翌日、静養も兼ねて日本文化に嵌っているエヴァを連れて山科の知人の家へ訪問することにした。
「私の友人宗易殿から紹介された御仁でしてね。侘び数奇者としてはこの国で一番の人物ですよ。」
「ほぉ、それは興味深いな。」
そう言いながら私とエヴァは粗末な厩に縄を結んで馬を置いて歩き出す。
エヴァも私や他のものと茶会を開いたりして侘び数奇に関して、多少の目が利くようになっていた。
私とエヴァは茅葺の門へ向かう。エヴァは周囲に目を向けながら目利きをしているのでしょう。
でも、そうやって目を凝らしてよそ見ばかりしていると・・・。
「のわぁああ!?」
ほら、彼の趣向を凝らした歓迎に見事に引っかかてしまうんですよねー。
日焼けして少々肌が黒くなっているここの主が姿を見せる。
「やぁ、オアヨ。大きな水溜りにはまられましたのぉ。大樹様もよぉ来なさった。」
「えぇ、ちょっと侘び数奇に興味を持った友人を持て成そうと思ってね。貴方の所に連れてきたのよ。それにしても、足に泥がかかって汚れてしまったわ。」
「そりゃあ、そりゃあ。汚れた体をどうぞ清められよ。そちらの泥まみれのお嬢さんも・・・。」
彼はエヴァを引っ張り上げるための手を伸ばした。
私は泥だらけになった彼女を見て服の裾で口元を隠して少々にやけてしまいました。
「な、なんだおまえらぁああ!!」
エヴァのご機嫌が斜め。何気にチャチャゼロもニヤついてる。
こういう場合は御主人を助けたりしないのだろうか?
これを指摘すると、エヴァとチャチャゼロがケンカし始めそうなので口には出すつもりはありませんよ。
私はもてなし上手の彼の事が気にっているので、時折一人で訪れている。
最初の時は私も彼の大きな水溜りと言う落とし穴の洗礼を受けた。妖精的に懐かしい基礎中の基礎の洗礼に見事にはまってしまった私は初心に帰る気持ちを思い出して大笑いしてしまったのは比較的新しい記憶だ。信長を連れて行くとキレて丿貫殿を切り捨ててしまいそうなので連れてくる予定はない。ちなみに以前、暇をしていた信雄(信長次男)を連れてきた時の反応は「ぷぎゃあ!?」だった。
私とエヴァは大きな木桶に沸かされた湯に浸かって身を清める。
私たちは手ぬぐいで体をふき着物を着終えると、丿貫老人が木の器に水を入れてやってきた。
「あら、いつも気が利くわね。」
受け取った器の水を飲み干す。エヴァは私に視線を向けた後。
「お、おい。それは厩の後ろにあった井戸のではないのか。埃が入っていないか。」
と器の水を見つめる。
「異人さんや。それは裏山から運んだ藤尾の水ですじゃ。安心して飲みなされ。」
「そういうことです。ここの主は少々悪戯好きですから、私の妖精心も疼いてしまうのよ。」
丿貫殿から出された雑炊と少量の漬物で空いた小腹を満たし少し休ませててもらっていると、小さく切った西瓜を着皿に盛り付けた物を置いていく。
「これは塩ですね。」
「今年の西瓜は出来が悪うてのぉ。これを振りかけてたべられよ。」
「うむ、わかった。」
まずい西瓜には塩が良いのですね。今度自分も試してみよう。
「タバッコもある裏で採れた麻の葉っぱでも喫われよ。疲れもほぐれるぞ。」
竹煙管で一服してから丿貫殿と茶席を設ける。
雑炊に使った手取窯と簡素な木の椀での茶席でしたがこれが侘び数奇なのだろうと思っているので特に思うところはない。
丿貫殿を交えて3人と人形1体で世間話をした。
チャチャゼロはほとんど会話には参加しない。殺戮人形だしね・・・。
数奇についての会話では信長の派手な数寄も利休や丿貫の詫び数奇も好ましく思うので後の世に残しておきたいと言うと
「神様は欲張りですじゃのぉ。」
「そうですねぇ。私は仏教の御仏や基督教のイエズスの様に清貧を貴ぶ訳ではありませんしねぇ。良いものは良いし、好きなものは好きなのですからねぇ。」
「なんというか。お前らしいな。」
暫く、世間話などをして話に花を咲かせた。
流石に四畳半間に泊めてもらうわけにもいかないので近くの農家で宿を借り秋大社へ戻った。
後日、信長から安土城が完成した旨が書かれた書簡が届き、そこには安土城に私の住む場所も造ったのでこちらに来ないかと書かれていた。
それを読んだ私は安土に居を移すことにした。いつまでも元興寺のぐわごぜや秋比売の姉さんたちの所に居候し続けるわけにもいかないし、天台仏教の比叡山に住むのもいい気持ちじゃないし、桃園大樹宮は京に少し遠い。琵琶湖大樹大社は小島なので不便だし大社と名乗れるほどのものではないし、近いうちに神社とか単純に社とかの呼び名に変えるだろう。
とにかく、関東の大樹大社から暫く本拠を安土城に移す事に決めた。
そろそろ戦記に戻ります。
たまーのたまに日常編も書いていきますかねぇ。
そういえば、短編の更新が無いな。