大樹の妖精、神となり   作:公家麻呂

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66 大樹信長記 大樹の御子

 

 

賑やかな城下の様子とは打って変わり、安土城内は静寂に包まれていた。信長と私、成人している信忠、信雄、信孝の3人、親族の信包、長益、信張、信弌、信澄ら一門連枝衆が集合していた。さらに、遠征に出ていない柴田勝家・丹羽長秀、滝川一益、水野元信、森可成と言った重臣たちも集められる。そして朝廷より内大臣・一条内基と先の関白・近衛前久や高位神祇官ら派遣されてきた。

 

ちなみに明智光秀、若狭四半国を与えられた細川幽斎(藤孝)と共に丹後丹波を攻めている。佐久間信盛は摂津衆とともに本願寺包囲を継続しているが、本願寺包囲軍の副将として池田恒興が登城。また、柴田勝家は北陸攻めが控えていたが佐々成政と前田利家に任せて安土に登城した。中国攻めが控える羽柴秀吉も秀長や竹中重治に任せて登城した。村井貞勝、松井友閑、武井夕庵、島田秀満ら織田家有力官僚たちも登城している。

大樹大社勢力からもサニーら光の三妖精、重臣妖精の梅林と水楢、白蔵主、隠神刑部狸、水虎河童が登城。天狗衆からは大天狗の出席は無く使者として射命丸文が登城した。鬼の四天王は基本世俗に関わろうとしないので登城しなかった。

 

 

「俺と大樹の娘の事だ。」

 

信長は開口一番で本題を切り出すと誰が発したかわからないが小さい声でありながら全員に聞こえた言葉。

 

「神の子・・・。」

 

「順当に考えれば、皇族に輿入れさせるか織田家の血筋内で囲い込むのが順当であろう。だが、娘は神・妖精の血が濃いようでな。神精丸は幸い人間の血が濃いので織田家の者として育てる。」

 

信長は私が抱いている祀の見て、私は少しだけ祀を動かして見せる。

 

「「「おぉ・・・」」」

 

彼女の背に生えた妖精の薄羽が人の血を拒んでいるかのように見えた。

 

「では、帝への輿入れが順当ではあらしゃいませんか?帝は豊玉姫様から続く神の血族。」

 

近衛前久はそう訴える。

 

「だが、神と妖精の血が濃い祀姫様は人間とは比べられぬほど長命になるのでは・・・。」

 

大樹恩顧の妖怪である白蔵主が疑問を口にし、大宰府の菅原道真に仕える妖精梅林はその問題点を指摘する。

 

「大樹様は天皇家の養母であらせられ、最初期の摂政。関白や太政大臣と言う役職が整備される前の形骸化した役職とは言え、後にも先にもお一人しかおりません。祀様はこの国で唯一、摂政に就任する権利を持っておられます。」

 

「それは、良き事ではなかろうか?」

 

一条内基の言葉に朝廷側の人員が頷いて賛意を示す。

 

「妖精の血が濃いのです。」

 

その言葉に、聡いもの達が顔を青ざめさせたり眉間に皺を寄せ始めた。

 

「人間の婚姻と違って子を孕みにくくなる。」

 

信長の長男信忠が呟いた。

 

「そして、祀様は長命ですが我々の見立てではその御子は人間の血が濃くなるでしょう。つまりは摂政が二人になり、主家は子が生まれにくくなる。それでいて、いと尊き血。」

 

ルナチャイルドが信忠の言葉に付け加える。

 

「組み込むには濃すぎる神・妖精の血。持つ権威は絶大。もし、かじ取りを誤れば国が割れる。」

 

元々、血統が重視されるためそこらの女子を手あたり次第という訳にはいかない。しかし、出生率が落ちるわけで・・・。

半妖や半神の血は子々孫々へと血を繋げることは難しい。神の血を継ぐ天皇家はある意味で例外中の例外と言える。

羽柴秀吉が頭を畳に擦り付けた平伏したまま発言する。

 

「お、恐れ多くも申し上げます。いずれかの大樹神社に預け、時を待つのが次善と愚考します。」

 

「いずれかの社に預け育てさせるが良きかと、恐れながら某も同様に考えます。祀様の血は神にも妖精にも近すぎます。」

村井貞勝も平伏した。

 

「で、あるか・・・。」

 

信長はそう一言だけ述べるのだった。

 

その後も、沈黙混じりに話し合いが続いたが祀姫の処遇は大樹大社傘下の神社に預けられることとなった。

 

その神社の禰宜古明地氏の養子としてである。また、古明地氏は平泉大樹神社(藤原秀郷子孫である藤原清衡が寄進)を源流とした陸奥国で大きな影響力を持つ一族であった。将来的にはこの神社の社格を上げて大社として、そこの巫女頭として内定していた。また、大樹の中ではそこで血を薄めた後に皇族の血統に血を入れることも案にあった。

 

 

天正5年(1577年)のことであった。

 

また、神精丸は一門として織田信忠の家臣になることが内定していた。

 

 

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