大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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戦国時代って書いてて楽しいです


50 大樹信長記 にとりと秀吉

信長は畿内の統一を目指す一方で永禄12年(1569年)、南伊勢の北畠氏を下す為、丹羽長秀を大将に滝川一益、池田恒興、木下秀吉を中心とした6万の軍勢を発した。

 

「神を味方に引き込んだ信長様に負ける要素などなかろう。」

 

長秀は満を持して岐阜を発った。

この頃の織田家では宿老階級の重臣たちは大樹の存在を知らされていた。

ただ、それ以外の者たちにとって信長は妖怪すら操る得体の知れない存在であり、後に名乗った第六天魔王などはまさしくであった。

 

そして木造城主・木造具政が織田側につく。織田の武将・滝川一益の調略であった。対する北畠具教は木造城を包囲し攻撃するも、滝川、神戸氏、長野氏の援軍もあり、

長秀本隊の到着まで木造城は持ち堪えていた。

 

長秀本隊が到着した時には北畠軍は既に囲みを解いており、1万6000の兵を天然の要害である大河内城とその支城に分散させ籠城していた。大河内城の北畠軍の兵数は8000であった。

長秀は軍を分散させ、支城包囲を命じた。

織田軍の木下秀吉が阿坂城を攻撃、落城させると言った活躍を見せるがそれ以外の支城は攻め落とされることなく持ちこたえていた。

 

大河内城を包囲する丹羽長秀は配下に命令を出す。

 

「石火槍衆を連れて来い。」

 

長秀の命令で大河内城包囲軍に巨大な武器を持った山童の集団が加わった。

彼らが用いるのは明で発明された火槍(ハンドガンの一種)の改造品で、後装式にした物であった。

 

大砲程の威力は無いが、鉄砲以上の威力で城壁や城門の一部や装飾部分を破壊した。

 

ドカン、ガツン、ガシャン

 

攻撃が加えられるたびに少しづつ崩れ傷ついていく城壁や城門。時折、城内の蔵や櫓にあたり、当たり所によってはそれを破壊していく。

長秀はその光景を見て感心した。

 

「山童の石火槍衆、見事な働きだ。国崩しに相応しい。」

 

この包囲は一カ月ほど続き、信長の次男である茶筅丸(織田信雄)を具教の息子具房の養嗣子とすること。大河内城を茶筅丸に明け渡し、具房、具教は他の城へ退去すること。

 

という、織田側に有利な条件で織田家と北畠家は和睦した。

 

 

この戦いで解る様に河童及び山童の隠れ里は軒並み大樹の命にしたがい織田に協力した。

大樹が導いた織田の畿内統治に妖怪達も態度を次第に鮮明にしてきた。

 

鬼の四天王は完全に中立の立場を取り静観を決め込んだ。

東北のたんたん坊は京までの上洛とはならなかったが関東の大樹大社に参内し、大樹大社を預かる大妖精に大樹方に付くことを約束し、妖怪城の完成が近いことを報告した。

河童や山童の隠れ鍛治里はほとんどすべてが、大樹と織田家に臣忠すると約束しすでに沢山の火縄銃と焙烙火矢、そして彼らの独自兵器石火槍の納品が始まっていた。

彼らは攻城兵器の製造も請け負い、屋根と車輪のついた破城槌や移動式の攻城櫓の製造も行われた。

また、彼らの研究意欲が高いことに着目した信長は彼らに新兵器の開発を命じた。

すると彼らは徳利に可燃性の液体を充填した、初歩的な焼夷爆弾を開発して見せたのだ。

信長はさらに西洋の兵器であった大砲の開発を命じると臼砲形式の射石砲を開発した。

中世に用いられた最も初期の大砲の一種であったが独力で短期間でそれに追いついたことを信長は大層喜び、褒美に彼らの望む鍛冶道具や炉を優先的に用意し、これらの製造を命じた。

 

信長に河童山童との交渉を任せられた木下秀吉は河城氏族の河童の鍛冶里を訪れた。

着々と数をそろえる兵器群であったが、信長は堺攻めの為に更なる増産を望んでいた。

 

「河城の長老さんよぉ。製造速度を上げることは出来んのか?」

「申し訳ございませぬ。我ら河童山童の氏族全てが総力を挙げて製造に心血を注いでおりますが、これ以上は難しいのです。」

 

秀吉はふと河城氏族の娘が石射砲の開発を取り仕切っていたことを思い出す。

 

「河城の長老さんや。確かこの里には石射砲の開発を取り仕切っていた者がいたはずだが?」

「儂の三番目の息子の娘じゃったか。それが何か?」

「直接会って、意見を聞きたい。これだけのもんを作る者なのだから、良い案を提案してくれるかもしれん。よかよかぁ!早く連れてきてくれ。」

 

長老は秀吉に頭を下げるとその河童の少女を呼びつける。

 

「にとり!にとりや!織田家の木下様が御呼びじゃ!」

「わかったよ!じいちゃん!今行く!」

 

河城の長老に呼びつけられた河童の少女にとりは煤で汚れた顔を手近な布で拭うと、秀吉の下に駆け寄ってきた。

 

「木下様!なにか私に御用事ですか?」

 

快活な言葉に、元農民だった秀吉は思わず。威厳ぶった言葉遣いを忘れ素の言葉遣いに戻る。

 

「おぉ!元気な娘っ子じゃなぁ!オラの嫁の寧々も結婚したころはこれくらい元気じゃった!今じゃ、随分と武家の嫁に染まっちまってなぁ・・・。じゃなかった!?河城の嬢ちゃんや、これらの武器をもっとたくさん用意することは出来んか?近々、堺衆と戦うかもしれん。あいつら、銃や砲を仰山抱え込んどるからな!何とかしたいんじゃ!」

 

秀吉の頼みを聞いたにとりは少し考えると口を開く。

 

「木下様?堺の町衆との戦いで必要とおっしゃいましたか?」

「そうじゃ?」

 

「その戦いのみの使い捨て前提であれば案がありますよ。」

「なんじゃと!それはいったい!!」

 

にとりの答えに秀吉は喰いついた。その目は爛々と輝いていた。

 

「銃は無理ですが、砲に限っては材料を鉄でなく木や竹をくり抜いて縄で補強すれば代用は可能です。耐久は落ちますが、堺の戦いのみで必要とあらば数をそろえるのは簡単です。木や竹をくり抜いたり縄で補強するのは、そこらの民百姓でもできますので彼らの副業にでもしてやれば簡単に数が揃いますよ。」

 

「なんと!それは名案じゃ!にとりの嬢ちゃん!あ~りがとうっ!!」

「うわわ!?抱き着かないで!!猿顔のおじさんが抱き着いてくる~!?」

 

動揺するにとりは勢い余って秀吉を突き飛ばしてしまうが、秀吉は笑って許した。

 

「さ、さすがは河童・・・若い娘っ子でも強いなぁ・・・。」

 

織田軍は秀吉とにとりの献策によって、堺衆と戦えるほどの火力を揃えることに成功するのであった。

 

 

 

 

 

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