大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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56 大樹信長記 義昭の企み

 

比叡山焼き討ちの影響は思いの外大きく、すでに敵対している本願寺は信長を仏敵に指定。徹底抗戦を決断した。それ以外の寺院は破戒僧溢れる叡山について腹にある物はあったが、信長の行動に恐怖し表立った行動を控えた。さらに各宗派の代表者たちは信長の動きに伊勢神宮、大樹大社、浅間大社と言った神社衆が支持を表明したことに驚きが隠せなかった。

 

この事態を少しでも緩和させるために東大寺の一角を借りて、大樹野椎水御神はある人物と会談に臨んだ。聖白蓮、命蓮聖の姉であり妖怪との融和を考える派閥の長であった。真言宗でもかなりの影響力を持つ彼女との会談で、仏教内の穏健派を取り込もうとしたのだ。

 

「妖怪と友好的な関係を築く大樹様のお考えは一定の理解を持って受け入れられるものでしょう。多くの部分で意見の一致を見ました。」

 

白蓮との会談は一応の成功を見た。

 

「大樹様は神道が主、仏教が従とおっしゃいましたが日ノ本においてこれの上下を決めるのは無意味な争いを生みます。神仏習合の考えにおいてはこの部分はあえてあいまいにしておくべきではないでしょうか。」

 

一定の課題を残したが、大樹、織田信長は真言宗の協力を得ることとなる。

 

 

 

 

 

一方、三好義継を擁した三好三人衆は摂津に上陸し瞬く間に制圧、石山本願寺の蜂起に伴い一向一揆衆が決起、信貴山の松永久秀と協調する動きを見せる。この動きに根来衆・雑賀衆が同調し、織田方の畠山昭高を紀伊から追い出した。河内国へ戻った昭高であったが状況は悪化し、大和国へ逃げ込んだ。

 

大和国の筒井順慶は織田に味方することを決断。東大寺大仏殿放火など三好方に敵対的な大和国の寺社衆は筒井家に全面協力を申し出た。そのため、多くの僧兵の協力を得た筒井家は大和国の国境を固め松永を中心とした敵方の侵入に備えた。

 

 

また、足利義昭は比叡山より落ち伸びた斎藤龍興と六角親子を匿い決起に備えた。

 

「石山本願寺に一向一揆衆、三好に松永は和泉と河内、摂津の過半を掌握。紀伊の畠山を叩き出した根来衆と雑賀衆。一色氏、波多野氏、包囲は仕上がりつつあります。後は信玄公の上洛を待つばかり・・・。」

 

一色藤長が義昭や他の幕臣たちに説明する。信玄公上洛の目途もつき、勝利を確信していた。

 

「藤長、大義であった。」

「ありがたきお言葉です。」

 

義昭は龍興の方を振り返り彼らも労う。

 

「龍興殿に六角殿もここで無念を晴らせるだろう。うんうん。」

「絶対、織田を滅ぼしてやりますでがなぁ。」

「南近江に伊賀の領国、取り返して見せます。」

 

義昭は周りに挨拶を済ませてから、藤長を連れて席を立つ。

屋敷の裏庭まで行くと、赤いでかい顔の妖怪と風格のある老人が待っていた。

 

「おぉ~。お待たせしましたぬらりひょん殿!」

「うむ、義昭殿?手筈はいかがかな?」

 

「信玄公が動いてくださいましたぞ。」

「諏訪大社が邪魔をしなかったのか?」

「信玄公もなかなか、諏訪家を力で黙らせて、快川上人ら仏法の術者と鬼道衆を使い諏訪大社を封じたらしいですな。」

 

その話を聞いたぬらりひょんは信玄が掌握する神すらをも封じる退魔の者たちに警戒を覚えたが、そのことは顔に出さずに義昭との会話を続ける。

 

「それは重畳、こちらも天狗共が内輪もめをしている隙に両面宿儺の封印を解いてやったぞ。」

「ありがたい。これで京の狐狸どもは問題にならなくなった。幕府再興にも手が届きましたな。」

 

 

 

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