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