大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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59 大樹信長記 京都決戦

京の町では織田狩りを称して町衆に乱暴狼藉を働き、多くの貴族達が被害を恐れて御所に避難していた。

 

一条内基は四国一条家から引き揚げさせた武士たちをそのまま内裏の守りに回していた。

 

「幕府よりの使者である。門を開けよ!」

 

幕府の使者を拒否する内基。

 

「帝のお目通り願いたくば、京での狼藉をやめなはれ!」

 

 

内基の視界の奥には両面宿儺が京都の町を蹂躙していた。

 

 

 

荷駄にはよう!千両箱をのせなはれ!商品はこの際おいてってええ!命あっての物種とは言え金が無ければ、商人は廃業おすからね!。」

 

茶屋四郎次郎清延は番頭や手代たち奉公人を叱咤し逃げだそうとしている最中だった。

京都の豪商の多くは逃げだしていた。彼はその中でも最後の方であった、彼は義昭の横暴にで多くの歌人、華人、茶人、絵師が失われることを懸念し、自分と共に逃げるように説いて回っており、そのため時間がかかってしまったのだ。

 

「皆さん!少々乗り心地は悪いかもしれきぃひんが、堪忍や。番頭さん、早く出してくんなさい。・・・あ、あぁ・・・。」

 

 

 

「茶屋殿、どこへ行かれるのです。」

「幕府の治める京で勝手なふるまいはいけませんぞ。」

 

残党を率いた六角親子がいく手を阻む。

六角義治の放った矢が茶屋の丁稚に当たる。

 

「あぎゃ!?」

 

年端も行かない丁稚の少年がその場に崩れ落ちる。

 

「子供に手を上げるんか!あんたらは外道や!」

 

誰かが言った言葉を無視し、義治は二本目の矢をつがえる。

 

「このガキの様になりたくなければ・・・。大人しく出て来い!楽に死なせてやる。」

 

茶屋たちは完全に腰が抜けて動けなかった。

放たれた矢は彼らに命中することは無かった。

 

「危なかったわね。大丈夫・・・?」

「戦う力のない人たちに手を上げるなんて、貴方達は本当に武士なの?」

 

六角の残党の前に立ちはだかったのは秋静葉と秋穣子。

丁稚の少年の傷が癒えていく。

 

「お、お姉さん・・・?」

 

丁稚の少年が気が付いたのを確認して、手代の男に預ける。

 

「大丈夫そうね、さてと・・・。」

「無辜の民を守るのも神の仕事ってこと!」

 

 

「っぐ!者ども臆するな!数で押せ!」

「あれは豊穣の神で戦神ではない!」

 

静葉と穣子は薙刀を構えて六角義治と六角承禎と向かい合う。

 

 

 

将軍御所

 

「ひゃひゃははははは!!将軍家の威光に従わぬ者はまとめて倒してしまえ!」

 

義昭は興奮気味に声を上げる。

 

「如何かな?両面宿儺・・・仁徳天皇の時代に飛騨に現れたとされる異形の鬼神。かの力を持ってすれば、神々とは言え時を経て衰えた存在・・・両面宿儺を持ってすれば討ち取れるだろうて・・・。」

 

ぬらりひょんの言葉に横にいた蛇骨婆は「ふぇふぇふぇ」と嗤って答える。

 

「足利の幕府に敵対すれば誰だろうが討ち滅ぼされるんよ。神だろうとなんだろうと!ひゃひゃははは!」

 

「報告申し上げあげます!妖怪共およそ2000が京に入りました!各所にて戦端が開かれております!」

 

伝令の言葉を聞いた一色藤長は義昭に変わり指示を出す。

 

「来たか。妖怪の軍勢・・・恐らく織田の最強戦力・・・ここで討ち取れば織田の快進撃も止まる。全軍、妖怪共を迎え撃て!」

 

足利家の組頭や足軽大将らは大樹たちを迎え撃つ。

 

「掛かれ!」

「「「うわぁああああ!!」」」

 

 

「行け!大樹様の道を切り開け!」

「「「わぁあああああ!!」」」

大樹恩顧の妖怪と妖精達が各所で衝突する。

 

 

 

 

 

数百年前に陰陽師によって朝廷を追われた者たちである呪禁師たちが、両面宿儺を制御しながら進んでいく。

 

彼らの前を行く斎藤龍興は刀を振るってその勢威を見せつける。

 

