上洛を果たした信長は京へ織田の軍勢2000を義昭の護衛に、1万を禁中および京都警護の兵として配し、東寺へ入り上洛軍は一度解散された。
信長は大樹の意を酌んで朝廷の施設である朝堂院、内裏の七殿五舎の再建を約束し、秋大社再建の寄進を行い、将軍邸の造営を行った。
「将軍は手中に、朝廷は私が協力させました。信長・・・今や貴方の天下布武を阻むものはいませんね。」
「京都の者どもは日ノ本六十余州の事など全く念頭にない・・・笑止の限り。」
「お恥ずかしい限りです。ですが、これから変えていきましょう。」
大樹の言葉に信長は頷き、信長は襖を開けて廊下に出ると別室に待機する家臣たちに命令を下した。
「摂津・和泉・大和を始めとする畿内一円の寺社に矢銭を命ぜよ!いずれも千貫以上!ただし石山本願寺と堺衆は五千貫と二万貫以上じゃ!」
「なんと!他はともかく、本願寺と堺はいかな大殿とて従いませぬぞ!」
驚く家臣たちの言葉に信長は笑って答える。
「はっはっはっは!!望むところじゃ!!兵を動かすと言うのなら相手になってやろう!!」
一方の大樹は摂関家の一条内基と結びつき、朝廷勢力の掌握を画策した。
この頃の大樹は直接朝廷に姿を見せることはなく一条内基を挟んで自身の謀政を執り行っていた。
「内基殿、私は禁裏軍が欲しく思うのです。」
「大樹殿は織田の軍では足りぬと申すか。」
「軍事力としてではありません。政治的な意味合いで欲しいのです。今の世において朝廷の言葉を蔑ろにする者は多く、武力で捻じ曲げるものすらいる。そう言った者たちから身を守るため、勤皇の者たちが駆け付けるまでの時を稼ぐための軍が欲しいのです。」
「それに、土佐の身共の家の者らが必要と申すことであらしゃいますな。」
「土佐の一条家から長曾我部家へ土佐を穏便に引き渡すことを織田家が仲介する形を取れば、長曾我部家は織田家に借りを作ることが出来ますので・・・。」
「四国の大半は長曾我部にくれてやると申すことであらしゃいますやろか?」
「すべてとは言いませんが、土佐と阿波はくれてやっても良いでしょう。四国には刑部が居ます。・・・部不相応に欲しがるようなら相応に処分されるまでです。」
「それは、天意に背く様な真似・・・恐ろしい事であらしゃいますな。怖い怖い。とにかく、遅くならあらへんうちに土佐の一族の手勢を呼び寄せおす。」
「うまく手引きしてくだされば、関白就任も手に届きますからね。期待していますよ。」
その後、秋大社再建の指揮を執るために自身の直臣であるぐわごぜの元興寺に居を移し、白蔵主と刑部狸を呼び出した。
「大樹様のご尊顔拝謁しまして、光栄の限りでございます。」
「我ら、八百八狸衆も京より離れた四国の地が本拠ではありますが微力を尽くさせていただきます。」
白蔵主と刑部狸は平伏し臣下の礼を取る。
「私も、俗世に深く関わらねばならぬ時が来たようです。人の世は織田殿が、人ならざる者たちの世を選ばれた妖怪達が、そしてそれらを私が治めようかと思います。しかしながら、ぬらりひょんは姿を隠したまま反旗を翻し、鬼たちは不干渉を貫き、天狗たちは意見を纏められず不透明、たんたん坊は東北の地にあり遠すぎる。白蔵主、それに刑部狸よ。私のために、俗世に関わるのなら私と言うよりは妾の方が様になるか・・・。ごほん、妾のために尽くしてはくれぬか。」
「た、大樹様!!」
「そのお言葉は・・・!!」
「妾のためにその手腕を振るい妖怪達を纏めてはくれぬか。」
「「っははぁ!!謹んでお引き受けします!!我ら妖狐狸の一族は大樹野椎水御神様に絶対の忠誠をお約束します!!」」
大樹は着々と朝廷の掌握に駒を進め、妖怪達の再度掌握に動き出していた。
上洛を果たし、征夷大将軍の座に就いた義昭は、幕臣・細川藤孝、一色藤長、三淵藤英、和田惟政と言った幕臣たちを集め、義昭を奉じた信長と会見した。
「そちの武勇、天下第一じゃ!ふひゃひゃひゃははは!!儂が将軍となれたのは織田殿のおかげよ!!その礼にそちを管領に任ぜようぞ!!」
信長は黙って首を横に振る。それを見た義昭は
「ん?管領では不足か?では、奮発して副将軍でどうじゃ!!」
信長は含み笑いをして、義昭の話を固辞した。
それを見た義昭は、卑猥な笑みを浮かべ上座から降りて信長に近寄る。
「なんじゃ・・・欲のない男じゃのぉ・・・。ふふふ、女子か・・・都の見目麗しい女子がた~んとおるぞ!ふひゃはははっはは!!!」
有頂天になっている義昭を尻目に細川藤孝が声を上げる。
「織田殿の事ですよって、もののひと月もおしたら畿内の不埒共を一掃する準備、整わはるでしょうなぁ。」
「この信長、もとより京に織田の旗、打ち立てるつもりでした。そして、織田の軍旗を京に打ち立てた今、我らを阻むものはおりませぬ。不埒者どもの一掃は安心してお任せください。」
信長は松永久秀が筒井城落城させる前に筒井順慶に援軍を派遣し、若狭武田の内乱に干渉する等して天下の支配者としての実権を握りつつあった。
また、妖怪達の手綱を握りつつある大樹も武田上杉の戦いに相互する姉小路家内の問題を煩わしく思い。飛騨の天狗たちに姉小路家の地盤を固めさせるように命じた。