この時の織田家有力一門や重臣、近在の大樹恩顧の大妖怪らの動向を明記する。
柴田勝家、前田利家らは越中に布陣し上杉景勝軍と対陣中。滝川一益、川尻秀隆らは甲州掃討中。羽柴秀吉は西国征伐中。織田信孝、丹羽長秀は長曾我部の援軍準備中。織田信忠は京都二条城で少数の手勢と休養中。織田信雄は光の三妖精らと琵琶湖で舟遊び中。
大妖精、チルノらは関東大樹大社へ帰還中。陰神刑部狸は四国派兵に伴う準備のために四国へ戻る。ぐわごぜは佐竹・宇都宮連合と対陣中の北条家への援軍の準備のために尾張入り。正規には大樹傘下ではないが風見幽香は甲州にいたとされる。エヴァンジェリンも西洋妖怪の勢力の使者である吸血鬼エリートとの会談のために堺にあった。この時、京の都にいたのは白蔵主だけであった。
本能寺の乱においてその首謀者は明智光秀であり、その背後の存在については諸説あるが光秀首謀者説が最有力である。
8月1日、信長より西国攻めの援軍を命じられた光秀は2万の手勢を率いて丹波亀山城を出陣した。信長と大樹は僅かな供を連れて治天下覇王の正式な就任式の為に本能寺に滞在していた。
「上様!む、謀反にございます!!」
信長に酌をする大樹の手を止めさせ信長は、森蘭丸に問いただす。
「如何なるものの企てだ。」
「水色桔梗、明智光秀と見えます!」
信長の横で大樹は配下の妖精に二条城の信忠を脱出させるように命じた。
明智軍が燃え上がる本能寺になだれ込み蘭丸を中心とした僅かな供周りが応戦している隙に信長と大樹は地下の通路へ向かう。その地下の通路にも火が回っていた。
「あと、一歩でしたな。されど、その一歩が遠い。」
「夢は現・・・現は蝶の夢のごとし・・・儚いものでございます。」
「光秀・・・。」「ぬらりひょん・・・。」
「滅びれば・・・夢も現もありますまいて・・・。」
ぬらりひょんの言葉が合図だったようだ。光秀と10数人の鉄砲足軽がこちらに銃を向ける。
「俺は長い夢を見ていたのかもしれん。人と神が子をなし、共に天下を治める。良い夢であった。」
信長の言葉で大樹は信長が自分のために死のうとしていると悟った。
信長は目をつぶった。
10数の銃声が響いた。
信長は死を覚悟した。しかし、銃声はしたのに全く痛みが来ない。目を開けるとそこには血だまりに沈む小さな体、大樹の姿があった。
「大樹・・・なぜ。」
「貴方はこの国に必要な人間。神は不変の存在、故に安定をもたらすの。でも、何も変えることは出来ない。この国を変革できるのは信長・・・貴方だから・・・。」
「愛する二人を永遠に別つ無粋とは思いますが我が野望の為。」
「御覚悟を・・・」
ぬらりひょんと光秀が刀を抜く。
しかし、その間に突如なぞの空間が現れる。
その空間は無数の目があり悍ましく思えるものであった。
ぬらりひょんと光秀は警戒し距離を取る。
大樹を抱えたままの信長は距離を取れずその空間に落ちてしまった。
「ここは・・・。」
信長の疑問に答える様に金髪の怪しい女性が姿を現す。
「ようこそ、大樹様、織田様・・・。ここは私の隙間の中よ。別に貴方達に害を為そうとは思ってないわ。ふらふらしてたら丁度、燃え上がる炎を見て様子を見に来たらこんなことになってるじゃない?この国を支える大樹様の危機、お助けするのは当然でしょう?この功績でそれなりの褒美が出ればって言う打算もあるけどね。」
信長のいぶかしむ視線はあったが、彼女の言葉を信じて大樹を助けることが先決と判断した信長は彼女の助けを借りることにしたのだった。
明智光秀謀反、織田信長と大樹野椎水御神の生死不明の知らせは衝撃となって全国を駆け巡った。光秀の謀反に呼応して毛利軍は羽柴秀吉を攻撃し、大敗を喫した秀吉は淡路島へのがれた。四国の刑部狸らも反織田勢力が息を吹き返し、四国を動けずにいた。さらに北越では上杉軍が浅井長政・柴田勝家を攻撃、武田残党の蜂起で滝川一益、川尻秀隆、森長可を甲斐、信濃に釘付けにした。四国の後詰の為に堺に集結していた織田信孝・丹羽長秀も三好残党の急襲によって混乱していた。また、有力同盟国の浅井・徳川・北条であるが、浅井は上記の理由で、北条は佐竹・宇都宮軍と対陣しており動けずにいた。残る徳川も武田残党や一向衆残党の蜂起で動けずにいた。
信長を取り逃がしたものの室町幕府・三好残党を取り込み、ぬらりひょんと合流した光秀は、京洛外の戦いで白蔵主ら妖狐衆を撃破したが、白蔵主らは洛外の戦いで信忠を安土に逃がす時間を稼いだ。信忠は安土で信雄らと合流、迫る光秀の軍勢を迎撃する為に安土城を出陣した。
光秀は1万7000を率いて安土へ、対する信忠も1万5000であった。
光秀軍の内訳は光秀の手勢1万2000、ぬらりひょんの妖怪軍5000、信忠軍は京都を脱した信忠の手勢2000、三妖精の手勢と糾合した周囲の大樹神社の妖精兵と大樹恩顧の妖怪5000、安土の守備兵と信雄の手勢5000、日野城の蒲生氏郷と佐和山城の磯野員昌らの援軍3000。
明智軍と信忠軍は守山で激突した。
光秀の軍勢の妖怪軍はぬらりひょん直々に率いる精鋭軍であった。
西近江路から大樹神社の援軍が光秀を挟撃しようと向かっていたがぬらりひょん派の邪魅の軍勢の襲撃を受けて壊滅し、若狭街道からの援軍も旗色を鮮明にしない細川家を警戒し街道を抜けられずにいた。
守山の戦いはぬらりひょんの精鋭軍との乱戦に大樹大社軍が退けられたことによって勝敗は決した。
「信忠様(兄上)!お早く!!」
「おのれ!光秀め!」
信雄とスターの呼びかけに信忠は憎々し気に明智軍を睨みつけていた。
信雄は足を挫いたルナを背負いながら、信忠に告げる。
「兄上、私は三妖精の皆と小谷に向かい近江の大樹大社を纏め上げて、浅井の援軍を引き出してみようと思う。」
「うむ、わかった。自分は岐阜へ行き尾張のぐわごぜと合流し、美濃衆・尾張衆を纏めることにしよう。」
信忠は蒲生氏郷と日野城を放棄した蒲生賢秀に守られて岐阜城へ退避した。
信雄と三妖精は磯野員昌と佐和山城に留まり、防戦したが小谷城へ敗走した。
小谷城は長政の嫡子輝政が守っていたが、浅井領内では光秀の調略に乗った阿閉貞征が反乱を起こし光秀を攻撃できる状況になく、守勢に回ることになった。
守山の戦いで織田軍を蹴散らした光秀は怒濤の勢いで織田領の大部分を制圧していった。
天下は光秀を中心に回ろうとしていた。