「行けや!行けや!織田に与するもんを皆殺しじゃあ!化け物どもも殺せや!」

 

足利と斎藤の兵が大樹たちを取り囲む。

 

「大樹様!雑魚の相手はお任せを!」

「白蔵主殿!蹴散らすぞ!」

 

2000は越えるであろう兵士達を相手に二人は大太刀周りを演じる。

 

 

 

 

そして、大樹とエヴァンジェリンは室町幕府軍と対峙する。

 

 

「出でよ。碧奧蘭蒂・・・。」

 

大樹の声に反応して木々や草花が集まり絡み合い、枝葉が伸びていき、花が咲き実がなって枯れていく。恐ろしい勢いで繰り返し、神武東征の折り洩矢の国を攻めミシャグジたちの心胆を寒からしめた巨獣が再び顕現した。

 

木々草花の獣、守護華獣・碧奧蘭蒂。

 

60メートルの巨体に二つの顔と四本の腕を持つ鬼神に大樹は向き合い。碧奧蘭蒂と両面宿儺は互いを敵と認識すると、威嚇するように睨み合う。そして、ついに2体の巨獣がぶつかり合った

 

「キシャー!」

「ウォオオオオン!」

 

数多の蔓が両面宿儺を捕らえ、ハエトリグサを想起させる牙の生えた蔓は噛みついた。両面宿儺は蔓を振り払い引きちぎる。

巨獣同士が激しく戦う。

 

私は意識を集中し、エヴァに力を注ぎこむ。

 

「これなら、いけるぞ!・・・ウェニアント・スピリトゥス・グラキアーレス・エクステンダントゥル・アーエーリ・トゥンドラーム・エト・グラキエーム・ロキー・ノクティス・アルバエ!来たれ氷精、大気に満ちよ。白夜の国の凍土と氷河を!」

 

大地から巨大な氷柱が飛び出し両面宿儺を貫く。足を地面に凍結され身動きがとれなくなる。

碧奧蘭蒂は動けなくなった両面宿儺に牙の生えた蔓たちを向ける。

蔓たちの口が開かれ口から樹液が放たれる。

シューと言う音を立てて両面宿儺の体が解け始め、二つの顔が苦悶を浮かべる。

 

「グォオオオオオ・・・。」

 

両面宿儺は生きながらにして溶かされると言う生き地獄を味わいながら消滅した。

そして、碧奧蘭蒂の方も蔓を下ろす。

エヴァの氷の魔法に巻き込まれたのだ。

寒さに弱い植物の巨獣は主人の命令を守るために力を使い果たした。

 

「ありがとう、碧奧蘭蒂。」

 

碧奧蘭蒂に生える霜は彼女をより美しく白く飾り、ゆっくりとその巨体を下ろしていった。

 

 

『守護華獣・碧奧蘭蒂と鬼神・両面宿儺の戦ひは あまりにも違いすぎて、我々は何も考えられなありき。京のわたりは圧倒され唯々見たるばかりなりき。』

 

 

両面宿儺は倒された。

 

幕臣、細川藤孝が武器を下ろし刀を捨てた。

「公方様にはついていけまへん。細川は織田に下らせていただきます。」

 

三淵藤英は騎手を返して我先にと逃げ始める。

「両面宿儺がやられた・・・。もうだめだ!お終いだ!逃げろぉおおお!!」

「助けてくれ~!」「ぎゃあああ!!」「ひえぇ!」「うわあああ!?」

 

京の幕府軍は雪崩のように一斉に逃げ始める。

 

1万を超える京の幕府軍は僅か2000の手勢によって散々に討ち払われ京を叩きだされた。

 

 

帝がおわす御所の中、御所を守る一条内基。そして、御所の中から弓を構えた近衛前久。

普段のきらびやかさは鳴りを潜め、帝のいる寝所を守らんと使い慣れない武器を持って戦う気でいた彼らの前には秋静葉、秋穣子の豊穣神二柱、白蔵主、刑部狸、ぐわごぜと言った恩顧の大妖怪を従えた。大樹野槌水御神の姿があった。

 

 

『和泉への道中よりされど かの神の戦ひのけしきは伺へ 雷鳴 業火 氷柱 が京都飛び交へど遠めに見えき。』

 

 

※京都府資料室所蔵 『兼見卿記』より

※織田家家臣記録保存会所蔵 『柴田軍記』より

 

 

 

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